防蟻処理でシロアリを防ぐ
木材の乾燥は重要ですが、シロアリ対策には実は不十分。シロアリは蟻道をつくってせっせと水を運び込み、乾燥した木も湿らせて食べてしまうのです。シロアリ対策は複数の手法を組み合わせるのが効果的ですが、木材自体にもしっかり防蟻措置を行う必要があります(図7)。
最も一般的なのは、安価な有機薬剤の塗布ですが、数年で分解してしまうとされています。後から壁の中の木材に再処理するというのは非常に困難であり、農薬由来の成分を使うことへの不安もあります。
ホウ酸は無機系の安定した成分で効果が長持ちし、人体への害もありません。ただ水に溶けてしまうので、防水は重要となります。ACQ防腐防蟻処理は、加圧注入釜の中で木材の中まで薬液を浸透させるので効果が長期間持続しやすく、人体にも無害です。ただし、木の色が緑色になりコストもかかります。それぞれの特長を理解した上で、適切な防蟻処理を選びましょう。
林業の未来は明るいのか?
木材は適切に用いれば、家づくりに最も適した素晴らしい素材です。さらに、国内の山林では戦後に植林された木が育っていますから、それを切って製材することで、地方の経済にも貢献することが期待されています。木材利用が活気づく中、さぞ林業は潤っているだろうと思うのですが、必ずしもそうではなさそうです。
森林ジャーナリストの田中敦夫さんが書いた「絶望の林業」(新泉社)は、政府の方針に振り回されて疲弊する地方の実態を描いています。
温暖化対策・林業活性化というかけ声の元、とにかく山の木を切り出せというボリューム優先の政策誘導のために、木や木材の値段が安く抑えられ、持続的な発展ができなくなっていると警鐘を鳴らしているのです。
木材自給率は改善するも
そもそも、木材の何割が国産なのでしょうか。国産材と輸入材の比率の変化を図8に示しました。
戦後直後は国産材がほとんどでしたが、高度成長期・バブル期に急増した住宅需要を賄うため、海外からの輸入材が急増。2000年には国産林の木材自給率は2割を切って18.9%まで低下しました。
その後、住宅需要の減少により輸入丸太が急減し、建材やバイオマス燃料に国産材利用を促進する政策もあって、木材自給率は2022年に40.7%に回復しました。数字の上では改善しているようですが、こうした国産材の量を優先する政策は歪みを生んでおり、特に丸太の価格が安くなりすぎているのです。
丸太1本5千円?
では、木はどれくらいの値段なのでしょうか。図9に、スギとヒノキの丸太と乾燥材の価格推移を示します。
バブル期に最高値を付けて以降は安値が続いていることが分かります。2021年にコロナやウクライナ侵攻の影響による「ウッドショック」により一時的に価格は上昇しましたが、現在ではまた安値に戻っています。
2023年10月の価格を見ると、スギの丸太の値段は1㎥あたり1万6千円。直径30㎝・長さ4mのスギの丸太3本がおおよそ1㎥ですから、丸太1本ではたったの5千円ということになります。よく林業関係の人は「体積あたりでは大根より遥かに安い」と自虐的に言いますが、60年かかって育った木がこんなに安いのでは、木を植えて育て続けることは到底できません。林業をサスティナブルな事業にしていくためには、木材の利用拡大とともに、適切な利益分配の仕組みを考える必要がありそうです。
今回は普段と志向を変えて、木の家の魅力と課題について考えてみました。木材は適切に用いれば大変優れた建材であり、住宅の性能向上と脱炭素化のために、今後ますます普及していくことが期待されています。また木を育て木材を供給してくれる林業にも、大きな課題があることも分かりました。社会全体をサスティナブルにしていくために、家選びもよく考えたいものですね。
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