いごこちの科学 NEXT ハウス

さらなる省エネ・省CO2が住宅の重要なテーマとなる寒冷地。 本企画は、独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、東京大学の気鋭の研究者・前真之准教授に、「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について解き明かしていただきます。 シーズン1に続く第2弾として2015年からは、それまでの連載の発展形「いごこちの科学 NEXT ハウス」としてリニューアル。
「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から寒冷地における室内環境の改善ポイントを解説しています。東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻・准教授 前 真之 (まえ・まさゆき)

東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻・准教授
前 真之 (まえ・まさゆき)

地球温暖化や化石エネルギーの枯渇が深刻になる中で、太陽に代表される再生可能エネルギーの活用が世界中で盛んです。今回は住宅で太陽をどう活用するかについて、一緒に考えてみることにしましょう。

日本の太陽活用は多種多様

日本は化石エネルギーに恵まれておらず、特に1970年代のオイルショックでひどい目にあった反省から太陽エネルギー活用が大いに進みました。「太陽熱給湯」は郊外を中心にかなり普及しましたし、「太陽熱暖房」も1987年に登場したOMソーラーが広く認知されています。さらに「太陽光発電(略称PV)」についても、世界に先駆けて普及させた実績を持っています。  

「元が取れる」太陽活用は?

太陽エネルギーの活用方法はたくさんありますが、導入コストがかかりすぎては元が取れるのか心配です。「コストパフォーマンスの高い」方式はなんでしょうか。図1をご覧ください。 誤解を恐れずにズバリ予測すればコスパがよいのは、1位:太陽光発電、2位:太陽熱給湯、3位:太陽熱暖房の順になりそうです。その主な理由は、「年間を通して役に立つか」「余ったら売り飛ばせるか」の2つです。

図1 多種多様な太陽熱エネルギー活用
図1 多種多様な太陽熱エネルギー活用
方式ごとに長所・短所がありますが、現状では太陽光発電の優位性が目立ちます。太陽熱利用では常にコストパフォーマンスを重視し、リーズナブルな提案でないと生き残れません。

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