エアコンの3大付加機能快適・空気清浄・清潔

シンプルな普及機で十分なら、後は容量と省エネ性能の検討で十分ですが、各メーカーの上位機は魅力的な付加機能を競っています(図5)。

最近の付加機能を見てみると、「快適性の向上」「室内空気の清浄」「エアコン内部の清潔確保」に分類できます。快適性については温度だけでなく夏の除湿や冬の加湿による湿度調整、空気清浄はフィルターろ過やイオン発生だけでなく外気の吸気まで行う機種も登場しています。

エアコンの中のカビは夏型過敏性肺炎の原因に

最近、特に注目されている付加機能は、3番目のエアコン内部の清潔確保です。エアコンをつけると吹き出す空気がカビ臭い場合がありますが、これが真菌のトリコスポロンによる「夏型過敏性肺炎」につながることが指摘されています(図6)。

図6 エアコンからのカビ臭い空気は夏型過敏性肺炎の原因に
エアコンの中でカビが繁殖し、吹き出す空気がカビ臭く感じることがよくあります。
このカビで汚染された空気は単に臭いだけでなく、夏型過敏性肺炎の原因になることが指摘されています。
冷房をつけた部屋で体の不調を感じる場合は、エアコンの中が汚れていないかチェックしましょう。

冷房が長時間必要な時代において、エアコンが空気を汚して健康を損なってしまっては元も子もありません。 「フィルターのお掃除機能がついているから安心」と思っているかもしれませんが、カビが生えやすいのはエアコンの奥の方(図7)。

図7 エアコンの中はカビの繁殖に理想的な環境
エアコンのフィルターや熱交換器の外側がキレイでも、安心してはいけません。エアコンの中でカビが生えやすいのは、熱交換器の内側のファンや吹き出し口の奥です。エアコンは熱交換器に冷たい冷媒を流し、吸い込んだ空気を冷やしますが、冷やされた空気はほぼ湿度100%に達するため、カビにとっては繁殖に絶好の環境になってしまっています。
エアコンの奥に繁殖したカビを除去するのは素人には困難で、特に内部構造が複雑な機種では不可能といえます。最近では、熱交換器を冷却・結露させたり加熱・乾燥させたりして内部を自動的に洗浄する付加機能が多く提案されていますが、効果は未知数です。内部がシンプルで掃除が容易な機種を選ぶのも一案でしょう。

エアコンは冷たい冷媒をアルミのフィンで出来た熱交換器に流すことで空気を冷やしますが、冷やされた湿度100%近くの空気はカビにとって理想の繁殖環境。そのため内部のフィンや吹き出し口まわりがカビで真っ黒になってしまうのです。内部にこびりついたカビをキレイに取り除くにはエアコンを分解する必要があるため、素人には非常に困難であり、プロの業者に任せるのが現実的でしょう。エアコン内部の清潔確保のためのさまざまな「自動内部洗浄」機能が提案されているのは、カビ問題への関心が高まっている証左ともいえるでしょう。

掃除のしやすさも大事

筆者にはこうした「自動内部洗浄」がどのくらい効果があるのか判断できませんが、いずれ汚れやカビがたまるのであれば「内部が掃除のしやすい機種」を選ぶのもアリでしょう。掃除の容易さをうたう上位機もありますが、フィルター自動掃除機能などがないシンプルな普及機こそ、掃除しやすく故障しにくいとの意見もあり悩ましいところです。  

今回は、エアコンの買い替えを想定して、エアコン選びのポイントと注意点を整理してみました。能力や効率、そして付加機能、いろいろと迷いやすいところがありますが、各部屋に1台ずつ設置する一般的な個別空調における買い替えでは、最小2.2kWの普及機かシンプル高効率機で、内部の掃除が容易な機種を選んでおけば、大概大丈夫でしょう。もちろん、前回ふれたように家中を1~2台で暖冷房する全館空調においては別の選択方法を考える必要がありますが、それはまたの機会に考えてみることにしましょう。


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