夏涼しい家をつくるための3原則

私たちは今から20年ほど前、北関東の高崎などの暑い地域で、夏の調査を行いました。高断熱化で冬はとても快適になった住宅が、夏は猛烈に暑くなるという状況に対処する設計手法を求めてのことでした。この結果は次の3原則に集約されます。

①全ての窓の日射をきちんと遮蔽する
②昼間の排熱通風と夜の通風換気を取る
③開け放しにできる窓形式を採用する

まず日射遮蔽ですが、図6を見てください。

図6 掃き出し窓の日射遮蔽
図6 掃き出し窓の日射遮蔽

私たちは夏の日射は庇で遮ると教わってきました。しかし、窓の上の庇は、図のように深さが90㎝ぐらいあっても7~8月にはあまり効かなくなります。図は太陽が12時頃の図ですが、その前後数時間は太陽高度がもっと下がりますから、かなりの日射が入ってきます。窓の方位が南東〜南西に振れるともっと日射が入ってきます。積雪寒冷地では、軒先の積雪荷重で庇の長さは小さく日射遮蔽はほとんどできていないことになります。

この大きな窓の日射遮蔽はなかなか大変で、図のようにいろいろ工夫はするのですが、うまい方法はありません。お手軽に窓ガラスの室内側にレースのカーテンやブラインドを設置することになるのですが、内側の日射遮蔽はあまり効かないのです。安価に、有効に働き、操作も簡単な遮蔽部材の開発が必要です。日射遮蔽型のガラスは、南の大きな窓には使えません。冬の暖房費が大幅に増えます。しかし、東西方向の中型、小型窓は、冬の日射も大きくありませんから、これを使って白いカーテンやブラインドを付けるのも良いでしょう。

2番目の通風は、各部屋に2~3方向に窓を設けて通風を取る設計をするのが普通です。窓の性能が上がってきましたから、北側に窓を設けても、冬寒くなることはありません。しかし、これだけでは不十分なのです。日中の熱が天井付近にたまり、天井の石膏ボードが熱くなります。特に2階は40℃近くにもなります。

これを常時排熱する必要があります。窓の上から天井までの40㎝ぐらいの空間を通風できるような工夫が必要です。また、暑い夜はほとんど風がありませんから、窓から窓への通風がほとんど起こらなくなります。これを、上下の通風を取れるようにすると著しく改善されます。深夜に外気温が下がる北海道・東北では、図7のように工夫すると、室内の暑い空気が効率よく排出され、家全体を冷やし朝までには室内が随分涼しくなる日がとても多いのです。

図7 上下方向の通風を図る
図7 上下方向の通風を図る

こうした日の翌日は、外気温が30℃を越えても、窓を閉め切り外の熱風が入らないようにすると、夕方まで室内は涼しく過ごすことができるようです。もちろん必要に応じて小さなエアコンを使えば、エアコンもよく効きます。

こうした夜間通風を確保するためには、外出時や就寝時などに、雨、風、防犯の心配なく開け放しにできる窓が必要です。図8のようなドレーキップ窓や、あるいは防犯ストッパーの付いた窓形式があります。外開き窓や、引き違い窓は雨の吹き込みに対処できません。

図8 常時開放できる窓
図8 常時開放できる窓

北海道・東北の住宅でもやはりエアコンは必要

このような設計をすると、6~9月の結構暑い日でも、ほとんどエアコンを使わずに済みます。それでも、今年のような猛暑でなくても、夜まで暑い日はあります。こうしたときはエアコンを積極的に使うことでとても快適に過ごせるのです。リビングに吹き抜けがあれば2階のホールにエアコンを1台設置するだけで、ほぼ家全体を涼しくすることができます。

もっと暑い地方で試みている、2階の床下にエアコンを設置し、床下をチャンバーにして上下の部屋に吹き出す方式は、北国でも有効です。しかし、このエアコンで暖房もすることは、私は避けたいと思っています。エアコンを暖房に使うと、外気温の低い地域では効率が悪いのです。そして、灯油やガス、薪などで済む暖房に、電気を使うことに違和感を持ちます。原発をできるだけ再稼働しないで済むような社会を目指したいのです。