高断熱住宅は夏はとても暑い?
高断熱住宅は、一般住宅に比べて断熱・気密性がとても高く、冬は住宅から逃げる熱が1/2~1/3以下になります。こうした住宅で生活すると、窓から入ってくる日射や、住宅内で消費する電気による熱、人間が出す熱などだけで、住宅内の温度は外気よりも10℃近く高くなります。残りを暖房の熱で補って、必要な室温を保つのです。このように住宅内に生じる熱は暖房を補ってくれているのです。また、別な言い方をすると、高断熱住宅は、一般住宅に比べて、遥かに少ない熱で家の温度を上げることのできる住宅だともいえます。
夏になると、冬と違って今度は、日射や住宅内の熱は室内を暑くする働きをします。一般住宅よりも室温はより高くなるわけです。こうしたことから、「高断熱住宅は夏には熱がこもって暑くなりやすく、冷房負荷も増える」という人たちがいます。しかしよく考えると、冬と違って、春から夏、秋にかけて、私たちは、暑ければ窓を開けて生活しています。通風が良く、熱がこもらないように設計すれば良いわけです。また、窓を閉めてエアコンを使うときには、できるだけ日射が入らないようにすれば、厚い断熱のおかげで床、壁、天井を通して外から入ってくる熱は、ずっと少なくなるわけですから、エアコンの電気代も少なくて済むはずです。
北海道・東北と関東以南では暑さの質が違う
2018年の猛暑にはとてもびっくりしまして、エアコンのありがたさが身にしみました。関西では猛暑日が連続し、東北や北海道でも史上最高を記録したところもあります。しかし、東北・北海道の北日本は関西とは質的に暑さに違いがあるようです。これを1990年~2000年の気象データからつくった標準気象データで見てみましょう。ただし、最近の暑い夏のデータは入っていません。
図1に春から秋の間の冷房期間の区分を示します。図2では、冷房必要期間(6月~9月の122日間)の1時間毎の温度データを使って、一日の温度変化から、122日を図の5都市について、A~Eの5種類に分類してみました。
一日の外気温度の変化は、基本的に朝の最低気温から次第に上昇し午後の最高気温をピークに次第に下がり、夜から早朝まで下がっていきます。冷房設定温度を28℃(福島、秋田は27℃)として、この温度より外気が高ければ窓を閉めてエアコンを使う。この温度より外気が低ければ窓を開けて通風すると想定しました。一日中外気が設定温度より低く、冷房を使わない日をA、夕方18時までに設定温度より低くなった日をB、同様に21時をC、24時をDとして、24時でも設定温度より高い日をEとしました。
Bは、夏ですから日中はエアコンを使っていても夕方までには涼しくなる日です。Cは夜も暑いのですが、就寝時には窓を開けて通風で過ごせる日です。AとB、Cを合わせた日数を比べると、東北が圧倒的に多いといえます。一方夜中でも暑いD、Eの日数は福岡、大阪では約40日もあるのに対して、前橋、福島、秋田では13日以下しかありません。図3は同じ比較を、夏らしく暑くなる、冷房必須期間で行ったものです。やはり同じ傾向が読み取れます。関西の暑さは相当なものです。関西の人から見ると東北はとても涼しそうということになるのですが、ここに問題があります。
2週間程度しかない、夜中も暑くなる日をやはりどうすべきかが、東北の住宅にとっての大問題なのです。北海道でももう少し日数が少なくなりますが、やはりこうした暑さの日は存在します。短い期間だから我慢してこれまで過ごしてきたのですが、やはり快適に涼しく過ごせるに越したことはありません。やはりこの期間はエアコンを使う必要があります。
私たちは、長期間エアコンを使う関西で快適に冷房する方式をいろいろ試みてきました。関西は暖房負荷も少なくエアコンで全室冷暖房をする方式が中心ですが、北海道・東北は暖房負荷も大きく冬の外気温が低いのでエアコン暖房は効率が悪く、エアコンはやはり冷房を中心に使いもっと簡単な設置の仕方で快適に、冷房病にならないような使い方を考える必要があると思います。