家づくりは、今も昔も一世一代の大イベント。だからこそ連綿と受け継がれてきた日本ならではの儀式が存在します。それが「地鎮祭」と「上棟式」です。
「地鎮祭」は、工事を始める前に土地の神様にご加護を賜る神事。「上棟式」は、建物の骨格が立ち上がったときに行う、つくり手への労いと工事の安全を祈る式典です。そもそも今は「行う必要があるの?」と迷う人も多い「地鎮祭」と「上棟式」について、最近の傾向を踏まえながら、かかる費用をはじめとするあれこれをまとめてみたいと思います。
地鎮祭とは?
家を建てる前に、その土地で建築することを氏神様(うじがみさま)に伝え、工事中や住んでからの安全を祈願する神事。それが地鎮祭です。近頃では略式化されたり、行わなかったりするケースもありますが、縁起担ぎや厄払いの意味で行うご家族がまだまだ多いようです。
地域の工務店や建設会社で家づくりをする場合は、地鎮祭を行う前提で話が進んだり、行うかどうかの意志を確認されることが多いですが、特に地鎮祭の話が出ない場合は、施工会社に相談すれば、対応してくれる神社や必要な作法、日取り、費用などを教えてもらえるでしょう。地鎮祭に対応する神社は、WEBサイトでも調べられます。
儀式の所要時間は30分〜1時間程度。気になる費用は、「玉串料」または「初穂料」と呼ばれる一式の費用として2万円〜5万円の間で納まるようですが、神社や建築会社によって儀式の内容が異なったり、上記以外にも「神主のお車代(送迎代)」や「祭壇やテント等の設置費」、「引き出物やお弁当代」などがかかることもあるため、事前に確認が必要です。
上棟式とは?
「むねあげしき」や「むねあげまつり」、「建前(たてまえ)」とも呼ばれ、主に木造住宅で建物の骨組みができあがるタイミングで行う儀式です。元々は地鎮祭と同じく工事の安全祈願と家の安泰を願う神事でしたが、近年では家づくりに関わる職人さんたちを労い感謝する意味合いで行われる傾向が強くなっています。
地域性もあるこの上棟式。本来は家の骨組みができあがる(棟上げされる)当日に職人さんたちへおやつや昼食を振る舞い、棟上げされた段階で供物や式台を設けて、近隣の方たちへ家の梁などから大工さんらが餅やおひねりを撒いたり、工事現場でお酒や食事を振る舞うなど賑やかな式典です。
最近では簡略化されたり、行わなかったりするケースも増えていますが、これから暮らす場所で近隣の方々にも挨拶できるいい機会として、積極的に勧める工務店や大工さんもいらっしゃるようです。
所要時間は、上棟式の儀式だけで30分〜1時間ほどが一般的ですが、近隣の方を招いたり、「直会(なおらい)」と呼ばれる飲食の時間を多めに取ったりするとさらに時間が必要です。費用は工事の規模や上棟式の内容などによってもさまざまですが、職人さん一人あたり役職に応じて3,000円〜10,000円を包み、供物や直会の食事やお酒などを用意すると総額で10万円〜30万円くらいかかるようです。
ある設計事務所の話では、地鎮祭は8割くらい、上棟式は5割くらいの割合で実施しているそうです。東北の某工務店では「土地に関しては怖いこともあったので(!)、地鎮祭だけは必ずやってもらうようにしているんです…」なんて話も。もちろん、どちらも行わないという選択肢もありますが、家づくりはたくさんの人が関わって進めていくもの。周囲の皆さんへ感謝の気持ちを伝えるという意味で、また人生の一大イベントに向けて気を引き締める機会として、簡単にでも行うことを検討してみてはいかがでしょうか。
(文/Replan編集部)