床下エアコンは冷房に不向き

繰り返しになりますが、冷たい空気は重たいため、冷気は下に溜まる一方で上階は暑いままになりがちです(図14)。2階が冷えないので、夏はみんな1階のリビングで寝ている…という話を聞くのも理由あってのことです。

図14 冷気は重たい 1階は冷えすぎ2階は暑いまま
図14 冷気は重たい 1階は冷えすぎ2階は暑いまま
冷気は重たいので、1階は冷気が下ってきて冷えすぎる一方で、2階には熱気が対流し暑いままになっています。この写真は1階にエアコンがあるので上下階の差が顕著ですが、2階エアコンでも往々にして冷気が吹き抜けや階段室から1階に流れ込み不快の原因となることが多くあります

暖気は軽いので床下から上方に浮き上がっていくため、床下エアコンは1台で効果的に家中を温める暖房が可能です。しかし床下エアコンを冷房に使うと、重たい冷気は下をはって溜まっていきますので、温度ムラが大きくなりがちです(図15)。足元の冷えは不快の大きな要因ですから、これは大きな問題です。床下エアコンは夏に使うとすれば、弱冷房か除湿運転など、補助的に用いるべきでしょう。

図15 床下エアコンは冷房に不向き?
図15 床下エアコンは冷房に不向き?
快適で安価な暖房方式として注目されている「床下エアコン」。軽い暖気は下から上に上るので床下からの加熱は合理的ですが、冷気は重いので下に溜まってしまいます。人間は足元が低温だと不快に感じてしまうため、床下冷房は快適性の観点からは限界があります

冷気は上から穏やかにおろす

冷たい空気は重たいため、エアコンは上の方に設置して冷気を降ろしていくのがセオリーです(図16)。ただし、冷たすぎると滝のように重たい冷気が下に降りていってしまい、上階が暑いまま下階が非常に寒くなりがちです。冷たすぎず重すぎない「ヌルい冷気」を穏やかに降ろしていくことが、家全体の温度ムラをなくすコツなのです。

図16 冷房の正解は上から24時間ヌル冷気?
図16 冷房の正解は上から24時間ヌル冷気?
冷たい空気は重いので下に沈んでいきます。冷房のコツは、なるべく高いところから、あまり冷たくない「ヌルい」冷気をゆったり回すところにありそうです

では「ヌルい冷気」でどうすれば家中を十分に冷房できるのか。前述の通り、徹底した日射遮蔽と断熱は不可欠です。そしてもう一つ、冷房を「つけ続ける」ことが必要です。

間欠的な冷房運転では冷たい冷気で強力にすばやく冷やす必要があり、「ヌル冷房」にはなりません。全館を1台のエアコンでムラなく冷房する「ヌル冷房」は、冷房を穏やかにつけ続けてはじめて成立するのです(図17)。

図17 高い場所の1台のエアコンで24時間ヌル冷房
図17 高い場所の1台のエアコンで24時間ヌル冷房
高所のエアコンから低すぎないヌルい冷気を穏やかにおろしていくことで、各階がつながった開放的なプランであれば、1台のエアコンで全館冷房を行うことができます。ただし、この方法は24時間冷房をつけ続ける場合には有効ですが、間欠的な冷房の使い方には不向きです

通風利用を積極的に行いたい人にとっても、全室閉め切ってエアコンを動かし続けることには抵抗感が強いと思われます。しかし筆者は温暖化が進む中、外気の湿度のことも考えると、こうした全館24時間冷房は増えていくと予想しています。冷房を省エネ・快適に実現できる家も、立派に「夏を旨とする」と言えるのではないでしょうか。

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※次回のテーマは<ゼロ・エネルギーハウスをもう一度考える>です。

【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
vol.008/冬のいごこちを考える
vol.009/電力自由化! 電気の歴史を振り返ってみよう
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