大建築家と新住協の工務店との出会い

神戸里山博が企画され、30棟ほどの住宅が建設され公開されています。山間の住宅地とそれに隣接する畑をセットで販売し、里山の暮らしを満喫してもらおうという企画で、北海道でも南幌町で似たような企画が始まろうとしています。自治体が抱える売れない宅地をなんとかしようとする苦肉の策のようにも見えますが、住宅地のあり方としてはとても新しい魅力を感じます。

この企画の中心に、日本でも屈指の住宅作家である堀部安嗣さんがその一軒の設計を依頼されました。施工を担当するビルダーは、新住協関西支部長のダイシンビルドの清水一人さん。清水さんに聞くと、堀部安嗣建築設計事務所はダイシンビルドの標準設計をあらかじめ十分取り込んで設計を進めてくれたおかげで、設計から施工までトラブルや、よくある意見の衝突もなく淡々と進められたとのことでした。堀部さんも、これまで断熱性や温熱環境には配慮しながら設計をしてこられて、高断熱の仕様にも違和感はなかったようです。

ヴァンガードハウス「これからの家」

里山住宅博 in KOBEで公開しているヴァンガードハウス「これからの家」の外観
里山住宅博 in KOBEで公開しているヴァンガードハウス「これからの家」の外観
掲載協力/堀部安嗣(堀部安嗣建築設計事務所) 清水一人(ダイシンビルド)

でき上がった住宅は、敷地の奥に住宅を配し、きれいに植栽された庭を通って南東からのアプローチになっていました。この庭には大きな開口部を持つダイニングが面しています。リビングにはさらに大きな開口部があり、北西の遠くまで開けた里山の風景が広がります。北西に面してこれだけ大きな開口部を取れるのも高断熱住宅ならではのことでしょう。住宅の両側はほとんど開口部がなく、それほど広くはない敷地の、隣家に配慮した設計になっています。

大きな開口部を設けたリビング
大きな開口部を設けたリビング
2階の奥にユーティリティを設置
2階の奥にユーティリティを設置
2階浴室
2階浴室
ダイニングからも緑が楽しめる
ダイニングからも緑が楽しめる

外観はシンプルな総2階に切妻屋根、階段部が3尺出る構成で、200㎜級の厚い屋根断熱にもかかわらず軒先を薄く見せ、窓庇も同じデザインでとても軽快な印象を与えています。2階の窓のアルミサッシが外観上は少し目立っていて気になりますが、室内側からはサッシを感じさせない納まりにこだわったといいます。

熱性能的に見ると、断熱厚さについてはこの地域の省エネ基準住宅を多少上回る程度ですが開口部は強化され、アルミPVCの複合断熱サッシと、先ほどの大開口は木製サッシを奮発しています。このサッシは、山形にあるアルスという会社と私との共同開発で、木製サッシとしてはローコストで大開口を実現するために、片引き窓で気密性能の確保と最新の高性能ガラスを組み合わせ、寒冷地でも十分使える性能を持っています。

偶然採用されたものと思われますが、ちょっとうれしい気がします。QPEXでの熱性能計算書は見ていませんが、これで熱交換換気が採用されていれば、省エネ基準住宅に比べて暖房エネルギーが40%以下で済むQ1.0住宅レベルー1に近い性能になっていると思われます。