燃料貧乏を撲滅せよ! イギリスの挑戦
こうした低所得の家族においてエネルギーコストが重くのしかかる現実は、日本だけのものではありません。イギリスではフューエル・ポバティー、つまり「燃料貧乏」が大きな問題となっています。
イギリスでは暖房等にかかる燃料費が所得の10%を超えている家庭を「燃料貧乏」として、2018年までにゼロにすることを目指しています。所得が少ない人は、建物の熱損失を減らしたり高効率の設備を導入するといった「先行投資」を行う必要がありません。そのため、熱がどんどん逃げていく家の中で、虚しくエネルギーを浪費するか寒さに耐えるしかないという厳しい現実があります。
こうした「エネルギーの罠」にとらわれて自力では脱出不能になってしまっている人たちのために、断熱改修や機器更新のための様々な助成制度が設けられていますが、この燃料貧乏の解決は容易ではないようです。
新プランで深夜電力は大幅に値上げ?
この電力自由化では、従来の一般事業者に加え、様々な新規参入事業者から、多様なプランが提案されました。筆者が暮らす東京でも、東京電力がオール電化向けのプランを大幅に変更しました。23時〜7時が割安なプランで比較すると、深夜電力の部分が割高になったことがわかります(図5)。震災前は6.05円まで下がり非常に割安だったのが震災後に12.16円まで上昇し、この新プランでは20.78円まで上昇しました。もちろん、その他のサービス条件が異なるので一概に比較はできませんが、それにしても新プランにおける深夜電力の割高感は目につきます。
ツケはこれからの人たちに?
実は、割安の現行プランを契約している人は、4月以降もこのプランを続けられましたが、新しい家を買うなどして新たに契約をする人は、4月以降は割高な新プランしか選ぶことができなくなりました(図6)。住み続ける人の利益を守るために、住み替える人にツケを回している、といっては言いすぎでしょうか?
よく、電気代を急に変えると生活している人が困るといいますが、だからといって新しい生活をはじめる人に不公平であってはならないでしょう。新しい家の省エネ性能を上げることでこの電気代の「痛み」を緩和することも、今後より重要となってくることでしょう。
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