久しぶりのブロック住宅
私はこの10年、木造の高断熱住宅Q1.0住宅の普及に没頭してきました。北海道のような寒冷地の住宅、さらには日本全体の住宅を、もっと快適で省エネな住宅に変えたいという思いからです。この住宅を見たときずいぶん久しぶりだなと思いました。設計者は山之内建築研究所の山之内裕一君。彼は室蘭工業大学出身で、秋田の西方里見君と同級生だという。私が室蘭工大に赴任したときは既に卒業していました。その山之内君がブロック住宅の設計をしているということにちょっと驚きました。聞くと、大手設計事務所に長く勤めて独立したときに事務所と自宅をつくり、それもブロック住宅だったという。意外な設計者の出現です。
小屋群住居と称する配置計画
この住宅は「小屋群住居O」というタイトルが付けられています。敷地の中に住宅本体と車庫などを別棟に配置し、昔の民家が敷地にシンプルな形態の母屋と納屋やいくつかの建物が配され、そうした住宅が家並みを形成するところに日本の町並みの美しさと長い時間に耐える原型があるという主張は、私も共感するところです。
私も住宅本体はできるだけシンプルに納めることで熱性能を高くローコストにつくり、車庫やアプローチを配置することでデザインを整えることを提唱してきました。シンプルな総2階建て住宅はデザインとしては単調になりすぎるのを嫌って、色々な複雑なデザインを目指すのは、お金も掛かり建物の表面積が大きく熱損失も大きくなり、何よりもそれによって雨漏りや雪による障害が出やすくなります。
ただ、この計画では母屋を敷地に対して斜めに振ったことで、空間的な配慮からか平面計画に凹凸ができ、それが外部空間や室内の空間の変化を生み出していることは認めつつも、私の主張とはちょっと違うなと感じます。