vintage & gallery pecoraneraで開催された「こんの工作所作品展『工作展-工作して作る日々-』」へ。
家具デザイナーだった父の仕事を見て「きれいな線の図面を描きたいと思った」ことがきっかけで学生時代は建築を学び、卒業後に家具工房での職人経験を経て独立したという、こんのあきひと氏。
職人として「箱物」と呼ばれるチェストやリビングボードなどの家具、ホテルのカウンターや店舗の什器などを手がけるかたわら、友人の影響ではじめた写真の展示がきっかけで徐々に現在の仕事へ志向が傾いていったという。ギャラリーでの人との出会いや、ものづくりを通じたコミュニケーションの広がりから、さまざまな「工作物」の制作を請け負っている。
展示期間中は会場に「作業場」を持ち込んで、木のネクタイを製作したり、バードコールづくりのワークショップをしたりと、いろいろな「工作」を見ることができるようになっていて、コンパクトな会場ながらいくつもの空間が交差するような雰囲気。
ウェディングの大通具や装飾、ライブイベントの会場装飾、作家が展示会で使う展示台なども数多く手がけているそうで、会場には展示台を含めた作品も多数。展示台だけでなく、アクセサリーや木のネクタイ、照明など、「展示するもの」も自作している。
「その展示専用の什器は、なかったらなかったで成立するもの。でも、あるとよりいい物なんです。その作品を見せるためによりいいものというか、展示する台を含めた世界観をつくることができるので。作家さんは展示の方法に悩んでいる人も多いので、その分は僕がサポートして、作品づくりに注いでもらえたらとも思いますし」という言葉通り、氏のつくった展示台に飾られた氏の作品たちは、バラバラのものではなく、ひとつの世界として心地いいかたちでそこに存在しているように見える。
「什器にしても作品にしても、こういうものがあるといいということはあまり気がついてもらえないので、今回はイベントとして見せることで、存在を知ってもらいたいと思いました。ここに来てくれる人とのコミュニケーションで、また何か広がりそうな予感もあって」。淡々と、でも情熱を持って語る様子に、「工作」の意味が重なり合って広がっていく様子が見えた気がした。
(文/Replan編集部)