高断熱構法の成り立ち

日本の在来木造住宅は、普通のつくり方では断熱材をいくら厚く施工しても、その性能が全く発揮されません。そればかりか、その工法に起因して、壁内や天井裏の見えないところで結露が発生し、木材が腐る問題が昭和50年代の石油危機の中、北海道で数多くありました。その原因を説明するのが図-1です。

図-1 在来木造住宅の結露の原因
図-1 在来木造住宅の結露の原因

土塗り壁から戦後、日本の在来木造工法はボードを使った空洞の壁に大きく変わりました。この空洞が、床下や天井裏に開放されていることが大きな特徴なのです。欧米の木造住宅も同様の空洞壁でしたが、壁の上下は木材で密閉されている点が大きな違いです。

風が吹くとこの空洞を通じて隙間風が入りとても寒くなる。こたつや火鉢でなんとかしのいできたが、やがて灯油ストーブが普及し部屋を暖める暖房が始まりました。同時に燃料費を節約しながら結露を防ぎ、快適性を向上させようと断熱材が施工されるようになり、昭和55年の省エネ法では住宅の断熱材施工が義務づけられました。

暖房によって室温が高くなると、壁内の空気も温まります。しかし、上下が開放されているため上昇気流が発生し、熱が天井裏に逃げ、同時に室内の湿気を含んだ空気や床下の冷たい空気が吸い上げられます。これが、断熱材が全く効かず、壁内や天井裏で多量の結露が生じた原因なのです。 私たちは、いまから30年ほど前からこれらの改良に取り組みました。要点は次の3点です。

①壁の上下を密閉すること
②住宅の隙間を塞ぐ気密層を設けること
③結露を防ぐ通気層工法を採用すること

驚くべきは、日本の家づくりの標準仕様の役割を担ってきた住宅金融支援機構の仕様書が、つい最近まで最も大事な、「壁の上下密閉」を義務づけていなかったことです。

図-2 気密工法
図-2 気密工法

図-2の左の図を改良したのが右の2つの工法になります。私たちのおすすめは一番右の床壁に合板を張る工法(ボード気密工法)でしたが、当時コストアップを理由にあまり採用されず、PEシートで上下密閉と気密層、防湿層を兼ねる工法(シート気密工法)が多く採用されました。

この工法は施工手順がこれまでと違い、大工が慣れるまで時間がかかりました。このあたりが高断熱構法普及の障害となったのですが、阪神大震災以降、壁に合板を張る工法や軋み防止のため床の大引きに厚い合板を直接打ち付ける工法が普及し始めました。

しかし、在来木造の木材加工がプレカット工場に移行する中、壁上部の気流止め用の木材が、プレカットのソフトウェアでは実現できなかったため、次はこの点が障害となってきました。