薪ストーブは低気密必須?

薪ストーブは強力な燃焼設備ですから、設置にも十分な注意が必要です。燃焼には酸素が必要なため、外から空気を供給する必要があります。

従来は、室内の空気をそのまま燃焼のために吸い込んでいたので、空気の流れを良くするためと称して、家全体をわざと低気密にしてしまう場合がありました。しかし、薪ストーブの吸引力はかなり強力なので、外の冷たい冷気が室内に大量に流入し、特に土間まわり・足元が低温になりがちです(図5)。

図5 低断熱・低気密+室内空気燃焼の薪ストーブで、土間は寒い屋外空間に
薪ストーブを設置する場合は、わざと低気密に施工するべきという話もありますが、そうすると燃焼に必要な空気が外部から吸い込まれるため、特に土間まわりはひどく低温になってしまいます。

暖房設備に配慮したせいで家中が寒くなってしまうようでは、まさに本末転倒です。

薪ストーブを設置する場合も家の断熱と気密は必須

最近の薪ストーブは外気を導入するダクトを接続することで、室内の空気ではなく、室外の空気を直接吸い込めるようになっています。こうした外気導入型の薪ストーブに、建物の高い断熱・気密性を併せることで、土間まで含めて快適な空間をつくることができます(図6)。

図6 高断熱・高気密+外気導入の薪ストーブで、土間は暖かい室内空間に
北海道のカフェの実例です。外気導入をダクト経由で行う薪ストーブにすれば、外の冷気を室内に吸引することなく、燃焼に必要な空気を確保できます。
薪ストーブを設置する場合でも、住宅の断熱・気密性をしっかり確保することは、快適性の確保と薪の節約のためにとても大事なのです。

せっかくの土間と薪ストーブの心地よさをじっくり味わうために、また使う薪の量を少なくするために、必要な断熱・気密性能をしっかり確保したいものです。

床下エアコンで 土間まで暖かく

最近では、地面の上にじかにコンクリートを施工する土間とは別に、通常の床の延長として床下空間がある土間もあります。この場合、床下にエアコンを入れて土間の下まで暖気を届けることで、土間の隅々まで暖かく保つことが可能となります(図7)。

図7 高断熱・高気密+床下エアコンで、土間まで含めて室内は快適温度に
富山県のモデルハウスの実例です。土間下空間まで床下エアコンの暖気を行き渡らせた、高断熱・高気密住宅の室内です。
床下空間は暖気が回りやすいように工夫され、立ち上がり部分を外から断熱しています。隅々まで快適温度に保たれている様子が一目瞭然です。

高断熱の開口部と組み合わせることで、土間といえど、完全な室内空間になります。土間というと昔のノスタルジックなイメージがありますが、実はどんどん進化しているのですね。  

断熱等級6と太陽光発電が必須のGX志向型住宅の紹介に続いて、土間と薪ストーブについて、実際のところを見てみました。

土間は外につながっているといえど、立派な室内空間です。断熱・気密性をしっかり確保し、薪ストーブも空気の導入方法を適切に選択することが大事だと分かりました。昔からあるように思えるものも、実は進化し続けています。知識を常にアップデートして、健康・快適で暖冷房費も安心な暮らしを守る、真の脱炭素住宅を実現していきましょう。


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