パナソニックのカセット型壁掛型熱交換換気システム
大きく、高価で施工しにくいドイツ製の熱交換換気システムから、ローコストで施工しやすい国産の熱交換換気システムに採用したのが、図4のパナソニック製カセット型熱交換換気システムです。
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熱交換効率が90%から約70%に大幅に下がってしまいましたが、コストが安いこととダクトが50φと1/3に細くなり、大工さんが施工できてしまうのが魅力でした。その後、メーカーに改良を申し入れて、時間はかかりましたが熱交換効率は80~86%にまで向上しました。天井に取り付ける形式でしたが、フィルターを清掃するには脚立に上る必要があり、高齢者にはとても危ないということから、写真のように壁掛型でも使えるようにさらに工夫してもらい、防虫フードなどもでき、外気フィルターの清掃は6ヵ月に1度になりました。これをなんとか1年に1度で済むように、さらに改良してくれるようにお願いしています。
そのパナソニックから図5のような壁掛型が発売されました。
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熱交換効率は少し下がりますが、小風量のためか音もとても静かで、外気フィルターの清掃が1年に1度で済みます。これを住宅に3〜4台設置すれば、ダクト配管もまったく不要で施工はとても楽になります。特に住宅の断熱改修のときはとても使いやすいと思います。
このような中・小型のシステムは効率を高くするのが難しいのですが、実は大型のシステムでも、カタログでは熱交換効率90%を謳っていても、実際に設計すると90%はとても実現できないものがほとんどです。表1は120㎡モデル住宅に換気設計をして、ダクトや吹き出し口の抵抗を計算して風量などを設定したときの計算上の熱交換効率を示します。
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カセット型はコンパクトですが、大きなシステムにそれほど遜色がないことが分かります。
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最近の高性能住宅での熱交換換気の暖房負荷削減効果
次世代省エネ基準住宅をQ1.0住宅レベルー1の性能に引き上げるのに、住宅のどこの断熱性能を引き上げるのがいいのかを検討する中で、熱交換換気の暖房負荷削減効果は25%くらいと見なしてきました。新住協では、会員に最低Q1.0住宅レベルー3以上で家づくりをしようと呼びかけています。このレベルの住宅では熱交換換気が必須条件で、熱交換換気なしではとても予算内での家づくりが不可能になります。
図6はQ1.0住宅レベルー1~4の住宅の熱交換換気を第3種換気に変更するとどのくらい暖房負荷が増えるかを示します。
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なんとQ1.0住宅レベルー3の住宅を第3種換気に変更すると、暖房負荷が2倍になるのです。第3種換気のまま暖房負荷をQ1.0住宅レベルー3まで削減しようとすると、外壁の断熱厚は500㎜にもなってしまいます。
これは、換気の熱損失が住宅の性能が上がって、住宅の総熱損失係数が小さくなっても、換気の熱損失は変わらないからこうなります。UA値には換気の熱損失は含まれませんから、UA値で住宅の性能を判断していると、この落とし穴にはまってしまうのです。
住宅の省エネ性能はUA値が小さいことではありません。暖房負荷が小さくなることで判断する必要があります。