薪ストーブと同じように炎が見える暖房機器「ペレットストーブ」。木質バイオマス燃料を用い、自治体によっては機器の導入に補助金が支給されるエコな暖房ですが、その仕組みや使い方は一般的にあまり知られていません。

そこで今回は、数年前に薪ストーブユーザーからペレットストーブユーザーに変わったインテリアコーディネーターの本間純子さんに、ご自宅で使用している電気式ペレットストーブ「ほのか」を具体例として、その仕組みや使い方のポイント、必要な費用についてユーザー目線で解説していただきます。


「ペレットストーブ」とは?

ペレットストーブは、100%木が原料の「木質ペレット」を燃料とする暖房器具です。タイマーや温度調節などの電気で制御できる機能が付いた「電気式ペレットストーブ」と、停電時でも使用可能な「無電源ペレットストーブ」があります。

ペレットストーブの燃焼の仕組み

今回はわが家の電気式ペレットストーブ「ほのか」を例に、ペレットストーブの仕組みや使い方、メンテナンス方法をご紹介します。

1. 燃料ペレットの動き

電気式のペレットストーブは、次のような仕組みで燃焼します。

  1. 「燃料タンク」から「燃焼ポット」にペレットが送り出される

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  2. 供給されたペレットが「点火ヒーター」で点火

  3. 点火後、一定量のペレットが自動的に「燃焼ポット」に供給され、燃え続ける
    ※燃料タンク内のペレットの残量は目視で確認の必要あり

  4. 煙は「排気ファン」によって煙突を通って屋外に排出され、灰は「灰受け」に落ちる

2. 空気の流れ(給気と排気)

ペレットを燃やすためには空気が必要ですし、燃焼時に発生する煙を外に出す仕組みが不可欠です。ペレットストーブには以下の3つの方式があります。

方式仕組み
FF式(強制給排気式)
燃焼のための空気を屋外から取り込み、ペレットストーブに内蔵されたファンで強制的に給排気する方式。室内の空気を燃焼に使わないため、現代の高断熱・高気密住宅に向いている
FE式(強制排気式)屋内の空気をペレットストーブ内に取り込んで燃焼し、煙はファンで強制的に屋外に排気する方式。燃焼効率は良いが、高断熱・高気密住宅では外気導入の仕組みが必要。断熱・気密性能に乏しい家向き
自然排気式長い煙突の上昇気流を利用して自然の力で排気する方式

近年の北海道の住宅の多くは、第1種〜第3種換気を採用した高断熱・高気密住宅なので、FF式ペレットストーブを使います。リフォームやリノベーションでペレットストーブを後付けする場合は、機種や施工方法について取付工事をする会社とよく相談しましょう。

ちなみにわが家は、FE式(強制排気式)ストーブで、室内の空気を使って燃焼させ、煙はペチカの中を通って集合煙突から排気する仕組みです。

わが家の電気式ペレットストーブは、室内の空気を取り込み、かつて使っていたペチカを通して排気する強制排気(FE式)。火力を強くすると、正面下のスリットから温風が出る。ファンの音はするが温風はソフト
わが家の電気式ペレットストーブ「ほのか」は、室内の空気を取り込み、簡易ペチカの煙道を通して強制排気する(FE式)。火力を強くすると、正面下のスリットから温風が出る。ファンの音はするが温風はソフト

24時間の機械換気が義務化される以前に建てた家で、今の住宅ほど断熱・気密性が高くないため、外気の出入りがそこそこあって酸欠になることはありません。雨の日が続くなどで煙突内の湿度が高いと排気が進まず、燃え方がよくありませんが、徐々に排気の流れができて、燃焼状態が改善されます。

ペレットストーブの燃料「木質ペレット」とは?

「木質ペレット(以下、ペレット)」とは、間伐材や端材となった木を粉砕・圧縮した固形燃料で、1個の大きさとしては直径6㎜、長さ10〜30㎜くらいの円柱形です。表面がツヤツヤしているので「接着剤が使われている」と思われがちですが、原料は木材のみ。薪や炭などと同じ、木質バイオマス燃料の一つです。

ペレットストーブの上手な使い方のコツ

人によっては面倒に感じるかも?ペレットの補給

ペレットは、主に1袋10kg単位で販売されています。ホームセンターなど身近で販売されているので、購入しやすさのハードルは低い燃料です。

ただ問題はその重さ。持ち上げるとけっこうな重量感ですので、女性のユーザーからはあまり歓迎されないでしょう。わが家で使っている「ほのか」の燃料タンクの容量は、1袋分の10kgですが、タンクのある80㎝の高さまで持ち上げるのは大変。そこで、10kgをあらかじめ小分けにしてペレットを補給しています。

燃料タンクの様子。これはペレットが70%くらい入った状態
燃料タンクの様子。これはペレットが70%くらい入った状態
ペレットが供給される様子。ロストルとロストル囲いの中にペレットが溜まり、定量になると点火する。
下に見えるのが灰受け。ロストルにあいた穴からの風でペレットの灰が吹き飛ばされ、周囲の壁、扉、天井に付着する
ペレットが供給される様子。ロストルとロストル囲いの中にペレットがたまり、定量になると点火する

私は長らく薪ストーブユーザーだったので、ペレットの追加作業はさほど困難でも面倒でもなく、むしろ薪に比べるとかなり楽になりました。でも灯油やガスストーブのユーザーだった方には、作業の手間が増えるように感じられるかもしれません。

燃料がなくなるとブザーが鳴って消火したことを知らせてくれますが、再点火まで時間がかかるので、燃料を切らさないように注意が必要です。

「温度調節」はできる機種・できない機種がある

ペレットストーブは、温度調節ができる機種とできない機種があります。わが家の「ほのか」には温度センサーはついていません。気がつくと室温が30℃ということも…! 薪ストーブの頃にはしょっちゅう室温30℃になっていた(!)ので、特別なこととは感じていないのですが…。

ペレットストーブに変えたことで、むしろ室温変化には敏感になり、日常的に換気や火力調節に気をつけるようになりました。仕事に集中しすぎてストーブのことを忘れ、暑かったり寒かったりということはありますが、これもペレットストーブとの付き合い方かなと思います。

火事を防ぐためにも「日々のメンテナンス」が大事

ペレットストーブは、日常的なお手入れが大切です。火を使うということは、火災の危険と隣り合わせにいるということ。機器を長持ちさせて快適に安心して暮らすためにも、ペレットストーブの「平常状態」を知っておく必要があります。

そのために私の場合は毎日ペレットストーブの内部を掃除しながら、異常がないかを確認しています。一般的に週に一度、または月に一度でOKとされるお手入れも多いですが、毎日見ていると、いつもと違う状態に気付きやすくなり、調整や修理への対応が早くなります。

掃除後のペレットストーブ炉内の様子。灰や汚れを取り除いて、すっきりと気持ちがいい
掃除後のペレットストーブ炉内の様子。灰や汚れを取り除いて、すっきりと気持ちがいい

日常の掃除とは別に、電気式ペレットストーブは1年に一度、専門業者による点検・メンテナンスを行います。費用はかかりますが、火災のリスクを防ぎ、次の冬も安心して安全に使うための備えです。

ペレットストーブの「お金の話」

ペレットストーブを選ぶときに気になるのが、やはりお金のことでしょう。導入・設置にかかる「イニシャルコスト」と、暖房やメンテナンスにかかる「ランニングコスト」の項目を私なりにまとめましたので、以下を参考にしてみてください。

①イニシャルコスト

イニシャルコスト
ペレットストーブ本体の金額・10万円台から100万円近くまでさまざま
・海外製品は比較的大型で価格は高め。機能は充実している
・国産製品は比較的小型で海外製品よりリーズナブルな価格
ペレットストーブの付属品の費用設置状況によって必要な部品が異なる。取り付け方も含めて事前に確認が必要
施工費・取付費・運搬費見積書の中に「工事費」として一括で記載される。費用は必要な工事や設置状況により変動。ペレットストーブは本体が非常に重いため、送料は高め
補助金

市町村によっては補助金を用意している場合があるので、住んでいる自治体のホームページで確認。一般的に予算枠に達すると終了するため、補助金の受け付け開始時期をあらかじめ確認し、手続きは早めに済ませる

※ペレットストーブを正しく設置したことを証明する書類や写真が必要なため、取り付け工事をする会社に相談すると、手順などを教えてもらえて安心

②ランニングコスト

ランニングコスト ※わが家の場合
木質ペレットの費用

・1袋10kgあたり770〜880円
・12時間燃焼で、1日に15kg使用
※メイン暖房で使う場合
※1日あたりのペレット使用量は燃焼状況や快適温度により違いあり
※保管スペースがあれば、まとめて1シーズン分を購入すると、配送手数料を少なく抑えられる

毎日のメンテナンスに必要な物とその費用目安・掃除用品 一式3,000円程度
(刷毛、ブラシ、ヘラ、ガラスクリーナー、ウエス、ペーパータオル、クイックルワイパー(ドライタイプ)、新聞紙)
・ストーブ用掃除機(10,000円〜)
年に一度のメンテナンス費用基本的にはペレットストーブの設置・施工会社へ依頼。機種やメンテナンスの内容等で金額が異なるため、あらかじめ作業内容を確認して見積もりを
部品交換の費用
(不定期)
ペレットストーブは薪ストーブと同様に燃焼箇所の部品が消耗しやすいため、必要に応じて部品交換。その際には部品代と送料がかかる。機種や部品によって金額は異なる

ペレットストーブは薪ストーブほどの労力はかからず、遠赤外線効果で体の芯までしっかりと温まり、炎が楽しめるのも魅力の暖房機器だと感じています。興味がある方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。