新型ガラスで住宅の暖房負荷はどのくらい減るか
日射侵入率向上型の新型ガラスによって、住宅の暖房負荷はどのくらい減るのでしょうか。図5に、120㎡モデルプランで、サッシとガラスを変えた場合の暖房負荷(灯油消費量)のグラフを示します。
サッシはシャノンⅡの一般型と図4に示したウレタン注入のシャノンⅡUF、YKK APのAPW430です。参考にLIXILのPVCトリプルサッシとYKK APのAPW330ペアガラスサッシを選びました。シャノンとAPW430は通常のガラスと新型ガラスを比較します。建設地点は、札幌、帯広、旭川です。
シャノンⅡは、設計が一番古く性能が他社より若干低いのですが、新型のESクリアのガラスを入れると、YKK APやLIXILの通常ガラスの場合と同程度になります。シャノンⅡUFは一番暖房負荷が小さくなっています。サッシ枠の熱損失で効果を稼いだことになります。シャノンⅡは、新しいNS50というサッシにモデルチェンジしていますが、まだこのサッシの詳細な性能データが公表されていないため、QPEXで計算することができていません。
YKK APのAPW430は、一番新しい設計のサッシで性能も高く、新型ガラスで10%程削減されます。日射量の大きい帯広ではさらに効果があるようです。vの枠に断熱材を挿入したサッシでは、廃棄時の分別を考慮して部分的にしか挿入できなかったためか、その効果はそれ程大きくはありません。
グラフを見ると、新型ガラスの効果はそれほど大きくは見えませんが、対象の住宅の性能レベルがQ1.0住宅レベルー3ですから、このレベルで10%程度の暖房負荷削減はかなり大きいといえます。実際グラフで分かるとおり、札幌、帯広ではQ1.0住宅レベルー3がレベルー4になっています。ガラスを変更するだけで、このような効果が得られるのですから、こうしたガラスが普及することが望まれます。
しかし、国産メーカーはこのガラスをつくることはできないそうです。理由は、建築用ガラスの生産を合理化して、大きなガラス溶融釜とフロートガラスをつくる設備が1つしかないからです。このガラスは、ガラスそのものの成分比を変えてつくるのだそうで、専用の設備が必要になるため、国産メーカーにはその設備投資はもはやできないのだそうです。
図6には、4×4間プロトタイププランの住宅で同様の計算をした結果を示します。
4×4間の住宅のプランと南立面図は、連載第31回の記事に掲載されています。
上段にもともとのプラン、下段には南面の開口部を拡大したプランの結果を示しています。4×4間の総2階とすることによって、120㎡プランと同じ断熱仕様でも、普通のガラスでQ1.0住宅レベルー4になっています。南面の開口部を拡大すると更に暖房負荷が少なくなり、総2階プランが効率的に省エネレベルを上げることができることを示しています。南面拡大によって、新型ガラスの効果も大きくなっていることも分かります。サッシメーカー各社で、このような新型ガラスを装着できるようになることを期待するとともに、単にUA値を小さくするだけで、暖房負荷削減には貢献しない方の新型ガラスを選択してしまうことのないようにしてください。