厚くてツヤがある手のひらサイズの葉が魅力的な「ツピダンサス・カリプトラツス」。熱帯アジア地域が原産地ではあるものの寒さに強く、丈夫で育てやすいことから人気の高い観葉植物です。
前回「フィカス・ベンガレンシス」の上手な育て方」を聞いたリプランスタッフのクラモトさんは、この「ツピダンサス・カリプトラツス」 を2年ほど前に購入。自宅のリビングに置いて、緑を愛でる日々を楽しんでいます……が、新芽が黒くなってしまったり、葉が変色してしまったりと、「ツピダンサス・カリプトラツス」の体調は決して良好とはいえません。
ネット情報を頼りに一つずつ対処してみているものの、「この判断は、この対処法は、果たして合っているのか!?」とモヤモヤする日々。ということで今回も「Flower Space Gravel 江別店」のスタッフの矢幡さんに、アドバイスを求めました。
「ツピダンサス・カリプトラツス」の葉が黒くなる原因とは?
クラモト わが家の「ツピダンサス・カリプトラツス」には紆余曲折がありまして……。最初に発生したのは、新芽が黒くなって落ちてしまうトラブル。自分なりに調べたところ、原因は水やり不足にあったようで、だいたい1週間程度の間隔で水を与えるようになってから状態は安定しました。けれど、今度は葉の調子が悪くなってしまって。
矢幡さん 葉が変色してしまったのでしょうか?
クラモト こんなふうに、葉先が黒くなってしまいました。
クラモト 実は、水やりの際にこの程度なら大丈夫かな?としばらくの間、受け皿に水がたまっている状態にしていたんです。水に漬かり過ぎたのが原因で根腐れを起こしたと思って、受け皿の水をきちんと捨てるようにしたところ、改善してきてはいるのですが、この対処は正解だったのでしょうか?
矢幡さん 新芽が黒く変色するのは水やり不足、葉が黒くなってしまうのは水に浸かっていたことによる根腐れ、という見立ては間違いないと思います。根も黒っぽくなっていませんか?
クラモト なっていました!これってどうすれば良いのでしょう?
矢幡さん 一度、根の整理をしてあげて、その際に鉢のサイズを大きくする「鉢増し」もした方が良いと思います。
クラモト 「鉢増し」はどのくらいの頻度で必要なのでしょうか?
矢幡さん だいたい2〜3年目を目安に植え替えが必要になってくるので、クラモトさんの「ツピダンサス・カリプトラツス」もそろそろ植え替えのタイミングかと。今よりひとまわり大きな鉢に替えてあげてください。
クラモト 見た目には今のままで問題なさそうですが、定期的に植え替えが必要なんですね。
矢幡さん 外からは問題なく見えていても、鉢の中で根が回ってしまう「根詰まり」を起こしている場合があります。植え替えの際は、一度根を手で優しくほぐしてから、ひとまわり大きな鉢に植え替えて、ゆとりを持たせてあげてください。どの植物にも言えますが、根が窮屈だと生育が悪くなり、葉に症状が出る原因になります。
観葉植物を大きく育てるのに必要なことは?
クラモト ちなみにわが家の「ツピダンサス・カリプトラツス」は、 すべての根がダメになっているということはないでしょうか……?
矢幡さん 新芽が出てきているので、すべてが根腐れを起こしているわけではないと思いますよ!まずは根っこの整理、そして植え替え後の土に活力剤を与えて根の活着を促してあげてください。
クラモト 「根っこの整理」とはつまり「黒や茶色に変色している根を切る」ということでしょうか?
矢幡さん その通りです。「ツピダンサス・カリプトラツス」に限らず、根を切るときは必ず消毒したハサミを使ってください。消毒をしていないハサミで根を切ると、バイ菌が入ってしまうことがあります。植物園だと、株ごとにハサミを変えていたりもするんですよ。
クラモト へえー、けっこう繊細なんですね…。
矢幡さん また、黒く変色している葉があったら、根の整理と同時に切ってください。今後さらに状態が悪化してしまうので。葉が変色するのはだいたい
- 水が足りていないとき
- 根腐れを起こしているとき
のいずれかです。黒っぽくなるのは根腐れが原因。残念ながら状態が回復する可能性はほとんどありません。
クラモト:葉も剪定が必要なんですね!その際のコツや注意点はありますか?
矢幡さん 剪定ではまず、観葉植物全体をどの程度の高さ・幅にしたいかを決めます。太い幹を切ると成長が止まってしまうことがあるので要注意ですが、樹高を抑えたい場合は切ってしまっても構いません。
葉が重なって蒸れているようであれば、そこも少し整理してあげると良いですよ。クラモトさんが育てている「フィカス・ベンガレンシス」を含む、いわゆる「ゴムノキ」は、幹や葉を切ると白い樹液が出てきます。
葉についた樹液は優しく拭き上げてください。人によっては、手に付いた樹液でかぶれてしまう方もいらっしゃいます。心配な方はビニール手袋をして作業したほうが安心です。
クラモト 正しく剪定すれば、幹を太くできますか?
矢幡さん 幹を太くするのに必要なのは「剪定」と「肥料」です。幹にも栄養が行き渡るようにするためも葉の剪定で葉数を減らし、肥料を少しずつ与えてください。
あとは日照ですね。「ツピダンサス・カリプトラツス」は日光が少ない日陰でも育つ「耐陰性」の高い植物ではありますが、ある程度の日照は必要です。とはいえ西日が当たり続ける環境はNG。室内のやわらかな陽の光が1日を通して射し込む場所に置いてあげるのが理想です。
水やりのタイミングは
土の乾き具合でその都度判断
クラモト ところで今は1週間の間隔で水を与えているのですが、水やりのタイミングは問題ないでしょうか?
矢幡さん 写真を見る限りは大丈夫そうですね。水やりのタイミングが分からないという声をよく聞きますが、これはやっぱりじかに土に触れて乾き具合を確認するのが一番確実です。植物を置いている環境や季節などで乾燥具合は大きく変わるので、水やりは「週に1回」などと決め込まないほうがいいです。
クラモト 土の乾き具合は、やっぱり見た目で判断するのは難しいですか?
矢幡さん 非常に難しいです!表面が乾いていても、土の中にはまだ水分が豊富、ということはよくあります。確認の仕方ですが、一番簡単なのは土の中のほうまで指を入れてチェックする方法。
フィカス・ベンガレンシスについてお話しした際にも紹介した「水やりチェッカー」を根元に挿しておくのも良いでしょう。水やりチェッカーは、乾いてくると白く変色しますので、水やりのタイミングを見える化できます。あと「割り箸」を代用することもできますよ。
クラモト 割り箸ですか?!
矢幡さん 割り箸を根元に半日ほど挿しておくんです。抜いたときの割り箸の湿り具合で判断するのですが、とても便利ですよ。観葉植物の育て始めは特に、水やりのペースがつかみづらいと思うので、水やりチェッカーや割り箸を使って適切なタイミングを確認すると良いでしょう。慣れてきたら、鉢全体の重さで乾き具合の判断ができるようになりますよ。
クラモト 確かに!乾いていると軽いし、湿っていると重いですよね。鉢を持ち上げるのも水やりのタイミングを知る手段の一つなんですね。
埃や虫の防止にもなる「葉水」は毎日でもOK
クラモト ちなみに葉水の頻度はどの程度が目安でしょう?
矢幡さん 葉水は埃や虫の防止にもなりますし、毎日やっても良いくらいです。「ツピダンサス・カリプトラツス」は熱帯アジア地域の植物なので、空気中の湿度を好みます。葉の表、裏ともに霧吹きで葉水をしてあげてくださいね。
クラモト ありがとうございます!水やりも、剪定も、根の整理も、日照も、教えてもらったことを実践して大きく、太く育てたいと思います!
矢幡さん 頑張ってください!ただ、幹がかなり太めの植物を希望する場合は、購入時にすでに幹が太い植物を選んだ方が良いですよ。幹を太くするのは非常に時間がかかりますから…。
クラモト ちなみに、どれくらいかかるのでしょう?
矢幡さん 10年単位ですね。
クラモト …ほどほどの太さを目指します!笑
取材協力/Flower Space Gravel https://gravel-4187.com
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