内窓改修だけではほとんど断熱効果はない

部分改修の断熱効果を、QPEXで計算してみました。住宅は図4の120㎡モデルプランです。

図4 120㎡モデル住宅の1階のみ断熱・耐震改修を行う

この住宅の1階の一部を断熱改修しようとしたのですが、このプランでは1階の一部というわけにはいきません。そこで、1階全体を断熱改修の対象として、2階は改修の対象から除外することにしました。こうすれば和室を寝室に改修し、快適に暮らすことができそうです。  

図5にその計算結果を示します。

図5 120㎡モデル住宅の1階のみ断熱改修した場合の効果

改修前の1階は、住宅全体より熱損失が大きくなります。天井にまったく断熱材のない住宅になるのですから当然です。開口部は昔の2重窓という想定で、内窓を最新のLowーEペアガラスの内窓に交換しますが、もともとの2重窓にガラスが1枚増えるだけですから、その効果はほとんどありません。気流止め設置のみの方が効果は大きいのです。

天井の断熱がないため、その熱損失が莫大でした。そこで、天井に断熱材を施工すると当然その効果は最大となり、ようやく北方型住宅並みになりました。その他のいろいろな改修を行うことによって、住宅全体が北方型住宅の仕様で建て替えた場合に比べて、住宅が小さくなっていることもあり、ほぼ半分の暖房費で済むことになります。  

補助金の条件として内窓改修を行うことになっていて、サッシメーカーは内窓改修で住宅が省エネ・快適になるという宣伝をしていますが、これはいささか誇大宣伝です。気流止め工事を必ず行い、既存のGWの性能を引き出し、気密性能を向上させることが重要なのです。

マンションの断熱改修では内窓改修の効果は高い

マンションも建設から時間が経ち、中古マンションが売買されて、リフォームが盛んに行われていますし、長い間住み続けてなんとか断熱改修をしたいと考えている方も多いと思います。マンションの断熱改修についてどのような改修ができるのかなど、その改修の効果を示す解説はあまり見たことがありません。そこで、マンションについても内窓改修の効果を検証してみました。

北海道のマンションは、木造住宅に比べるととても気密性が高く、断熱材を施工しないと激しい結露が起こるため、早くから断熱材が施工されてきています。計算のモデルとして、図6のようなマンションを想定してみました。

図6 断熱改修計算を行うマンションプラン(71.4㎡)

マンションは、上下左右とも隣の住戸がある中住戸と、妻壁や屋上スラブ、1階の住戸など、床・壁・天井の一部が外気に面している住戸があります。当然こうした住戸は熱損失が大きくなります。まずそれらの住戸の熱損失を計算してみました。

1階床、妻壁、最上階天井には押出PSF25㎜が施工してあると想定し、窓は2重窓という想定です。妻壁には窓が2ヵ所付いているとしました。 中住戸に比べて、やはり1階妻住戸や最上階妻住戸は大きな2面が外壁に接しているため、熱損失も大きくなり、暖房費は中住戸の約1.5倍にもなります。

マンションの中住戸は外壁がとても小さく、南北の窓がついている面しかありませんから、熱損失の中に占める開口部の割合がとても大きくなります。したがって、窓の性能を上げるとその効果はとても大きいことが分かります。木造戸建て住宅で外壁や床天井の熱損失がとても大きいのと比べると、大きな違いです。

図7 マンションの断熱改修効果

マンションの床・壁・天井の断熱改修には莫大な工事費がかかり、中古マンションのリフォームでもほとんどできません。その代わり、内窓改修はとても手軽で、その効果はとても大きいことが分かりました。マンションの断熱リフォームを考えている方は、補助金を大いに利用して、手軽に内窓改修することがお勧めです。