断熱改修に、今、国や自治体が多額の補助金を出しています。これを利用してリフォームを考えている方も多いと思います。しかし、この補助金のほとんどが内窓設置を条件としています。サッシメーカーはテレビCMでその効果の高さを宣伝しています。しかし戸建て住宅では、窓からの冷輻射や隙間風を抑える効果はありますが、全体改修でも部分改修でも暖房費を節減する効果はほとんどありません。効果が実感できる改修をしましょう。

圧縮GW気流止めで住宅の基本断熱性能向上を

私たちは30年以上前に在来木造住宅の高断熱・高気密工法を開発し、その普及に努めてきました。当時は新築住宅の建設戸数も多く、性能向上が必要とされていました。その後、既存住宅の改修にも取り組み、2010年には断熱・耐震同時改修工法を提案しました。この工法の開発は旭川の道総研との共同研究で、主として耐震改修の新工法を取り入れることができました。道総研のホームページからマニュアルがダウンロードできます。  

図1の左図のように、過去に建設された普通の住宅は今の高断熱・高気密住宅と違って、図の丸印のところに気流止めがなく、空気が自由に通り抜けるようにつくられています。

図1 圧縮GW気流止めによる断熱・耐震同時改修工法の概要

住宅を暖房するとその暖房されたスペースに面する壁の中も暖められ、壁の中で上昇気流が発生します。これが天井裏に抜け、その力で壁の隙間から室内の暖かい湿った空気が壁内に吸い込まれ、床下の冷たい空気も吸い上げられます。その結果、外壁内や天井裏で木材を腐らせる原因となる結露が大量に生じ、壁の断熱材がほとんど効かないことになるのです。住宅の気密性が低く、隙間風が大きくなるのもこれが原因です。  

新築住宅では、この丸印のところから空気が流れないようにつくり方を変えて、高断熱・高気密住宅としたのですが、既存住宅の改修ではそれができません。しかし、この場所に気流止めは絶対必要です。図1の右図のようなイメージで改修する必要があるのです。そこで考え出したのが、図2の圧縮GW気流止めです。

図2 圧縮GW気流止めの考え方とつくり方

図1の丸印のところは、壁の石膏ボードなどを止める釘が壁の中に出っ張っていて、不用意に手を入れるとけがをしたりします。このような隙間に簡単に差し込めるように、厚手のGWを布団圧縮袋のように、ポリ袋に入れ圧縮します。GWは反発力の強い高性能GW16㎏/㎥を使います。厚さは入れる隙間の2倍程度がいいようです。

これを柱間の寸法に切断しポリ袋に入れるのですが、市販の45Lの高密度ポリエチレンの袋がいいようです。メーカーにあらかじめ袋に入った、図2の写真のような製品をつくってもらいました。パラマウント硝子工業で販売しています。もちろん自作したものでも構いません。  

これを丸印のところに挿入して、カッターで切り込みを入れて膨らませます。入れ方は場所によっていろいろ工夫します。これによって、まったく効いていなかった既存のGWが復活します。また住宅のいろいろな場所にある細かな隙間からの空気が天井裏や床下に漏れることがなくなり、住宅の気密性能が大幅に向上します。住宅の一部屋ごとに施工計画を立てれば、暮らしながらの工事も可能で、ローコストに断熱・耐震改修ができます。

部分断熱改修はもっと簡単にできる

最近はリフォームが盛んに行われています。そして、同時に断熱・耐震改修を行って、省エネや地震による被害を減らそうと、国や自治体が多額の補助金を用意しています。しかし、住宅全体を改修するには多額の工事費が必要になります。

一方、世帯人数も減っているので、住宅全体ではなく部分改修の工事例がほとんどだと聞きます。そこで、今年新住協では、そうした部分改修を多く手がけてきた会員工務店から助言を得て、部分改修のマニュアルを作成しました。新住協技術情報第60号として販売していますが、その中から工法について紹介したいと思います。  

基本は図3に示すとおりです。

図3 部分断熱改修の簡易工法

断熱改修エリアのすべての壁上部には圧縮GW気流止めを挿入します。下部にも入れたいのですが、施工に手間がかかりますので省略します。上部がきちんとふさがっていれば、上昇気流は生じません。

施工のポイントは、断熱改修エリアの天井材をすべて撤去することです。これで気流止めの施工が簡単になり、天井面の気密と断熱施工をしっかり行うことができます。天井を撤去すれば、暖房室と非暖房室の間の間仕切壁に断熱材を吹き込むことも簡単になります。それ以外の壁の下部にもセルロースファイバーを50㎝ほど吹き込んで気流止めの代わりにできるかと考え、道総研に実験をお願いしています。これで住宅はびっくりするほど暖かくなり暖房費も激減するようです。