真夏に向けて陽射しが強まる今日この頃。室内に光を多く取り入れると、その分日射熱もたくさん入って室温が上がります。できることなら、夏は暑い空気は入れたくありません。「窓からの日射熱をどう遮るか」を考えることは、室内を快適にするためにも、エアコンにかかる電気代を節約するためにも重要です。

そこで今回は家づくりで知っておきたい、カーテンをはじめとするウィンドウトリートメントを生かした「窓辺の遮熱対策」について、インテリアコーディネーターの本間純子さんに解説していただきます。


カーテンで遮熱。その効果は?

「カーテン」、「ブラインド」、「ロールスクリーン」など、窓を覆う機能があるインテリアの総称を「ウィンドウトリートメント(または、ウィンドウカバリング)」と呼びます。近年は遮熱性能をうたう「ウィンドウトリートメント」製品が注目されていますが、気になるその効果はというと、

「あるけれど、ものすごく大きな差が実感できるかというと…」

というのが正直なところ。特にウィンドウトリートメントによる「採光と遮熱の両立」はなかなか難しいテーマです。

もちろん、ファブリックで遮熱基準をクリアした製品には、機能性表示マークとして「遮熱マーク」が付与されていますし、それ以外の素材についても各メーカーが根拠のある数値を出して製品化しています。

ただ、それ単体ではどうしても効力に限界があるので、

  • 断熱性の高い窓と組み合わせる
  • 正しい寸法で取り付ける

までを一緒に対策することで、カーテンなどのウィンドウトリートメントが遮熱により効果を発揮するでしょう。

ファブリック製品は
「遮熱マーク」で性能を判断

製品が遮熱機能を持っているかどうかは、カタログやサンプルの機能性表示マークで確認することができます。

「遮熱マーク」は、主に以下の条件を満たした布製の製品に付いています。

  • 一般的なレースカーテンに比べて太陽光を遮ることで室温の上昇を抑える
    (遮熱率25%以上)
  • 日常生活に差し障りない明るさ(遮光率99.4%未満)

    ※「遮光カーテン」には該当しない

機能性表示マーク【遮熱マーク】
一般のシアーカーテンと比較して、節電対策上の相対的効果が認められ、遮熱率、遮光率の判定基準に適合するシアーカーテンおよび布製ブラインドに表示することができる。

※出典・参照 https://www.nif.or.jp/mark

これは布製の

  • レースカーテン
  • ロールスクリーン
  • プリーツスクリーン
  • バーチカルブラインド(横型ブラインド)

が対象です。遮熱マークの製品を使用しても室温が急激に下がることはありませんが、太陽の熱や光を室内に取り込みにくくすることで冷房効率を上げ、夏の室内空間の快適性と省エネ効果が期待されます。

カーテンで遮熱

ゆとりの広さに設計されたエントランスロビー。テーブルセットを置き、花や絵画を飾り、照明も複数配置した。ちょっと立ち寄っただけの来客がついつい長居をしてしまいそうな居心地の良さがある

実は「遮熱カーテン」というマーク表示はない

先に触れたとおりレースカーテンには「遮熱レースカーテン」がありますが、いわゆる「カーテン(厚地のドレープカーテン)」には、ほとんどのメーカーでマーク表示がありません。これは基本的に、カーテンは昼間は開けて使うものだからです。

「遮熱カーテン」がない理由とは?

多くのカーテンメーカーには「遮熱カーテン」という製品がありません。その理由は、

  • 一般カーテン
  • 遮光カーテン
  • 遮熱カーテン

を比較したカーテンメーカー(東リ)の商品テストが説明しています。端的にいうと、「カーテンの違いは室温の変化に大きくは影響しない」のです。つまり「どんなカーテンでも、一定の遮熱効果は得られる」ということです。

実際、強い西陽を受けたカーテンを触るとかなり熱くなっています。カーテンが窓からの日射熱が室内に広がるのをとどめていることが分かるでしょう。ですので、日中に家を空けるときはあらかじめカーテンを閉め切っておくと、日射熱で室内がアツアツになるのを防ぐのに多少なりとも効果的です。

東リのウェブサイトには「遮熱カーテンと表示しない理由」が説明されています。気になる方はぜひ読んでみていただければと思います。
https://www.toli.co.jp/product_curtain/syanetsu/qa.html

とはいえ一部には「遮熱カーテン」と表示されているものもあります。これは販売元のメーカーが独自に一定の条件下で試験を行い、遮熱効果があると定めた商品です。

私たちが体感する「涼しさ」と「遮熱カーテンがもたらす効果」のイメージは必ずしも一致するとは限りません。商品を選ぶ基準の涼しさを確保する方法の一つと考えましょう。

遮熱レースカーテン

一方でレースカーテンには遮熱性のある製品があります。カーテンを閉じると室内が暗くなってしまうので、日中、室内に外の光を取り入れながら遮熱したい窓には「遮熱レースカーテン」がおすすめです。

「遮熱レースカーテン」には製造方法の違いで主に2種類があります。

「ブライト糸」を用いた遮熱レースカーテン

太陽の熱を反射する「ブライト糸」を使用して室温の上昇を抑えるもので、裏側(窓面側)が白く光るように見えます。レース特有の透ける感じが少なめで、透けにくさを目的とした「ミラーレースカーテン」と似ています。商品によって透け感は異なりますが、遮光カーテンのような等級による区分はありません。

ブライト糸を使った「遮熱レースカーテン」は、ホワイトやアイボリーなどの高明度色が一般的です。特にホワイトは光を反射しやすいため、外の風景が見えにくく、うっとうしさや閉塞感を感じる方もいるので、生地サンプルで透過性の確認をしましょう。織り糸が細く、織り糸の間隔が広い生地は、比較的透け感が良いです。

「ステンレス粒子」をコーティングした遮熱レースカーテン

レース生地の裏側に「ステンレス粒子」をコーティングすることで、太陽光による室内温度の上昇を抑えるタイプの遮熱レースカーテンです。オーガンジーの薄手の生地や、ブラウンやグレーなどの低明度色の生地でも加工でき、透過性が高いため、エレガントな雰囲気が損なわれません。遮熱性とインテリア性を両立したい空間に向いています。

カーテン以外の窓辺の遮熱対策

住宅のウィンドウトリートメントでは、カーテン&レースカーテンの組み合わせが最も一般的ですが、最近は窓の位置や開き方、サイズ、優先したい機能(外の景色を楽しむ、日射を取り込むなど)によって、カーテン以外のものを選ぶケースも増えています。

ここでは家づくりで特によく見るウィンドウトリートメントの中で、遮熱性に配慮した製品とその特徴をご紹介します。

遮熱ロールスクリーン

遮熱ロールスクリーンは、特殊な金属やセラミック、酸化チタンなどを含ませた織り糸が熱線を反射させる仕組みの生地でつくられています。透過性があり、レースカーテンと同様に使用されます。

吹き抜けは特に高所が高温になりやすいため、陽射しが強い方位にある高窓への遮熱ロールスクリーンの設置は、室温上昇を防ぐ効果が期待できます。

また特殊なアクリル樹脂を生地にコーティングした、遮光性の高いタイプもあります。光は透過しませんが、西陽の暑さを抑えたい窓などに向いています。

遮熱ベネシャンブラインド(横型ブラインド)

スラット(羽)の角度を変えることで光の量をコントロールする「べネシャンブラインド(横型ブラインド)は、明るさや眩しさの調節が自由自在です。

スラットには、アルミ、木、竹、プラスチックなどの素材が使われています。この素材の熱伝導率の違いが、室温に影響します。

熱伝導率が低いのは木製のスラット。遮熱効果が高いと言えます。一方で熱伝導率が高いのは、アルミのスラット。日射でスラットが熱くなりやすく、室内の空気を温めてしまいます。

そこで最近注目なのが「遮熱スラット」です。これはアルミスラットの表面に遮熱塗料を塗ることで日射熱を反射させて、室温の上昇を抑える働きをします。

特に濃い色のアルミスラットの実験では、同色の一般スラットより遮熱スラットの方が、室温上昇を大きく抑え、遮熱効果が大きいことが商品テストから分かっています。一般スラットと同価格の遮熱スラットもあるので、北面以外のブラインドには遮熱スラットを選ぶと良さそうです。

「正しい寸法」で遮熱効果を高める

遮熱効果を高めるには、カーテンを正しい寸法で取り付けることが重要です。寸足らずで床との隙間が大きいと、そこから夏場の熱気や冬場の冷気が室内に多く流れ出て、せっかくのカーテンの効果が薄れてしまいます。

掃き出し窓の場合は「床上1㎝」が一般的

「掃き出し窓」の場合は、カーテン(ドレープ)もレースも、生地が床に付いて擦れないよう床上1㎝の丈に採寸するケースが多いです。見た目の雰囲気を重視して、生地を床にためる「ブレイクスタイル」もありますが、これだと床との間に隙間がない分、遮熱性は高まりますね。

◯ 掃き出し窓のカーテンの丈寸法は、床上1㎝が一般的
× 掃き出し窓のレース丈が短い悪い例。室内が見えて防犯上良くないうえ、遮熱・断熱の効果も弱まる

腰窓の場合は、窓台下より15~20㎝長く

「腰窓」の場合は、ドレープカーテンもレースカーテンも、レールを窓枠の上の正面付けにして、窓台下より15~20㎝長い丈にすると、窓まわりのバランスがよく見えて、遮熱性も高まります。

◯カーテンの丈を窓台下15〜20㎝の長さにすると見た目に美しく機能的

繰り返しになりますが、夏の強い陽射しも、真冬の窓からの冷気も、ウィンドウトリートメントだけでは効果的に防ぐことができません。高性能窓と組み合わせ、正しい寸法で取り付けることで、一年を通してより省エネで快適な室内環境を目指したいところです。