丸くて光沢感のある葉が魅力的な「フィカス・ベンガレンシス」は、樹液からゴムの資源が採取できる通称「ゴムの木」の一種。原産地のインド・ベンガル地方では「希望を叶える木」として神聖視されていて、日本国内でも人気の高い観葉植物です。
リプランスタッフのクラモトさんはそんな「フィカス・ベンガレンシス」を4年ほど前に購入。生育状況にメガネを光らせていたクラモトさんでしたが、最近「葉が丸まってきているけど、何かあるのではないか…」と、不安を感じるように。
「水やりか、日光か、それとも愛情か?!」と、ネットを駆使して原因を突き止めようとするも、「何が正しいのか…」と頭を抱える日々を過ごしています。
そこで今回は「Flower Space Gravel 江別店」を訪問し、家の「フィカス・ベンガレンシス」の写真を持参したクラモトさんが同店スタッフの矢幡さんに上手な育て方、体調管理について話をうかがいました!
葉が丸くなっている原因は?
「フィカス・ベンガレンシス」の水やり方法
クラモト 1年ほど前に「フィカス・ベンガレンシス」の植え替えをしたのですが、最近葉が丸まってきてしまって。インターネットで調べると「日光不足や水不足からなる症状」とあったのですが。
矢幡さん 葉数が多くて見た目にとても美しいですが、確かに葉が丸まっていますね。
クラモト そうなんです。今までは表面の土がすっかり乾いてから水をあげていたのですが、4日に一度に変更しました。浴室に運んでたっぷり水を与えていますが、一向に改善されず…。
矢幡さん 大きな鉢なので浴室で水やりは正解ですね!水やりのタイミングは、表面の土が乾いたらあげるペースに戻してあげてください。植物は環境によって乾燥具合が変わるので、日数で区切るのではなく、直接土を触って湿り気を確認するほうが適しています。
触ってみて乾いていたら水やりのタイミング。鉢底から水があふれ出るくらいにたっぷりとあげてください。水やり後は、根腐れを起こさないように受け皿のお水をしっかりと切ってくださいね。
クラモト 水やりのタイミングは以前の方法が正解だったのですね…。
矢幡さん 写真を見る限り、確かに水分不足のようですね。葉水はどうしていますか?
クラモト 2週間に一度くらいの頻度で、霧吹きで葉水をしています。
矢幡さん 葉水は、季節を問わず毎日やってもいいくらいなんですよ。
クラモト ほう…!
矢幡さん 根から吸い上げた水は、葉から水蒸気として発散されてしまいます。いわゆる「蒸散」ですね。「フィカス・ベンガレンシス」は空気中の湿度を好む植物なので、こうした蒸散を防ぐためには日々の葉水が大切です。
また葉水はホコリや虫の防止にも効果的です。葉に溜まったホコリは光合成の邪魔にもなりますからね。なるべく粒子の細かいものが適しているので、ミストが出る霧吹きがおすすめです。
クラモト さっそく試してみます!(クラモトさんのメガネがキラリと光る)
肥料を与えるときは「肥料焼け」に注意!
クラモト 肥料を与えるタイミングも教えてもらえますか?
矢幡さん 肥料は「春から秋にかけた生育期」に与えるのが適しています。肥料にはそのまま土に置いて使う「固形タイプ」と、水で希釈して使う「液体タイプ」の2種類があり、液体タイプ(液肥)の方が即効性があります。肥料の間隔はあまり短くないほうがいいので、土への水やりと同じタイミングで与えると良いでしょう。
クラモト 間隔が短いとダメなんですね。
矢幡さん そうですね。あと注意していただきたいのは、「植物が弱っているときには、決して肥料を与えない」こと。弱っている状態だと肥料の強さに負けて、いわゆる「肥料焼け」を引き起こしてしまうことがあります。
クラモト 肥料焼け…?それはどのような症状ですか?
矢幡さん 肥料焼けとは、肥料の過剰摂取で水の吸い上げが追いつかなくなって、根がダメになってしまうことです。葉に異常が見られたときは、すでに根っこがダメージを受けている可能性が高いんです。
クラモト 初期症状を目視するのは難しいのですね…。
矢幡さん 異常が見られたら肥料を止めて、普通のお水に切り替えて様子を見てあげるといいでしょう。
「肥料」と「活力剤」の違い・使い分け方とは?
クラモト 肥料は「元気を与えるもの」と思っていましたが、逆にダメージを与えてしまうことがあるんですね……!?
矢幡さん よく混同されがちなのですが、肥料は「元気な植物に与えて発育を促してあげるもの」で、元気がない植物に肥料を与えるのは逆効果。元気のない植物に与えるのは、肥料ではなく「活力剤」です。
クラモト なんと!「肥料」と「活力剤」は同じものだと思っていました…!活力剤はどういったときに使用するのが適していますか?
矢幡さん 葉がしなびて元気がなくなっているときや、鉢に根が定着していない植え替え直後などですね。根が安定して生育期に入っているときに与えるのが「肥料」です。
活力剤が必要なのに、肥料を与えてしまうと、肥料の強さに植物が負けてしまいます。活力剤か肥料かで迷ったら、「活力剤」で一度様子を見てください。
クラモト 「活力剤」は植物にダメージを与えることがないということですね。勉強になります。ちなみにおすすめの土ってありますか?
矢幡さん 植物用に販売している土は大まかに「多肉植物用」、「園芸用」、「観葉植物用」の3つに分かれています。「フィカス・ベンガレンシス」は、最初は一般的に販売されている「観葉植物用」の土で問題ありません。多肉植物用の土は排水性が高いので避けてくださいね。
慣れてくると赤玉土や鹿沼土、パーライトなどを配合して土をつくる場合もありますが、特にこだわりがなければシンプルに観葉植物用の土で大丈夫です。
クラモト 余計なことはせず、観葉植物用の土で過ごします…!
熱帯地域出身の「フィカス・ベンガレンシス」は直射日光に強い?
クラモト 暖かくなってきたら、外に出して陽に当てているのですが問題ないでしょうか?
矢幡さん 光合成がしやすいのでいいと思いますよ。ただ、夜との寒暖差には気をつけてほしいです。北海道は春先でも昼と夜の寒暖差が激しいので、外気が10℃以下になる日は、外に出すのは避けてください。日中も直射日光を思い切り当てると、すぐに葉焼けしてしまう場合があるので要注意です。
クラモト 「フィカス・ベンガレンシス」は暑さに強いのかと思っていました。
矢幡さん 「フィカス・ベンガレンシス」は原産地が熱帯地域なので、本来は暑さに強い植物です。ただ、お店で購入された「フィカス・ベンガレンシス」は、どういった環境で育ったかによって性質が変わります。
クラモト わが家の「フィカス・ベンガレンシス」が温室育ちだったら、原産地に自生している「フィカス・ベンガレンシス」に比べて直射日光や暑さにそこまで強くない場合がある、ということですね。
矢幡さん そのとおりです!熱帯地域由来とはいえ、最終的にはその個体がどういった環境で育ったのかによって性質は変化します。なので、急に外に出しっぱなしにしてしまうのは避けてほしいです。
クラモト ほう…!植物って環境の変化に敏感なのですね。
矢幡さん はい、急激な環境変化は植物に大きなストレスを与えてしまいます。もちろん日照があった方が強い株になるので、外に出すのはまったく問題ありません。少しずつ、ゆっくりと慣らしてあげてください。
「フィカス・ベンガレンシス」を大きく育てるには
クラモト お店の「フィカス・ベンガレンシス」は幹が太くて立派ですよね。わが家もこのサイズに成長させたいともくろんでいるのですが、一体どうすればここまで立派に育つのでしょうか?
矢幡さん 大きくするには2つのパターンがあります。一つは一回り大きな鉢に植え替えて「鉢増し」をする方法。もう一つは、同じ鉢を維持しながら、「根っこを剪定」する方法です。
クラモト 根っこの剪定は緊張感がありますね……。ただ、鉢を大きくすることを繰り返すのも、家で育てるとなると現実的ではないような。
矢幡さん そうですよね。手順的には大きな鉢に移すだけの鉢増しの方が楽ではありますが、鉢の大きさにも限度がありますから(笑)。鉢増しする際は、鉢から出したタイミングで根をほぐしてあげてください。
クラモト そのタイミングで土も入れ替えた方がいいですか?
矢幡さん 時間が経った土はほとんど養分がなくなってしまっているので、新しい土に変えてあげることは重要です。根っこを剪定し、同じ鉢に戻す場合も土の入れ替えをしてあげてください。
クラモト 剪定すべき根の見極めや、剪定の目安を教えてもらえますか?
矢幡さん 剪定するのは「古い根っこ」です。茶に変色していたり黒ずんでいたりする根っこはすでにダメになっているので剪定してください。白い根は健康なのでそのまま残します。
土の中にスペースができる状態まで根を整理してあげると、鉢を変えなくても大丈夫です。植え替えや剪定は、いずれも「春から秋にかけた生育期」に行ってくださいね。
クラモト ありがとうございます!鉢に居住スペースを奪われることなく「フィカス・ベンガレンシス」を立派に育て上げられるよう、いろいろと試してみます!
取材協力/Flower Space Gravel https://gravel-4187.com
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