人類はその誕生の頃から身近な材料を手加工し、道具や日用品を生み出してきた。その最も代表的な材料が樹木だ。コルクの材料となるのはコルク樫の樹皮である。コルクは私たちの生活のさまざまな場所でなじみ深いが、その歴史は古く、古代ギリシャ時代にまでさかのぼる。それは樽や瓶の栓として利用され、そうした用途は現代にまで続いている。

コルク樫は地中海沿岸地域に自生するブナ科のコナラ属の樹木で、直径1.5m、高さ20m、その寿命は150〜250年にもなる。主な産地はスペイン、ポルトガルであるが、フランス、イタリア、北アフリカのモロッコ、チュニジア、アルジェリアでも産する。これらの地域は気候が温暖であり、乾燥地域でもある。天然林も存在するがスペインやポルトガルではプランテーションとして栽培されている。その森ではイベリコ豚が放牧され、コルク樫の実、ドングリを餌として育つ。ワイン、コルク栓、イベリコ豚の生ハム、それぞれが関わる産業を形成しているのだ。

コルク樫からコルクを採取するには樹齢20年を過ぎ、樹皮の厚さが5〜10㎝になってからだ。最初に採取したものはバージンコルクと呼ぶが、表面の凹凸が激しいため製品には向かず、その用途は限定される。最初の採取から約10年で樹皮は再生され、ワインの栓のほか、さまざまな製品に加工される。樹皮の採取は幹を傷付けることのないようすべて手作業で行う。

コルクは比重が0.1〜0.2gと極めて軽く、その上、柔軟性に富み、耐水性や断熱性、吸音性、絶縁性、吸湿性などほかに類を見ない優れた材料特性を有している。さらに軽量なため輸送コストを抑えられる点や加工のしやすさも見逃せない。

こうした素材としての優位性がコルクの利活用の領域を広くしている。最も多く使われているのがワインの栓であり、全消費量の約15%、金額ベースでは66%を占めている。2000〜2001年頃のミレニアム期には世界的なワインブームで栓が不足する事態となった。それをビジネスチャンスと見た中国は自国産のコルクを売り込んだが、品質の悪さから市場への影響は少なかった。一方、人工コルクも生産されていたが、やはり天然物を超えるのは難しいようだ。日本には在来種のアベマキという樹皮の厚い樹木があり、かつてはコルクの代用品として利用されていたが現在市場で見ることはない。

コルクの素晴らしさは先に述べたが、樹木としての二酸化炭素の吸収量はほかの樹木の3〜5倍とも言われる。このほか、一次使用後の端材や、使用後廃棄されるコルクも粉砕され、新たな製品に加工されている。

今回紹介するジャスパー・モリソンによるスツールやサイドテーブルのシリーズ群はそうした粉砕コルクを成形して生まれたものだ。ドイツのヴィトラ社が掲げるサスティナビリティの理念に沿って開発された製品だ。そうした理念や哲学を有しない企業はユーザーや市場から支持を得られることはなく、社会問題に無関心な企業は今後生き残れないだろう。

モデルバリエーション

自然素材ならではの風合いを活かしたCORK FAMILY(コルク ファミリー)は、サイドテーブルやスツールとしても使用できる5種類のモデルをそろえている

モデルA
モデルB
モデルC
モデルD
モデルE

CORK FAMILY(コルク ファミリー)は、イギリスを代表するデザイナー「Jasper Morrison(ジャスパー・モリソン)」によってデザインされた
CORK FAMILY(コルク ファミリー)は、イギリスを代表するデザイナー「Jasper Morrison(ジャスパー・モリソン)」によってデザインされた
リサイクル可能な天然素材であるコルクのみを凝縮して製造。素材の味わいをあえて残した風合いと、滑らかな手触り、軽量かつ高い耐久性が魅力
リサイクル可能な天然素材であるコルクのみを凝縮して製造。素材の味わいをあえて残した風合いと、滑らかな手触り、軽量かつ高い耐久性が魅力
角のない柔らかいコルク素材のため、小さな子どもがいる家庭でも安心して使える。また、オフィスでは、温かみのあるリラックスした空間を演出してくれる
角のない柔らかいコルク素材のため、小さな子どもがいる家庭でも安心。オフィスでは、温かみのあるリラックスした空間を演出してくれる

■CORK FAMILY
ブランド:Vitra(ヴィトラ)
サイズ:Φ31×H33㎝
素材:旋削仕上のソリッドコルク(表面未加工)
価格:各66,000円(税込)

<問い合わせ先>
MAARKET(マーケット)
https://maarket.jp/products/detail/501