2023年秋、北海道大学のキャンパス内に道産ワインの研究拠点として誕生した「ワイン教育研究センター」。建物と設備の改修にあたり、ピーエス(株)北海道支店が温熱環境の設備設計をサポートしました。
 
生まれ変わった学び舎を舞台に、11月には「豊かな食とワインの可能性」をテーマにしたPS Club 2023のセミナーを開催。建物の設備設計に携わった弘田七重さんと安孫子雅史さん、当日のコーディネーターを務めたソムリエ・エクセレンスの米野真理子さんにワインの豊かな味わいを育む熟成環境についてお話をうかがいました。


明治の西洋建築を再生した
道産ワインの研究拠点

開拓期の古きよき面影を残す緑豊かな北海道大学。
そのキャンパスに残された1901年建築の旧昆虫学及養蚕教室は、日本近代昆虫学の父、松村松年が初代教授として主宰したことでも知られています。

開拓期の面影を残す広大な札幌キャンパスに佇むワイン教育研究センター。西洋建築の意匠が施された建物は、2000年に国の登録有形文化財に指定されている

2023年9月、往時の歴史を物語る明治のモダンな建物がリノベーションされ、急成長を遂げている道産ワインの研究拠点となる「ワイン教育研究センター」に生まれ変わりました。建築当時の姿を極力残しながら、ブドウの栽培や醸造、マーケティングなどの講義やセミナーなどを行うホールのほか、道産ワインに関連するさまざまな実験や研究を行うラボも併設されています。

「縁あって、ピーエスが改修プロジェクトに参画することになり、放射暖房PS HRヒータを用いて建物内の温熱環境整備を行いました」と、改修プロジェクトに参加した安孫子さんは話します。国の登録有形文化財にも指定される建物の魅力を損なわずに、冬季でも窓際の寒さが気にならないようと、HRヒータは窓や壁の長さに合わせてサイズを合わせ、建物の一部に溶け込むように施工。「クラシックな建物の雰囲気を崩すことなく、今に心地よい温熱環境を整えられるのも、オーダーメイドならではの利点です」と、安孫子さんは胸を張ります。

意匠のポイントにもなっている連続窓の下には、放射暖房PS HRヒータが設置されている。現しの既存の梁が、古きよき時代を無言で物語っている。2024年春には、道産ワインが楽しめるカフェも開設される予定

放射と自然対流で実現する
ワインに最適な環境

放射と自然対流で室内環境を整えるピーエスの技術は、ワイン教育研究センターの裏手にある石造りの旧昆虫標本室のリノベーションにも生かされました。「インセクタ・マツムラーナ」と名付けられたその場所は、ワインの熟成庫。築100年の建物を生かしながら、断熱改修を行い、ワイナリーやレストラン、酒販店などにも採用されているPSカンティーナを用いたワインセラーを造作しました。

石造りのワイン熟成庫「インセクタ・マツムラーナ」は、1927年建築。大切な昆虫標本を火災から守るため、最新の防火技術を駆使して建てられたという。建物をぐるりと囲むように生える木々も、熟成庫内の自然な環境を保つために役立っている

「ワインの蔵では同じ温度と湿度を保ちながら、ゆっくりと空気が出入りし、自然に菌が漂うことでおいしさが熟成します。ピーエスが蓄えた知識と経験を生かせば、同じ環境づくりができると考え、30年ほど前から手がけ始めたのがPSカンティーナです」と、弘田さんは話します。

かつて昆虫標本室として活用されていた時代には、松村教授の説明をたくさんの学生がキャットウォークから眺め、聞いたという。その面影を残せるよう、熟成庫をウォーク下に納め、中央にゲストとの語らいが楽しめる大きなカウンターを設えた

風を感じない自然な
涼しさが育む豊かな味わい

イタリア語で地下の貯蔵空間を意味するPSカンティーナは、鉄製のラジエータ内に冷水を循環させ、放射と自然対流によって洞窟のような安定した環境をつくり出し、ワイン自体を冷やします。「フランスのシャトーの蔵に非常に近い環境で、ワインが“心地よく寝ている”状態を保てていると思います。過湿によるカビの心配や風、振動もありません。心地よい涼しさで満たされているので、庫内でゆったり作業ができるのも魅力ですね」。

熟成庫には最大1,800本のワインが貯蔵できる。空間にすっきり収まりながら、十分な容量を確保できたのも、設計の自由度が高いPSカンティーナならでは

そう語るソムリエ・エクセレンスの米野さんによると、ワイン生産地として急成長を遂げている北海道は愛好家も多く、レベルが高いといいます。「これからセラーをもう1台と考える方も増えるのではないでしょうか。PSカンティーナは、大型セラー2台とイニシャルコストがほぼ同じくらい。検討の余地はあると思います」と米野さん。プロのお墨付きを得たPSカンティーナを採用して、大切なコレクションをより豊かにおいしく育てる楽しみを味わってみてはいかがでしょう。

セミナーのコーディネーターを務めたソムリエ・エクセレンスの米野さん。竹下さんのプレゼンテーション後、熟成庫では米野さんがセレクトした10種類の道産ワインと竹下さんのチーズを味わう交流会も開催された

セミナーの様子を一部公開!

「豊かな食とワインの可能性」をテーマにした当日のセミナーでは、中標津町で酪農とチーズ生産を行う竹下牧場の主、竹下耕介さんがプレゼンターとして登壇し、牛たちとの日々の暮らしやこれからの夢を熱く語り、会場を沸かせました。

セミナーのプレゼンターを務めた竹下牧場の竹下耕介代表取締役。

開拓者魂を持ち続け、新しいことに挑戦し続ける竹下さんはこの夏、牧場内に1棟貸しのファームヴィラを開設しました。「自然との一体感」を大切に建築家、大杉 崇さんの設計で建てられた建物には、ピーエスの除湿型放射冷暖房PS HR-Cを採用。「エアコンの風で室温を適正に保つのは不自然な感じがして、この建物にふさわしくないと思いました。PS HR-Cは風がなく、まさに自然の心地よさそのまま。夏は木陰にいるようでした」と、竹下さんは講演の中で語っていました。

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(文/Replan編集部)

取材協力/ピーエス株式会社