リラックス効果のあるミントの香りや、ふっくらとした葉の可愛らしさが人気の「アロマティカス」。数あるインテリアグリーンの中でも人気の高い観葉植物です。
リプランスタッフのミカミさんも、可愛くて良い香りの「アロマティカス」に魅せられた一人。「アロマティカスが私の帰りをいつも待っていてくれるんです…!」と、今や観葉植物の枠を越えた大切な存在です。
そこで今回は、今年の4月にリニューアルオープンした「Flower Space Gravel 札幌本店」を訪問し、大切に育ててきた「アロマティカス」を特別に持参して、同店スタッフの信山優花さんに、上手な育て方や植え替え・挿し木の方法を教えていただきました!
「アロマティカス」ってどんな植物?
ミカミ 私は植物についてはまったくの初心者なんですが、「アロマティカス」を購入して約3年、分からないなりに一生懸命育ててきました。いつも良い香りがするのですが、これはそもそもどういったタイプの植物なのでしょうか?
信山さん 「アロマティカス」はいわば「多肉質のハーブ」。非常に珍しい植物です。通常の多肉植物ではなく、あくまでハーブなので、サラダにして食べられますし、料理や紅茶の香りづけにも利用できるんですよ。
アロマティカスは、虫が苦手とするミントに似た香りがするので、虫除けにも効果を発揮します。
ミカミ 確かに、窓際に吊るし始めたら、虫が全然入って来なくなりました!香りも楽しめるし、虫対策にもなるとは…。(ミカミさん、アロマティカスに深々とお辞儀)
「アロマティカス」の最適な置き場所は?
信山さん ご自宅ではどのような環境で育てていますか?
ミカミ 我が家は東西北にしか窓がありません。最初は東側に置いていたのですが、夏の陽射しが強過ぎたのか葉が変色しちゃったんです。その後、レースカーテンのある西向きの窓辺に移動したところ、少し持ち直したような気がするのですが…。
信山さん 本来は日照時間の長い「南向き」がベストですが、東西北の窓しかないのであれば、現状のままで問題ありません。自宅の中で最も適した場所を選択してあげることが大切です。
ミカミ ちなみに屋外で育てることはできますか?
信山さん 夏場は外で育てることもできますが、乾燥を好む植物なので、他の草花と同じように庭に植えてしまうと、湿り気が強過ぎて根が傷み、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。「屋外でも鉢の中で育てる」ことをおすすめします。
ただ、室内から急に屋外の直射日光を当ててしまうと、急激な環境変化にストレスを感じて順応できず、弱ってしまうことがあります。移動する場合は数日かけて少しずつ日光に慣らしてあげてくださいね。
ミカミ 植物にもストレスが…。私のアロマティカスはストレスも含めて、どんな具合でしょう…?
信山さん 新芽も綺麗に出ていますし、元気な状態ですよ!日光も足りていると思います。
育てるのに適した室温は15℃程度
ミカミ 冬場の室内はけっこう冷え込むこともありますが、室温はどれくらいを保つのが良いですか?
信山さん 私たちはお客様に、観葉植物全般について、室温は15℃以上を保つようにお伝えしています。冬季間はなるべく暖房を切らずに、暖かい場所に置いてあげてほしいです。
ミカミ 帰省や出張で長期間家を空けることがあるのですが、どうやって対策したら良いですか?今までは寒くないか心配で、新聞紙でふんわり包んで外出していたのですが…。
信山さん それは素晴らしいですね!蓋を閉じない状態で発泡スチロールや段ボールの中に入れてあげるのも保温効果があって良いですよ。
冬は「寒さ」ですが、夏に注意すべきなのが「湿度」です。多肉系の植物は夏場の暑い時期にはあまり生長しないので、土の中が蒸れないよう水やりの頻度を抑えたり、風通しの良い場所に置いたりするなどの配慮が必要です。
ミカミ 先日お盆休みに帰省をして帰宅したら、葉の色が黄色く変色していました。これは湿度が原因だったんですね。「寒さ」と「湿気」が苦手って、人と同じですね…!
土が乾いたら、たっぷり水やりを
ミカミ 土が乾いてきたら霧吹きで水やりをしているのですが、この方法は合っていますか?
信山さん 「土がしっかり乾いたら水やりをする」というのはバッチリです。ただ、霧吹きだと表面だけが湿って、土の中まで水が浸透しない場合があります。
ミカミ 根っこまで水が届いていないということですね…!
信山さん 多肉質の植物は葉に水を与える必要がないので、ジョウロやコップの方が水やりには適しています。受け皿に水が出るまでたっぷりあげてください。受け皿に溜まったお水はそのままにせず、処理してくださいね。
湿気が苦手なアロマティカス。
土は水はけが良い「多肉植物用の土」でOK
ミカミ 土はどういったものが適していますか?
信山さん 「アロマティカス」は乾燥が好きな植物なので、「水はけの良い土」が適しています。市販されている観葉植物用の土でも問題はないのですが、置き場所によっては乾きにくくて根腐れを起こしてしまうことがあるので、当店では「多肉植物用の土」をおすすめしています。
上級者の方は水分の有無で色が変わる「鹿沼土」や、観葉植物のオーソドックスと呼ばれる「赤沼土」を配合する方もいます。いずれも水はけが良いですし、特に「鹿沼土」は乾燥状態が色の変化で判別できるので使い勝手が良いですよ。
ミカミ 乾燥、大事ですね!
信山さん 多肉質の植物は自分自身で水分を多く蓄えているので、ジメジメと湿り気が続くと駄目になってしまうんです。
ミカミ 乾いているかどうかの確認はどうすれば良いのでしょう?
信山さん 土の渇き具合は、直接触って確認するのがベストです。表面がカラカラになっていて、さらにポットを持ち上げて軽さを感じたら、中まで乾いているということなので、水やりのタイミングですよ。
ミカミ 肥料は必要ですか?調子が悪そうだったら、ついついあげたくなってしまうのですが…。
信山さん 葉の色が悪くなっていたら肥料をあげても良いですが、基本的に肥料を好むタイプではないんです。多肉、サボテン系のほとんどは、肥料は不要です。
茎が伸びてきたら、仕立て直しの時期
ミカミ 最近、茎がひょろひょろと伸びてきているのですが、これはカットした方が良いのでしょうか?
信山さん そうですね。下葉が落ちているので、新芽に栄養を送るのに精一杯に見えます。
ミカミ (!)下葉に申し訳ないです。
信山さん 弱ってはいないので、安心してください(笑)。高さもバラつきが出てきているので、見た目の美しさを考えても、そろそろ仕立て直しのタイミングですね。徒長※した茎を切って挿し木をしてみましょう。
※とちょう:茎や枝が必要以上に間延びした状態のこと
多肉質の植物は下葉がなくなってしまうことが多いので、「切って、挿して、また切って」を繰り返します。そうやって増やしていくのを楽しむ植物でもあるんですよ。
ミカミ 仕立て直し…!整えることをそう表現するのですね。初めて聞きました…!
信山さん 現在使っている鉢も窮屈になってきていると思うので、植え替えをしつつ、切った方は別のポットに挿し木してあげましょう。
ミカミ なるほど。窮屈そうで申し訳ない気持ちになっていたところです…。どれくらいの大きさの鉢に植え替えをすれば良いですか?
信山さん 一回りくらい大きな鉢にしてあげるのが良いですね。アロマティカスは、2年に1回程度のタイミングで植え替えてあげてください。
ミカミ かれこれ3年間この状態だったので、かわいそうなことをしました…。ただ、植え替えで枯らしてしまったという話を身近に聞いて、不安で不安で…。
信山さん 植え替えで枯らしてしまう原因はいくつかあります。まず、「根っこをいじり過ぎてしまう」こと。根っこに触れられることは植物にとって非常にストレスなんです。さらに植え替えは環境が変わるということですから、ストレスが重なってしまうんですよね。
ミカミ 二重のストレスが…!植え替え時に根っこをほぐしてあげるのが良いと聞いたことがあるのですが、もしかしたら真逆の行動なのでしょうか?
信山さん 根っこに直接触れず、まわりの土をほぐしてあげるのが良いと思いますよ。
ミカミ なるほど。距離感が大切ですね。
信山さん 次に枯れる原因とされるのが、「大きすぎる鉢に植え替えをしてしまった場合」です。鉢が大きくなるということは、それだけ土の量が増えるということ。春や秋の生育期だと枯れない場合もありますが、真夏の半休眠期や冬の休眠期だと、根っこが生えていない状況で水持ちの良い土が一気に増えることで、根腐れを起こしやすいんです。
植え替えに適した時期は「春」がおすすめ
ミカミ 植え替えの時期も関係してくるんですね。
信山さん 「冬季の植え替え」も枯れる原因とされています。冬は休眠期なので新しい根っこが生えないんです。
ミカミ 植え替えに適している時期っていつ頃でしょう?
信山さん 春の気温が安定している頃、もしくは猛暑が過ぎ去った秋口などが、生育期に行うのがベストです。ただ、北海道は秋に入った途端、急激に気温が下がることがあるので、春が安全だと私は思います。
今年は暑い日が続いていて、9月に入っても気温が穏やかなので、このタイミングでも大丈夫ですよ。
ミカミ 植え替えは陽当たりの良い場所で行った方がいいのでしょうか?
信山さん 植え替え時はそこまで気にしなくても大丈夫。むしろ、「植え替え後に少し日陰で休ませてあげること」が大切です。
ミカミ そうだったんですね…!以前、パセリの植え替えをした時に陽当たりを気にして、公園まで運んで作業をしていました…。
信山さん 優しい…(笑)!ミカミさんはすごく植物のことを考えているので、アロマティカスも喜んでいると思いますよ。それでは実際に挿し木と植え替えをしてみましょうか。
ミカミ はい!緊張します…!
「アロマティカス」の上手な植え替え方法とは?
今回は信山さんの指導のもと、ミカミさんが実際に植え替えと挿し木に挑戦しました!
【用意する道具】
・多肉植物用の土
・鉢底石(軽石)
・スコップ
・手袋とレジャーシート(土汚れが気になる人)
・剪定するためのハサミ(専用のハサミじゃなくてもOK)
・新しい鉢(スリットが入っている水はけの良い鉢をセレクト)
・ネット(キッチンの排水溝ネットでも○)
・発根剤(必要な方)
・割り箸
①まずは徒長している枝を剪定します。
切った部分から脇芽が生えることをイメージして長さを決めます。土に挿すと自立する2㎝程度が目安です。切った茎は挿し木をする前に、発根剤につけてあげると根っこが出やすいので◎。長い茎を何等分にもしてすべて植える人もいるそうです。
②鉢底にネットを敷きます。
穴が隠れる程度の大きさでネットを敷きます。これは水やりで土が無駄に流出するのを防ぐためなので、排水溝用のネットでもOKです。
③鉢底石を入れます。
底が全体的に隠れる程度にまんべんなく入れます。挿し木をする方(右)は、根がないので鉢底石を多めに投入。
④元の鉢からアロマティカスを根っこごと取り出します。
このとき大事なのは、根っこにできるだけストレスを与えないこと。植物本体ではなく、鉢を引っ張るのがポイントです。土が固くなっている場合は、優しくほぐしてあげましょう。
⑤土を入れて、高さを確認しながら植物本体を置きます。
土入れのポイントは、水やりをしたときに土が浮いてこぼれない程度の「ウォータースペース」を確保すること。高さとともに、立ち姿が最もカッコいい「植物の正面」を決めてあげることも忘れずに。
⑥位置が決まったら、隙間を土で埋めていきます。
ある程度まで土を入れたら、土と鉢の間に割り箸などの棒をぐいぐい突き刺して、鉢を回転させながら、新旧の土の境界の余分な隙間を埋めていきます。ただし押し込め過ぎると土が固まって水はけが悪くなるので、土はふんわりした状態になるよう心がけます。
⑦挿し木用に新しい鉢に土を入れる
挿し木用の鉢に、植え替えをした鉢と同じ高さを目安に土を流し込みます。茎の長さは2㎝程度が目安。
⑧切り分けた茎を土に挿していきます。
挿し方は自由。バランスを見てお好みで次々に土に挿し込んでいきます。
⑨鉢底から水が出てくるまでたっぷりと水やりを。
植え替えと、挿し木をした鉢に水やり。植え替え直後は鉢底から水が出てくるまでたっぷりとあげます。挿し木の方はあまり勢いよく水をかけると倒れてしまうので、土全体に優しく水を回しかけましょう。
⑩休憩させる
風通しの良い日陰で休ませます。ミカミさん宅の場合は、しばらくの間、北向きの窓辺に移動して休息させるのが良いそうです。
取材協力/Flower Space Gravel http://gravel-4187.com
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