家づくりの後悔や失敗で多いのが、「コンセント」に関する不便さです。「数が足りない」、「位置が悪い」、「高さが良くない」…。工夫で何とかなるとはいえ、やはりストレスになります。そこで今回は「コンセント」の計画で知っておきたいアレコレを、インテリアコーディネーターの本間純子さんに教えていただきます。


テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、ドライヤー、スマホやタブレット端末の充電…。私たちは日常的に、数えるのに苦労するほどたくさんの家電を使って生活しています。

家電のほとんどはプラグをコンセントに接続して使いますし、ACアダプターや充電器はコンセントに差し込んだままのことも多々あります。家づくりにおけるコンセントの計画は、私たちの暮らしやすさに直結するとても大きな課題と言えるでしょう。

電気設備図の「コンセント」

まずは「コンセント記号」を覚えて
電気設備図をしっかり読み解く

家を建てるときに描かれるたくさんの設計図の中に「電気設備図」があります。「専門の記号だらけで、ちんぷんかんぷん。見るだけで頭痛がする…」と言われることが多いですが、せめてその中の「コンセント記号」はしっかり覚えて把握し、数や位置を確認しておきましょう。

ここで「ま、いっか」と、おざなりにしてしまうと、入居後に残念なため息の連続になる可能性が大です!脅しているわけではありませんよ。気持ちよく暮らすためのキーポイントです。がんばりましょう。

上の図は壁についているコンセントを、正面から見たものです。「差し込み口が2つ付いている」のがコンセントの基本仕様です。

下の図は、「壁付けコンセントの記号」です。 「◯」の中が黒く塗られているのは、壁に付く側を表しています。図面上で壁から少し離れて描かれていても、どの壁面にコンセントが付くのか判断できます。

2つの小さな●が横並びの記号と、縦線が2本描かれた記号がありますが、この2種類の記号は意味が同じで、どちらも正解です。

記号の右下の数字の「2」は差し込み口が2つあることを表しています。数字の記載が省略されている場合もありますので、打ち合わせのときに確認しておくと安心です。

コンセントの数・取り付け場所・高さについて

コンセントの数は、「2帖に1ヵ所」が目安

コンセントはたくさんあると便利で安心ですが、多ければその分費用がかさみ、使わないところが無駄になってしまいます。

居室のコンセントは「2帖に1ヵ所」を基本に検討します。
・6帖→3ヵ所
・8帖→4ヵ所
がおおよその目安です。

コンセントの位置は「三角形を描くように」配置

6帖の部屋にコンセントを3ヵ所付けるとします。1ヵ所目の取り付け位置は「出入り口横の照明のスイッチの下」。家具でふさがりにくく、掃除機用としても使いやすいです(最近はコードレス掃除機やお掃除ロボットが多いですが…)。

2ヵ所目と3ヵ所目のコンセントは、1つ目のコンセントの向かい側と側面の壁に、大きな三角形を描くように配置します。こうすると、家具を移動してもコンセントの位置であまり悩まずに済みます。

6帖の子ども部屋を想定したコンセント位置の図
「6帖の子ども部屋」を想定したコンセント位置の図。大きな三角形を描くイメージで配置するとさまざまなシーンに対応しやすい

コンセントの高さの測り方

コンセントの設置場所を決めるときは、「床からコンセントプレートの中央まで」をコンセントの高さとして測ります。コンセントプレートの上端ではないので、設計士や現場担当者の説明を聞く際には注意しましょう。

コンセントの高さの違いによる
メリット・デメリット

コンセントの高さは、基本的に自由に設定できます。建築会社ごとに、標準的な取り付け高さがまちまちなので、こだわりたい方は事前に確認しておきましょう。

●低めの設定の場合

コンセントの高さは、床から25~30㎝程度が標準。視線の高さにない分コンセントの存在が目立ちにくく、空間がすっきりとした印象になります。プラグを差し込んだままでも、コードの存在があまり気にならないのもメリットです。

デメリットは家具の置き方によっては、コンセントが隠れやすくなること。また、深くかがまないとプラグが差せないので、掃除機やドライヤーなど抜き差しする頻度が高い家電を使うには、若干不便を感じるかもしれません。

●高めの設定の場合

床から40~45㎝は、コンセントの位置としては少し高め。深くかがまなくてもコンセントの抜き差しがしやすく、背が低いものなら置いてもコンセントが隠れにくいのがメリットです。高さが妥当かどうかは、実際にプラグを抜き差ししてみると判断しやすいでしょう。

通常よりも高めに設置するデメリットは、コンセントが目立つこと。プラグを差し込んだままにするとケーブルの線も気になり、設置場所によっては部屋が少しゴチャ付いた印象になります。使う場所と物を具体的にイメージし、必要に応じて高さを決めるのが理想です。

コンセントが目立たないと、空間がすっきりとした印象に仕上がる
コンセントが目立たないと、空間がすっきりとした印象に仕上がる

高さ・位置決めでは「ACアダプター」付きを考慮

私たちの身の回りには、コードレス掃除機やお掃除ロボット、パソコンやゲーム機の充電器など「ACアダプター」付きの家電が多くあります。

ACアダプター付きのプラグを使うことが想定される場所のコンセントは、それに合わせて位置や高さを決めます。ACアダプターのサイズによっては、2口あるコンセントの片方しか使えないことがあるので、注意が必要です。

コンセント計画で失敗しないために
必要な事前準備とは?

コンセントの計画を失敗しないためには、次の2つの事前準備が欠かせません。家電の量を把握し、使い方を具体的にイメージすることが大切です。

① 「手持ちの家電」と、「新居で購入予定の家電」をリストアップ

今現在使っていて、新居でも使う予定の家電製品と、新居で新たに購入予定の家電製品をリストアップしましょう。書き出した家電を使ったり置いたりする部屋ごとに分けておくと、コンセントの必要数を割り出しやすいです。充電器・ACアダプターの大きさも同時に確認しておきます。

②使い方を具体的にイメージする

「トースターやコーヒーメーカーのプラグは、キッチンの家電収納カウンターの上のコンセントに差しっぱなし」「ドライヤーは、洗面室の棚の上で使うときだけプラグを差し込む」など、家電の普段の使い方を丁寧に見直すと、コンセントの取り付け高さと必要個数がより明確になり、後悔や失敗を防げます。

リビングからキッチンの方向を見る。上部が吹き抜けのため、圧迫感は感じられない

室内に内装下地の石膏ボードを張った後は、コンセントの位置や高さの変更が難しくなります。現場での電気配線の打ち合わせは、コンセントの位置・高さを確認できる最後の機会。それまでによく検討しておきましょう。

コンセント計画時のアドバイス3

1. 電化製品が多い部屋は、あらかじめコンセントを多めに設置

家電をリスト化したときに、使う電気製品が多い部屋は、あらかじめコンセントの増設を考えたほうが安心です。タコ足配線は安全面から、できる限り避けたいところ。窓やパネルヒーター、クローゼットの扉などで、特に個室はコンセントの設置場所が限定されがちですが、生活動線を考慮して配置しましょう。

2. フリーの差し込み口を確保しておく

「プラグの差し替え」は地味に面倒で、ストレスを感じやすい動きです。普段は空いているフリーの差し込み口を常に確保しておくとプチストレスが軽減され、掃除機などの家電製品を気持ちよく使えます。

3. 家具のレイアウトが決まっているのが理想的

「引っ越していざ家具を配置したら、ちょうど良い場所にコンセントがなくて延長コードで電源を取ることになった」という事態を避けるためにも、置く家具の種類やレイアウトはプランニング時にある程度決めておきたいところ。

家具レイアウトが決まっていれば、より具体的にその空間での動きをイメージでき、コンセントの位置も定まりやすくなります。

あると便利!なコンセントの設置場所

ダイニングテーブルの横

ダイニングテーブルの天板のすぐ横にコンセントがあると、ホットプレートや卓上IHコンロを使うのにとても便利。椅子の脚にコードが引っかかる、延長コードを準備するなどの煩わしさがなくなります。

洗面化粧台の上

電動シェーバーの充電や電動歯ブラシ、ドライヤーなど、洗面まわりで使う電化製品が多いお宅では、洗面台の上の壁面にコンセントを設置するのがおすすめ。家によっては、洗面台の幕板にコンセントを付けることもあります。

ただ、コンセントを差しっぱなしにして使う想定なら、コードのごちゃつきが目立たないよう、カウンター下に電化製品の居場所をつくるのも一案です。

玄関土間まわり

最近は、玄関先に土間がある家も増えています。玄関土間まわりにコンセントがあると、電動工具を使ったり、電動自転車の充電をしたりするのに重宝しますよ。


コンセントの数や配置や高さが暮らしにぴったりフィットすると、家での生活が想像以上にストレスフリーになります。自分たちの持ち物や普段の使い方を丁寧にシミュレーションして、後悔のないコンセント計画を実現してくださいね。