現行の省エネ基準住宅とQ1.0住宅レベルー1~4の断熱仕様

QPEXを使って、札幌、旭川、帯広でQ1.0住宅のレベルー1~4の断熱仕様を検討した結果が表1です。参考に現行の省エネ基準の仕様を、仕様基準を採用した場合の結果も示しています。

表1 小屋裏2階建てと平屋建ての断熱レベル別灯油消費量

こうすると、省エネ基準仕様では、Q1.0住宅評価が111%~114%となります。これは120㎡モデルプランの床面積あたりの暖房負荷に比べて、これだけ増えていることを示します。ちなみに、この住宅からロフトをなくした平均天井高差2.4mとした住宅も同様に暖房負荷を求めると、127%~130%になり、ロフトのある方の断熱効率が良いことが分かります。

Q1.0住宅レベルー1~4の断熱仕様は、やはり平屋ということで、120㎡モデル住宅よりは少し厳しくなるようですが、著しく差があるというほどではありません。ロフトのない平屋建ては、屋根断熱が天井断熱になりますが、屋根断熱のU値と同じ天井断熱厚さにしてありますから、2階の窓が減った分だけ若干UA値が小さくなりますが、ほぼ同じです。

少し驚いたのが、レベルー4が、120㎡モデルでは、省エネ基準等級7よりはUA値が少し大きくなるのですが、ここでは、ほぼ等級7の基準値と同じになっています。あと少し性能を上げると等級7になります。等級7を北海道で実現するのはかなり難しいと思っていましたが、そうでもない結果です。やはり、シンプルな構成のせいなのでしょう。

ロフトのある小屋裏2階建てと平屋建てでは
暖房負荷がほとんど変わらない

ロフトを持たせた小屋裏2階建てと、平屋建ての暖房負荷計算結果をグラフにしたのが図2です。

図2 小屋裏2階建てと平屋建ての断熱レベル別灯油消費量グラフ

この両者を比べると、当然、平屋建ての暖房負荷が小さくなります。屋根面積より天井面積が小さく、2階妻壁の外壁がなくなり、そこにあった開口部もなくなります。住宅の気積が小さくなった分、換気による損失も減るのですから当然です。

しかし、省エネ基準等級4ではその差ははっきり分かりますが、Q1.0住宅ではその差は少なくなっています。特にレベルー3~4ではほとんど同じです。日射量の大きい帯広では特に差が少なくなります。これは、住宅全体で逃げる熱が小さくなるにつれて、日射や内部取得熱の割合が大幅に増えて、暖房負荷があまり変わらなくなる結果だと思われます。

この結果を、別な言い方をすれば、平屋建てに比べて、ロフトをつくって住宅の床面積も増え、熱損失も増え、暖房費がかかるはずなのに、Q1.0住宅で、特にレベルー3ぐらいの高い性能の住宅を建てれば、暖房費はほとんど増えなくて済むということを示しています。特に今回の設計では、工事費の増分も極力抑えられていますから、これは結局お得になるということではないでしょうか。 

平屋建ては不利という論調は撤回

私は、これまでこの連載の第4回「シンプルな家~平屋」で、2階建てに比べて、平屋の家は外表面積がどのように増えるかを指摘し、第18回「Q1.0住宅を設計する上での思わぬ落とし穴」では、コートハウスやL型住宅のように変形した外表面積の大きくなる設計では、大幅に暖房負荷が増えるので注意が必要と書いてきました。

しかし、今回の設計のようなシンプルな形状にまとめ上げると、その不利はそれほど大きくなく、そして、ロフトをつくって多少大きくなっても暖房費はあまり変わらないという発見をしました。

平屋建てでコンパクトな家をつくると余裕がなく、やがては家の中が不要なものであふれてきます。ロフトを物置にしておくと、居住空間をきれいに保つことができます。高齢になって孫が遊びに来ても泊めるところができます。子ども部屋はロフトに構え、やがて子どもたちは家を出て行きます。こうしたことを大きな平屋で実現するのはとてもお金がかかります。ロフトをつくり、全体をシンプルでコンパクトな形状に設計していくことは、大きなメリットがありそうです。