超高性能開口部
建材の中で、最近もっとも進歩が目覚ましいのは、なんといっても開口部でしょう。日本の窓はアルミサッシ+1枚ガラスが圧倒的に主流ですが、あいにく断熱性は無いのと同じ。冬場にビッシリ結露する日本の窓サッシは世界の恥・・・です。かたやドイツなどでは、高性能な開口部がリーズナブルに入手できるようになり、一見すると日本の家かと思うような大開口が普及しつつあります(図3)。
ごく最近になってメーカーが心を入れ替えたのか、熱貫流率(Uw値)が1を切るような世界水準に達した窓が概ね出揃いました。断熱性能という意味ではメドがついてきたという感じです。だけど開口部には、眺望・自然光利用・日射熱取得・通風・遮音など、多岐にわたる性能が求められています。
熱の収支だけを考えても、単に断熱性能だけでなく日射熱の制御も重要となります。日射熱取得率は、イータ値(η値)で表されていました。日本では夏の日射遮蔽を重視して、このイータ値が小さいガラスがよく使われますが、これでは冬の日射取得も防いでしまいます。夏は別に日射制御を行うことも含め、夏と冬それぞれにベストな開口部となるには、まだ多くの課題が残っています。
なんといっても、窓は建築の一番重要な「顔」。国内だけでなく国外の技術革新にも注目していきたいと思います(図4)。
超快適
家族が幸せに暮らしていくには、快適な温熱環境は不可欠です。しかし、熱的に人が「快適」ということはどういうことでしょうか。大事なことは、「快適」と「快感」は違う、ということです。
寒い日にストーブにあたって「暖かい」と感じたり、暑い日にクーラーの効いた喫茶店に入って「涼しい」と感じるのはあくまで「快感」です。筆者はギャンブルをしませんが、聞けばギャンブルの最高の「快感」は、破産寸前の地獄の際から起死回生の大当たりで大逆転、だそうです。つまり「快感」とは環境の変化に伴って生じるものであり、長く持続するものではありません。先のストーブやクーラーがもたらす「快感」も時間がたつと失われ、やがて暑すぎ・寒すぎだと徐々に不快になってしまうのと同じです。
快適な温熱環境では、暑さ寒さを感じることがありません。刺激的ではありませんが、飽きることもないのです。ゆったりとリラックスができ、勉強や趣味をしたければ集中できる。自分が過ごしたいように過ごせる、そうした舞台をつくってくれるということです。
大事なことは、夏だろうと冬だろうと、人間は体から熱を捨てないといけないということです。恒温動物である人間は、ただ生きているだけで内部では代謝熱(メタボ熱)が発生しています。この熱を捨てられなければ、オーバーヒートで体温が高くなりすぎ、あっさり死んでしまいます。快適な温熱環境とは、このメタボ熱がストレスなくちょうどよく出ていってくれる環境に他なりません(図5)。
人間が外界に熱を放出する手段としては、先の「伝導」「対流」「放射」と、後述する汗が乾くことによる「蒸散」の計4つのルートがあります。体の各部位からどのように熱が抜けるのかは、周辺の空気や放射温度がどうなっているかが大きく影響します。また長居ができる環境では、時間的な安定性も重要になってきます。
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