7月下旬。やっと北海道も少し夏らしくなってきた頃に、ギャラリー門馬で開催された「RIPOSO. かろやかな洋服」へ。デザインから縫製までを一人で行う藤井祐人氏の洋服ブランド「RIPOSO.」の展示と販売を兼ねた催しで、展示されている洋服はすべて試着したり買うことができる。自社の店舗は持たず、ショップに卸すこともしていないという。
洋服の売り方としてはすこし変わっているように思えるが、「画家の人がギャラリーで絵を売るのと同じです。展示して見てもらって、気に入ってもらえたら買ってもらうという形態は」という言葉を聞くと、不思議と納得してしまう。
展示のレイアウトは「衣住ごと」として共に活動している夫人の藤井亜矢氏が手がけている。ギャラリー内に家具・インテリアデザイナーである彼女がつくり出す空間と、展示された洋服の静かな佇まいもあいまって、一枚一枚じっくりと絵を見るような気持ちで眺めることができる。
同時に、芸術作品と違うのは、買った人が「身に付ける」ということ。だいたいの服をメンズの細身のMサイズでつくることで、その服を着られる人の幅を広げていたり、袖の形などにこだわり着心地を重視しており、そこはやはり芸術作品ではなく製品なのだと感じられる。
一番特徴的なのは袖の形。「スプリットラグラン」という袖の付き方で、前側がセットインスリーブ(普通袖)、後ろ側がラグランスリーブになっている。「ラグランスリーブは腕の可動域が大きくて楽に着られる反面、ラフなイメージになってしまうのですが、スプリットラグランにすると前から見た印象はすこしきちんとしていて、でも腕が動かしやすくてリラックスできる、という利点があるんです」と、デザインを重視しながらも洋服として求めたい機能を成立させることへのこだわりがうかがえる。
拠点は札幌だが全国で同様の展示会を行っているそうで、「お店を持つことを考えていないわけではないのですが、洋服をつくる時間が少なくなってしまいそうだし、今は日本のいろんなところにこうやって展示で出ていくことで、知ってもらったり新しい出会いがあることのほうが大事な気がして」と特に気負いなく話す様子も、手がける洋服の軽やかさしなやかさに通ずるものがあるように感じる。
洋服はすべてリネンやコットンなどの自然素材でつくられており、手にとってみるとすごく軽く、しなやかなものばかり。休日にリラックスして身に付けることを想定した、自然体に寄り添う素材とデザインで、性別・年齢問わず幅広い層に愛されている。
RIPOSO(リポーゾ)とはイタリア語で「休息」を意味することば。形も素材も、そして、知って買う行為もリラックスできる、RIPOSO.はそんな洋服だった。
◎RIPOSO.
http://izumi-goto.com/riposo/
◎衣住ごと
http://izumi-goto.com/