二世帯住宅とは、親世帯と子世帯が一緒に暮らす家。その間取りは、
- 同居型(部分共有)
- 上下分離型
- 分棟型
の3タイプに大別されますが、土地の広さや予算、お互いの距離感や暮らし方に対する考え方などでふさわしい間取りは異なります。今回は、各タイプの間取りの特徴やメリット・デメリットを、間取りの実例とともに紹介します。
タイプ1:同居型二世帯住宅
「同居型二世帯住宅」とは?
「同居型(部分共有)」は、LDKや水まわりが親世帯・子世帯の共用で、各個室をそれぞれの夫婦や家族の居場所とする間取りの二世帯住宅です。
1階に共有スペースと親世帯の居場所、2階に子世帯の居場所をつくることが多く、広さにゆとりがある家では、2階に子世帯専用のセカンドリビングや洗面台を設ける例もよく見られます。
「同居型二世帯住宅」のメリット・デメリット
「同居型(部分共有)」の大きなメリットは「コスト」。キッチンや水まわりなど、エネルギー消費が多い設備を共有するため、イニシャルコストもランニングコストも抑えられます。
また祖父母という世代の異なる大人と一緒にいる時間が増えるのは、お子さんが育つ環境として好影響があるかもしれません。
一方でデメリットとして考えられるのは、共有スペースが多いこと。生活リズムや整理整頓の仕方など、違いが気になるとストレスになってしまうので、ご家族の関係性が「同居型(部分共有)」の向き不向きに大きく影響します。プランニングでは、家族みんながストレスなく使いやすい間取りプランにすることが重要です。
「同居型二世帯住宅」の間取り実例
【約54坪・2階建て】築49年の実家を、二世帯住宅へ快適リノベーション
宮城県白石市のSさんは、築49年の実家をお母さんとSさんご夫妻、お子さんの4人で暮らすための二世帯住宅にリノベーションしました。
断熱や耐震などの性能面のアップデートをしっかりと行うとともに、間取りも暮らしやすく変更。1階には共用のLDKと水まわりに、お母さんの居間と寝室、2階には子世帯のセカンドリビングと洗面台、トイレ、寝室と子ども室を設けました。
古かった実家が、安全・快適で、それぞれのプライバシーを保つこともできる、家族みんなが暮らしやすい二世帯住宅へと 生まれ変わりました。
▼Sさん宅の詳細は、こちらの記事をご覧ください
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タイプ2:上下分離型二世帯住宅
「上下分離型二世帯住宅」とは?
「上下分離型」は、1つの建物を上階と下階で分け、それぞれに住まいの機能をすべて備えて各世帯が独立して暮らせるようにつくられた二世帯住宅です。
下階には親世帯が、上階には子世帯が住むといった使い方が一般的です。上下完全分離の場合は玄関を含め、すべてを各世帯用につくりますが、間取りによっては玄関だけ共有で、中に入ってから上下に分かれるパターンもあります。
「上下分離型二世帯住宅」のメリット・デメリット
「上下分離型」のメリットは、家族間のプライバシーを確保しつつ、一つの建物内で近くに住めること。祖父母とお孫さんとの行き来も気軽にできます。また、別の場所に家をもう一軒建てるよりは土地代がかかりませんし、駐車場や庭を共有することで、費用やスペースの効率化が図れます。
税金面でのメリットもあります。各世帯に玄関やキッチン、トイレがあって独立して生活できる、各世帯を結ぶ通路の間に鍵付きの扉があるなど、構造上や利用上の独立性についての要件を満たすと、不動産取得税や固定資産税などについて2戸分の軽減措置が受けられることも。
また住宅ローン減税や、相続税の面でもメリットが出るケースがあります。詳しくは、お住まいの各自治体窓口にご確認ください。
一方で「上下分離型」には費用面でのデメリットが考えられます。一般的に同居型(部分共有)よりも広い敷地を必要とします。すべての設備が2軒分必要になるので、建築費も光熱費も、同居型(部分共有)より割高に。
また階段や水まわりの位置、音への配慮など、構造やプラン上の制約が出て、建築費やメンテナンス費の負担が増えることがありますし、場合によっては、光熱費の支払いについても負担割合などをあらかじめ話し合っておくことも大切になります。
「上下分離型二世帯住宅」の間取り実例
【約56坪・2階建て】それぞれの時間を楽しむ二世帯住宅
北海道富良野市で農業を営むSさんは、結婚を機に築45年の実家を、上下完全分離型の二世帯住宅にリノベーションしました。
既存建物は、家族の歴史が刻まれた北海道ならではの異形屋根の家。増築して壁面にポリカーボネートを用いた半外空間をつくり、その中に2階の子世帯の玄関へ続く階段を取り込むことで、上下階を緩やかにつないでいます。
1階はコンパクトな仏間も備えたご両親の生活空間。2階は4つあった個室を子世帯のLDKや水まわり、プレイルーム、収納などに割り振って新たな暮らしの場をつくりました。
お互いにそれぞれのペースで暮らしを楽しめ、気配を感じられる安心感もある。そんな快適な距離感を叶えた広さ約56坪の二世帯住宅です。
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農業を営む家族のための、北海道的二世帯住宅
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実例に学ぶ。「上下完全分離型」二世帯住宅の間取りと家づくりの工夫
タイプ3:分棟型二世帯住宅
分棟型二世帯住宅とは?
「分棟型」は、一つの敷地内に家を2棟建てるようなつくりの二世帯住宅です。敷地条件やご家族の考え方によって、家同士の間に中庭やテラスを設けて、なんとなくつながりが感じられるようにすることもあれば、できるだけお互いの動きがわからないように工夫するケースもあります。
「分棟型二世帯住宅」のメリット・デメリット
玄関を含め、すべてが別々の「分棟型」の最大のメリットは、上下分離型よりもさらに独立性が高く、家族間のプライバシーが守られやすいこと。
建物が個々に独立しているので、音や匂いなどもさほど気にせずに済みます。光熱費やメンテンナンス費も、各家庭で自分たちが使った分を負担すればよく、お金の面で明快です(共有部は話し合いが必要)。
また親世帯・子世帯が完全に独立していることで、将来、片方の建物が空いたときに賃貸物件にしやすいというメリットもあります。
一方で、分棟型二世帯住宅を建てるには、十分な資金力と土地の広さが必要です。暮らしやすさを考えると土地の形状にも制約があります。また、建物間の通路や共有の庭の管理などについて、家族間の話し合いや役割分担が必要になるでしょう。
税制面のメリット・デメリットは、1つの建物に2世帯が暮らす「上下分離型」とは異なることも。
例えば、建て方によっては、固定資産税や住宅取得税がそれぞれの建物に対して課される可能性があります。設計方法や面積によって適用される条件が異なりますので、事前に自治体窓口などで確認しましょう。
「分棟型二世帯住宅」の間取り実例
【約75坪・平屋】回廊のような廊下でつながる、絶妙な距離感の二世帯住宅
建築業を営むIさんの事務所と自宅、娘さん家族の自宅。それぞれが玄関を有する3つの建物が回廊のような廊下でつながる平屋の分棟型二世帯住宅です。
親世帯は1LDK、子世帯は2LDKと、住まいはそれぞれの家族に合わせたサイズ感。屋内は扉一枚隔てて廊下でつながっていますが、建物の配置やレンガフェンスなど、お互いの視線が交わりにくい設計で、ストレスを感じることなく過ごせます。
4歳と2歳のお子さんを育てながら共働きをしている娘さん夫妻にとって、すぐ隣に両親がいるのは心強いもの。新居での生活が始まってからは、二世帯で食事をともにするのがご夫妻の日課になりました。
それぞれの暮らしを守りながら、一緒に過ごす時間も大切に。分棟型二世帯住宅での暮らしが、家族の笑顔を育んでいます。
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お隣さんのような感覚で一緒に暮らす。「分棟型二世帯住宅」の実例集
二世帯住宅は、どのようなかたちを取るにしても、親世帯・子世帯の関係性やお互いに良しとする距離感がとても重要です。
家づくりの際には、お互いがイメージする暮らし方から建築費・光熱費・住宅ローンや税金といったお金の負担まで、事前にしっかり話し合って、丁寧に準備を進めてくださいね。
(文/Replan編集部)
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