コロナ後の経済回復と世界的なインフレ、ロシアのウクライナ侵攻、円安などを原因として資源価格が上昇し、私たちの暮らしを支える電気、石油、ガスなどのエネルギー価格も上昇しています。

資源価格と円安は今は一段落していますが(20233月現在)、当面はエネルギー価格は上がり続け、家計の負担が増えることが想定されます。

そこで注目が高まっているのが「省エネ住宅」です。今回は、CFP(サーティファイド ファイナンシャルプランナー)の有田 宏さんに「省エネ住宅」にすることで受けられる資金面の優遇措置について、いくつかご紹介いただきます。


地球温暖化対策として
国が推奨する「省エネ住宅」

「省エネ住宅」は文字どおり、「省エネルギー性能の高い住宅」のことで、地球温暖化対策として国も推進に力を入れています。断熱・気密性能が高いため、一年を通して安定した室内環境を保つことができます。また、高効率な空調や給湯設備や省エネ型の照明器具などの使用により、エネルギー消費量が少なくて済み、光熱費の削減につながりやすい住宅です。

「省エネ住宅」の建築による
税額負担軽減や補助金制度の活用

家づくりでは、一定の基準を満たした「省エネ住宅」にすることで、資金面で優遇措置が適用されるケースがあります。

■住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

新築住宅の住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)では、長期優良住宅または低炭素住宅に認定された住宅の建築を対象に、借入金残高の上限が3,000万円から最高5,000万円に、中古住宅では、2,000万円から最高3,000万円に増額されます。既存住宅の省エネ改修工事の場合でも、住宅ローン控除が上限2,000万円まで使えます。新築でローンを使わない場合も、認定住宅等新築等特別税額控除として、初年度のみ65万円まで税額を控除できます。

■贈与の特例

直系尊属からの住宅取得資金の贈与の特例では、一定の省エネ基準に達していれば、贈与税の非課税限度額が500万円から1,000万円に増額されます。

photo/写真AC

■フラット35S

住宅ローンを住宅金融支援機構の「フラット35S」で組む場合、20234月からは①断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4、②建築物エネルギー消費性能基準、これらのいずれかを満たす必要が出てきます。つまり「フラット35S」を利用するには、一定以上の省エネ住宅の計画が必須になります。金融機関によっては、省エネ住宅に対し金利の優遇措置を設けているケースもあります。

■国や自治体の補助金制度

2023年度は、子育て世代の家づくりを支援する「こどもエコすまい支援事業」、既存住宅の窓の断熱化を支援する「先進的窓リノベ事業」、高効率給湯器の導入を促す「給湯省エネ事業」といった補助金事業も発表されています。また独自に住宅の省エネ化に関わる補助金制度を設けている自治体もあります。

高性能化することで工事費や設備費などは増えるので、一概にお得とは言い切れませんが、長期的に見れば、光熱費の削減による経済的なメリットやCO₂排出量削減への貢献につながります。家づくりの計画に合わせて情報収集をし、設計段階から補助制度や優遇措置の利用を見据えることで、少しでも家計の負担と日々のエネルギー消費を減らしたいところです。