木製サッシは外付けにすると暖房負荷が削減される
図2・3で、木製サッシがPVCサッシとほとんど変わらない結果であることには、少し驚きます。枠が木材で断熱性も高く、高級な憧れのサッシですが、PVCと変わらないのは、枠の幅が大きく、ガラス率が小さくなるため、日射取得が大幅に減ることが理由です。これを改善することが、木製サッシでは割合簡単にできます。それは、サッシを柱に外付けにするのです。
昔、北海道のサッシは外付けでした。それは窓を2重窓にするために、アルミサッシを外付けにして、柱の部分には木製の内窓を設置するためでした。その後、ペアガラスのPVCサッシになって、内窓が不要になり、現在の半外付け納まりが普及しました。外壁サイディングとサッシの取り合い部はコーキングで防水する納まりです。それに対して、現在の木製サッシは、柱の内法に付ける内付けが標準です。木製サッシはヨーロッパで古くから普及していますが、組積造の住宅が多いヨーロッパでは、壁の内法に付けることしかできなかったのです。
この木製サッシは、Q1.0住宅のように、壁に負荷断熱をして200㎜以上の厚さの外壁では、図4のように取り付けることが可能です。
柱に対しては外付けですが、壁全体の厚みに対しては内付けになっています。サッシの四周の側面も断熱材と木材に覆われて、熱損失的には柱に内付けするのと変わりません。こうすると、室内からは窓の大きさは変わりませんが、ガラスの面積が大きくなることが分かります。QPEXにはサッシ寸法は従来の内付けのときの寸法を入力して、ガラスの面積を計算してガラス率だけ変更します。
このようにして計算した結果が、図2・3の木製サッシ外付けのグラフです。こうすることによって、高性能なPVCサッシとほぼ同じような結果が得られました。PVCサッシも同じような取り付け方ができれば、さらに効果が大きくなることも示しています。
15年前の設計実例
~木製輸入窓の外付けで日射取得の増大を図った
写真1は、2004年に八ヶ岳の麓の別荘地に実験住宅として私が設計した住宅です。
リビングの窓を大きくとり、トップライトもその上に4ヵ所設置して、日射を大きく取り込む設計です。このときはまだ外付けはしていません。外観からもサッシの間に柱が見えます。
それから3年後に、留萌の新住協会員の吉田建設がこのプランを気に入って、同じ設計で住宅を建設しました。写真2がその住宅です。
このとき私は外付け納まりを提案し、試験的に施工してみました。外観からはサッシの枠しかなく、柱は見えません。室内は、逆に柱だけが見えて、縦のサッシ枠は見えません。FIX窓を大きくとり、その下にすべり出し窓を通風用に設け、全体としてのガラス率が最大になるように設計しました。
当時は現在のような高性能ガラスはなかったので、日射侵入率を上げるため、LowーE膜のないトリプルガラスを採用しました。今のArLowー16㎜ペアより性能は低いものです。トップライトのベルックス製ウィンドウにも内窓を付けて3層ガラスとしています。
現在のQ1.0住宅に木製サッシを採用するときは、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
おわりに
北海道は外気温が低く、窓の熱損失が大きいため、こうした結果になりました。札幌ではそれほど効果はないことが分かりましたが、サッシのフレームの断熱性能を上げて、新型ガラスを導入できれば、かなりの効果があることも分かりました。この方向は、ヨーロッパでパッシブハウス協会が推進している方向とまったく同じです。日本のサッシ・ガラスもこうした方向での開発を進めていくことを望みたいと思います。