電気代をはじめとする燃料費の高騰や、家での過ごし方の変化などから、今注目の「薪ストーブ」。たくさんの魅力がある一方で、札幌やその周辺都市での利用には、注意や工夫が必要です。苦情などのトラブルを避け、安心で快適な薪ストーブのある暮らしの実例を、知っておきたい基本情報とともに紹介します。
なぜ人は薪ストーブに惹かれるのか。その5つの魅力とは?
薪ストーブになぜ人は惹かれるのか。それには、主に5つの魅力が考えられます。
1. 心を豊かにして、リラックスさせてくれる
薪の爆ぜる心地よい音、変幻自在に揺らぎ続ける炎…。キャンプで楽しむ焚き火があるような日常、それ自体が「薪ストーブのある暮らし」の最大の魅力と言っても過言ではありません。
家族が自然と火のまわりに集まって夜のひとときを過ごしたり、夫婦で晩酌しながら炎を眺めるのが日課だったりと家のくつろぎのひとときに欠かせないという薪ストーブユーザーの声も数多く聞かれます。薪ストーブは、心を豊かにしてリラックスさせてくれるアイテムです。
2. 質の良い暖かさ
薪ストーブは太陽の熱に近い輻射熱で室内を暖めます。遠赤外線効果で体の芯まで暖かく、かつ、その暖かさが持続するのも、ほかの暖房機器と異なる大きな特徴。リプランの取材先で「補助暖房として薪ストーブを入れたのに、あまりの気持ちよさに主暖房として使うようになった」というお宅が多いことが、暖かさの質の良さを現しています。
3. 調理にも使えて、暮らしの楽しみが広がる
他の暖房にはない魅力が「料理」に使えることです。煮込み料理のほか、ビザやお肉を焼いたり、焼き芋をしたりと、家族で手軽に美味しい料理が楽しめます。
オーブン機能付きの薪ストーブで、毎朝パンを焼くというご家庭も。薪ストーブは家での「食」の楽しみも広げてくれます。
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4. 停電時のライフラインに
2018年の北海道胆振東部地震では、札幌はブラックアウトに見舞われました。あのような停電がもし冬に起こったとしても、薪ストーブがあれば暖房の心配をしなくて済み、調理もできます。
炎の明るさは、あたりが真っ暗で不安な気持ちをほっと安らげてくれるでしょう。実際、薪ストーブユーザーのお客様からは「ライフラインとしても安心で、薪ストーブを設置しておいてよかった」という声が多く聞かれます。
5. 木質バイオマス燃料でCO2削減に貢献
地球温暖化対策として、今は化石燃料への依存を減らすためのさまざまな取り組みが行われていて、住まいで使うエネルギーの選択も、家づくりでは大切な検討事項です。
その点、薪ストーブで使う「薪」は、温室効果ガスの削減につながる木質バイオマス燃料として注目されています。薪ストーブの使用は、北海道の森林資源の有効活用につながるという側面もあります。
Replanウェブマガジンの「薪ストーブのある暮らし」コンテンツでは、薪ストーブの魅力をはじめ、導入に役立つたくさんの情報をお届けしています。ぜひご一読ください!
札幌での薪ストーブ設置で注意すべきことは?
薪ストーブはたくさんの魅力がある一方で、家が密集する地域も多い札幌での設置では、家づくりの前に注意しておきたいこともいくつかあります。家を建ててから後悔しないために、しっかりと事前準備しておくことが重要です。
苦情の原因になる煙の臭いやすすを出さない
薪ストーブの導入で注意したいのが「煙」や「すす」によるご近所トラブル。冬の風向きで煙がなびく方向にマンションなどの高い建物がない土地を選んだり、隣家との距離を空けるなど、建築会社やストーブ専門店の担当者さんと立地条件や家の配置をしっかり検討することが大切です。
本来、十分に乾燥した薪を正しい方法で焚いていれば、臭い煙や灰が流れ出ることはほとんどありません。薪の乾燥が不十分だと、燃やした時に水分が発生して、湿度が上がらずにすすなどの不純物が発生する大きな原因にも。
建築会社やストーブ専門店と相談しながら適切な立地条件や家の配置を検討すること、正しい操作方法を心がけることで、ご近所トラブルの芽を摘みましょう。
設計時に薪のストック場所を確保する
薪ストーブ生活は、外から薪を日常的に運び込む必要があるので、少なくとも1シーズン分の薪をストックできる「薪棚」を設ける必要があります。薪ストーブを使う季節は主に冬。寒さが厳しい真冬ほど、中と外を行き来する機会が増えるので、薪棚の設置場所も重要です。
特に、雪の多い地域では、薪を取りに行くたびに雪かきが必要な場所に薪棚があるととても不便。例えば、カーポートなど屋根のある建物の一角など、あらかじめ雪かきをしている日常生活の動線上に配置すると、余計な手間もかかりません。薪棚と薪ストーブのある場所とのスムーズな動線を設計することは、暮らしやすさに直結します。
また、自分たちで薪づくりを行う場合は、「薪割り場」のスペースも必要です。薪割り場と薪棚の位置関係が遠いと負担が大きくなってしまうので、事前にしっかり検討した上でそれぞれ配置計画を立てましょう。
前面道路が薪の搬入に十分な道幅か確認する
薪の調達方法は家ごとにさまざまです。軽トラックや自家用車で運び込む家もあれば、業者に依頼して4tトラックで配達してもらう家もあると思いますが、いずれの場合も薪の搬入路の確保が大切です。
理想はトラックでも通行しやすい幅の広い道路に面した立地であること。薪棚の近くまでトラックを乗り入れられるレイアウトだと、さらに良し。大量の薪を積み下ろしたり、運ぶのはかなりの労力が必要なので、薪の搬入路はかなり重要なポイントです。
車から薪棚までの距離はなるべく短く設定できるよう、家の配置をプランニング時にしっかり考えると、後々の苦労も軽減します。
まずは、札幌市の薪ストーブ専門店で実物を見て話を聞こう!
薪ストーブのプロフェッショナルに直接話を聞くことが、理想のストーブとの出会いの近道に。札幌市内でも信頼の厚い薪ストーブ専門店を紹介します。
【北海道リンクアップ(札幌市中央区)】
人の心と炎をつなぐ。北海道の薪ストーブ店
設立から20年以上になる薪ストーブ店で、筋金入りの薪ストーブ愛好家がスタッフとして顔をそろえます。スタッフ自らが試行錯誤しながら使い勝手や使い心地を体感し、経験に基づいた知識をユーザーに伝えることを大切にしていて、ライフスタイルに寄り添ったアドバイスは薪ストーブユーザーから厚い信頼を寄せられています。
【サカシタペチカ(札幌市白石区)】
北海道初!バーモントキャスティングスを扱った老舗薪ストーブ店
サカシタペチカは、40年近く薪ストーブや暖炉の販売・施工に携わる老舗。取り扱う薪ストーブの種類は多種多様で、北海道で唯一バーモントキャスティングスを取り扱っている店舗でもあります。常時30台以上展示していて、デザインや使用目的など、ユーザーの望む導入条件に合わせた薪ストーブ選びを行います。
【神楽ストーブ(札幌市東区)】
現代の住まいにフィットした機種を提案する、札幌の薪ストーブ専門店
鋳物製のIRON DOGシリーズや、鋼板ストーブHWAMシリーズなど、高性能な薪ストーブを取り扱っています。住宅のリフォームや家具のリペアをメインとする会社が運営しているので、施工も丁寧で確実。西洋漆喰の塗壁で仕上げたショールームは洗練された雰囲気で、現代のモダンな住宅にも薪ストーブがマッチすることがイメージできます。
施工実績が豊富な札幌圏の工務店が安心。
新築10軒の薪ストーブのある暮らし
憧れていた薪ストーブライフ、実際の住み心地はどうなのでしょう?住まう家族によって、薪ストーブの楽しみ方はさまざま。実績が豊富な札幌圏の工務店とともに実現した薪ストーブライフを満喫する10事例をご紹介します。
case.1
【SUDOホーム】
キャンプの楽しさを家で味わう日常の贅沢/札幌市・Mさん宅
札幌市内の緑豊かな川辺に隣接する土地に立つMさんご一家の住まい。自然素材を生かした空間とデザイン性、薪ストーブのある家を多数建築していることが決め手になって依頼したというSUDOホームに依頼して実現した理想の新居です。
ナラの無垢床や珪藻土入りの塗り壁、タイルなど素材感際立つ空間の中心にあるのは、薪ストーブを設けた土間で、土間の縁に座って庭と薪火を眺める時間は格別。根っからのアウトドア好きだったというMさんにとって、目指した以上にキャンプ気分が味わえるマイホームになりました。
記事はこちら▶ キャンプの楽しさを家で味わう日常の贅沢(札幌市・Mさん宅)
case.2
【アシスト企画】
薪ストーブのある土間と一面の札幌軟石の壁。開放的な良質素材の家/札幌市・Tさん宅
「マンション暮らしでは叶わなかった、一軒家ならではのことを実現させたい」。そんな想いを抱いていたご夫妻をかたちにしたことの一つが「薪ストーブのある暮らし」でした。
玄関から直接アクセスできる、リビングと隣り合わせの土間スペースが、薪ストーブの居場所。選んだのは、シンプルモダンなインテリアになじむヨツールの薪ストーブです。炉壁を兼ねた札幌軟石の壁はリビングの壁の一部とつなげ、本物の質感が楽しめるアクセントウォールとなっています。
記事はこちら▶ 薪ストーブのある土間と一面の札幌軟石の壁。開放的な良質素材の家(札幌市・Tさん宅)
case.3
【リビングワーク】
IoTと薪ストーブで、スローライフを軽やかに楽しむ/札幌市・Sさん宅
転勤族のSさんは、地元の札幌に転属になったのを機に家を新築することにしました。家づくりにあたって、ぜひに!と希望したのは薪ストーブ。薪の燃える様子を眺めて癒やされたり、遠赤外線の暖かさを感じたりしたいとの想いがあったといいます。
ただ日々の手間を考慮して薪ストーブはあくまで補助暖房。パネルヒーターや床暖房も完備して、使い分けられる環境を整えました。薪棚は、陽当たりや風通しの良い玄関ポーチの下に。真冬で積雪があっても、薪を取りに行くためにわざわざ雪かきをする必要がありません。マイペースに快適に薪ストーブのある暮らしが楽しめるお住まいです。
記事はこちら▶ IoTと薪ストーブで、スローライフを軽やかに楽しむ(札幌市・Sさん宅)
case.4
【大元工務店】
17年来の夢を叶えた森の緑と暮らす住まい/札幌市・Fさん宅
17年間マンションで暮らしながら「いつかは、気に入った土地を見つけて戸建てに住み替えたい」と考えていたFさんご夫妻は、雑木林が裏手に広がる160坪の宅地と出会ったことでついにその願いを叶えました。
念願の新居のリビングの一角には薪ストーブを設置。大きな吹き抜け空間にまっすぐに煙突が伸びて、家の隅々まで心地よい暖かさが広がります。薪ストーブのすぐ側には外との出入り口を設け、薪動線にも配慮されています。
記事はこちら▶ 17年来の夢を叶えた森の緑と暮らす住まい(札幌市・Fさん宅)
case.5
【北清建設】
家の建て替えで叶えた、念願の薪ストーブ生活/札幌市・Mさん宅
薪ストーブの家づくりの実績が多い工務店として信頼の厚い北清建設が手がけた札幌市のMさん宅。同居していた高齢のご両親の転居を機に建て替えを決め、「それなら薪ストーブを入れたい」と市内の薪ストーブ店へ行って紹介されたのが同社でした。
薪ストーブを据えたのは、コーナー窓から自然豊かな眺望が開けたリビング土間の一角。ご夫妻は、冬にはホットカーペットの上でしか寝なかった愛犬たちが、今はどこでもぐっすり寝ていることに、薪ストーブならではの暖かさを実感しているそうです。
記事はこちら▶ 家の建て替えで叶えた、念願の薪ストーブ生活(札幌市・Mさん宅)
case.6
【SMAUTO(STV興発)】
家族の”好き!”を隅々まで詰め込んだ唯一無二のマイホーム/札幌市・Aさん宅
玄関ドアを開けると、目の前には大きな窓があって明るく気持ちがいいインナーテラス。その一角に、Aさんが希望した薪ストーブが置かれ、本体側面のクラシカルなレリーフが空間に美しく映えます。
インナーテラスはLDKと接していて、さまざまな角度から薪ストーブの炎が楽しめます。また上部は大きな吹き抜けで、薪ストーブからの熱が家全体に行き渡ります。「ストーブで煮込み料理やピザをつくり、家族や友人とにぎやかに楽しみたいですね」と、ご夫妻は来る初めての冬に思いを馳せています。
記事はこちら▶ 家族の”好き!”を隅々まで詰め込んだ唯一無二のマイホーム(札幌市・Aさん宅)
case.7
【丸三ホクシン建設】
薪ストーブは、家族の大切な日常的アクティビティ/江別市・Iさん宅
「焚き火をするためにキャンプに行く」ほどに、火のある暮らしに憧れていたIさんご一家。20社以上巡った末に、薪ストーブのある家づくりを得意とする丸三ホクシン建設に新築を依頼しました。
江別市に立つ庭を囲むL字型の住まいは、薪を持ち運びやすいよう玄関と庭、薪ストーブをつなぐ土間を設けています。キャンプ仲間の家で薪割りをするなど、薪の調達も家族や仲間と楽しむアクティビティのひとつ。LDKから常に庭と薪ストーブを眺めながら、炎を囲む暮らしを楽しんでいます。
記事はこちら▶ 薪ストーブは、家族の大切な日常的アクティビティ(江別市・Iさん宅)
case.8
【小松建設】
身体的にも視覚的にもあたたまる炎のゆらめき/室蘭市・Kさん宅
室蘭市内の300坪の原野に立つKさん宅。地元産ホタテの殻を使った漆喰壁や道産カラマツのフローリングなど、小松建設による地産地消の自然素材に囲まれた住まいで、愛犬とともに薪ストーブライフを満喫しています。
共働きのため、薪ストーブの使用は夜のみで、薪は自宅を囲む豊かな森から調達。火を付けると愛犬もそばにやってきて、家族団らんの時間がスタート。薪ストーブには焚き付けの手間を超える魅力があると、日々実感しているKさんご夫妻です。
記事はこちら▶ 身体的にも視覚的にもあたたまる炎のゆらめき(室蘭市・Kさん宅)
case.9
【ノースランドログホームズ】
家族や仲間と、ログハウスで楽しむ薪火の時間/余市町・Hさん宅
ニセコのコテージをイメージしたHさんご一家の住まいは、余市町の住宅街の一角に立つ大きな三角屋根の木の家。家づくりのパートナーは30年以上にわたってログハウスを手がけるノースランドログホームズで、薪ストーブの施工実績も豊富です。
2階の天井まで角ログで仕上げたリビングは、上部が大きな吹き抜けになっていて、家のほぼ中央に薪ストーブが設置されています。煮込み料理やピザなど、薪ストーブは冬の食卓でも大活躍。近所に住む友人家族も集まって、薪火を囲む豊かな時間を過ごしています。
記事はこちら▶ 家族や仲間と、ログハウスで楽しむ薪火の時間(余市町・Hさん宅)
case.10
【アトリエキバコ】
都会の秘密基地のような「焚き火小屋」も。家づくりから広がる薪火の輪/札幌市・Sさん宅
北海道の豊かな自然が育んだ本物の素材と手仕事を生かす家づくりを行うアトリエキバコ。江別市にある同社のアトリエには、筋金入りのアウトドアマンである代表・中川さんの意向で2階リビングの一角に薪ストーブを設置しています。
火に親しむ暮らしの提案は、家づくりだけにとどまらず、その一例が札幌の街中にある「焚き火小屋」です。Sさん宅の庭に建てた焚き火小屋は、都会にひっそり佇む秘密基地のよう。Sさんは炎の揺らぎを眺めながらスコッチと葉巻を楽しみながら、日々の疲れを癒やしています。
記事はこちら▶ 都会の秘密基地のような「焚き火小屋」も。家づくりから広がる薪火の輪(札幌市・Sさん宅)
薪ストーブは、札幌の長い冬の暮らしを楽しく豊かに盛り上げてくれる道民になじみ深い暮らしの道具です。電気代やガス代が大幅に値上がりする中で、今改めて、暖房として住まいに取り入れることを、薪ストーブ専門店や札幌圏の工務店に相談して検討してみてはいかがでしょうか。
(文/Replan編集部)
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「薪ストーブで冬を楽しむ。2022」
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アウトドアブームやおうち時間への関心の高まりから薪ストーブを取り入れた家が増えていますが、普通の暖房と違う点も多い薪ストーブは、家づくりの前から知っておいたほうがいいことがたくさんあります。
そこで「薪ストーブで冬を楽しむ。2022」では、北海道・東北で建てた薪ストーブのある家の実例をはじめ、住宅雑誌Replanならではの視点から、薪ストーブライフに役立つ情報をさまざまな角度からご紹介。十人十色の暮らしぶりや建築会社や薪ストーブ店など専門家の話の中に、家づくりの、そして冬をもっと楽しむためのヒントが見つかるかもしれません。
Contents
■巻頭特集
薪ストーブのある暮らし・四季
■家づくりで知っておきたい 薪ストーブの基礎知識
■薪ストーブがもたらす暮らしの豊かさ 実例紹介
■薪ストーブ専門店に相談して良かった!
安心で快適な薪ストーブ生活のススメ
■ここにも注目!
薪ストーブが、CO2削減に役立つ 北国のスタンダードな暖房に?
■豊かな時間をひとり静かに味わう。 薪ストーブのある小屋
■部屋の印象を決める! 炉壁と炉台の素材別デザイン集
■薪ストーブショップリスト