トリプルガラスの時代?ペアガラスはもう要らないのか

前回、引き違い窓(1650×1370㎜)を東西南北の方位で、窓から入る日射熱と窓から逃げる熱損失を暖房期間の平均値で収支計算すると、南の窓は日射熱の方が大きく、その他の方位では熱損失の方が大きくなることを示しました。サッシはPVCで、ガラスはペアガラスとトリプルガラスでは、ペアガラスの方が収支がよくなることが分かりました。冬の日射量が大きい帯広では、日射熱のプラスがかなり大きくなります。

しかし、住宅の暖房エネルギーで比較すると、トリプルガラスの方が少なくなります。これは、その他の方位での熱損失がトリプルガラスの方が小さく、その熱損失が小さくなる分が、南の日射取得熱のプラスを上回るせいなのです。

ここから、住宅の南の窓だけをペアガラスにして、その他の方位はトリプルガラスにするというアイデアが生まれます。さらに、最近登場してきた海外製の新型ガラスを組み合わせるとどうなるでしょうか。この新型ガラスには2種類あり、熱損失が大幅に小さくなるタイプと、熱損失は少し小さくなるが、日射取得が大幅に増えるタイプがあります。前回の分析で、後者の方が暖房エネルギー削減効果が非常に高いことも分かっています。

住宅の太陽熱利用を高める、パッシブソーラーデザインの基本がここにありそうです。

サッシのU値はどのようにして計算するか

初めに、窓の熱損失を計算するのに必要になる、サッシのU値(熱貫流率)はどのようにして求められるかについて理解する必要があります。以前は、建材試験センターにサッシメーカーが依頼して、実際のサッシの熱損失を測定する方法で、窓の熱貫流率をいろいろなサッシの代表値として求めていました。しかし、今では計算で求める方法がJISで規定され、一般的になりました。図1にその計算方法を示します。

図1 窓の熱貫流率を計算で求める方法(JIS)

このうち、サッシフレームのU値(Uf)は、別途2次元熱流計算プログラムで計算されます。サッシの上下左右のフレームで値は異なりますが、ここではその平均値を示しています。図2にいろいろなUfの値をグラフで示します。

図2 サッシ枠の平均熱貫流率

断面形状の違いにより、メーカーによって若干異なります。当然この数値は小さい方がいいのです。また、ψgは、複層ガラスのスペーサーの材質で異なり、JISで数値が決められています。

このように計算でサッシのU値が求められるようになると、いろいろな寸法や開閉方式の違うサッシのU値がすべて求められることになります。図3~4にはC社のArLow-E16㎜ペアガラス仕様のPVCサッシについて、寸法、開閉方式の違い別にガラス率、U値と面積でグラフにしました。

図3 PVCサッシのガラス率

図3のガラス率は、サッシの面積に対してガラスの面積の比率を示します。縦軸にガラス率、横軸にサッシ面積をとると図3のようになります。ガラスを通して日射熱が入ってきますから、太陽熱取得にはガラス率の高いサッシの方が有利です。この図を見ると嵌め殺し窓が圧倒的にガラス率が高く、一番低い引き違い窓に比べると20%近く差があります。また、面積の大きな窓の方がガラス率も高くなります。

図4 PVCサッシの面積、開閉方式による熱貫流率

図4のサッシのU値は、図1の方法で計算したものですが、やはり嵌め殺し窓が一番U値が小さく(熱損失が小さい)、引き違い窓が大きくなっていて、面積の大きなサッシの方がU値が小さくなっています。これらの傾向は各社のサッシとも同じです。

パッシブソーラーデザインの南窓の在り方

図3~4のグラフから、南窓のデザインの在り方が見えてきます。大きな嵌め殺し窓を中心にして、南窓に要求される、通風や人の出入りなどの機能を満足すればいいのです。私は以前、1800×1800㎜の嵌め殺し窓の下に900×600㎜のすべり出し窓を連窓にして組み合わせた窓を、住宅の南側に並べたデザインを試みたことがあります。また、片袖縦すべり出しの大きな窓で人の出入りもできるようにする窓も有望です。要は南窓全体のガラス率を大きくすることが必要です。