ヨーロッパは脱ロシアに必死
ヨーロッパは今、ロシアからのエネルギー依存からの脱却を、死に物狂いで進めています。ドイツは化石燃料の約半分をロシアに依存していますが、石油の輸入を2022年中、天然ガスも2024年夏までには輸入を終了すると宣言しました。
しかし、その代替を探すのは容易ではありません。従来は陸続きでパイプラインにより安価に供給されてきた生ガスに変わり、コストをかけてでも冷却・液化した液化天然ガス(LNG)を世界中から輸入しようとしています。
ヨーロッパのエネルギー事情が日本にも直接影響する時代に
一方の日本は、ロシアへの化石燃料の依存はそれほど大きくなく、直接の影響は比較的小さいと思われます。従来、日本はLNGをタンカーで輸入していたため、パイプライン主体のヨーロッパ市場の影響をあまり受けてきませんでした。しかし今後は、ヨーロッパとのLNGの獲得競争が激化するのは避けられません。世界の事情が、ダイレクトに日本の燃料輸入に影響する時代になってしまったのです。
日本の燃料輸入代は急変
ご存じのとおり、日本は化石燃料の大半を輸入に頼っているため、膨大な燃料代を海外に支払っています。グラフ2に、輸入金額の推移を示します。
2021年の輸入総額は16.84兆円にも上ります。これは日本の国家予算における防衛費(5.3兆円)・教育研究費(5.4兆円)・公共事業費(6兆円)の合計に匹敵する膨大な金額です。
しかも毎年の推移で見ると、以前よりもかなり金額が増えていること、毎年の変動が大きく、2008年や2013年・2014年には、30兆円近くまで増えていることが分かります。 化石燃料は世界の需給バランスの変動により、非常に大きく変動します。
ドルベースの価格を、グラフ3に示しました。
化石燃料は必需品なのに暴落暴騰を繰り返す、非常に厄介な代物なのです。
日本が輸入する場合は、ドルと円の相場も影響します。現状では、ドルベースでの価格高騰とともに円安も進行(グラフ4)したため、まさにダブルパンチで輸入燃料のコストが跳ね上がっています。しかも悪いことに、この状況は当面続く可能性が高そうです。
輸入燃料価格が自動的に電気代に反映される「燃料費調整制度」
日常生活の中でこうした輸入燃料の値上がりを直接感じるのは、車の燃料であるガソリンでしょうか。政府は「燃料油価格激変緩和対策」として、リットル170円を超える分を補助する制度を始めています。
家庭で使う電気・ガスも8割程度が輸入燃料でつくられていますので、輸入燃料の値段はその代金に直接影響します。電気・ガスともに「燃料費調整制度」によって、輸入燃料の価格は数ヵ月遅れで各家庭の電気代・ガス代に自動的に反映されるようになっているのです(図3)。
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