日本の家づくりで欠かせない材料。それは「木」です。今も「木の家」の人気は変わらず、構造材はもちろん、内装や家具などさまざまなシーンで木が好まれ、使われています。そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、住宅で使われる「木」と、家づくりにおける木材の選び方のポイントについて教えていただきましょう。
「木」は最も身近な建築材料
木は私たちの住まいに欠かせない素材です。昔は近隣の森から程よく生長した木を、吟味して伐採し、建物の構造材や内外装仕上げ材に利用していました。
木が間引かれると陽当たりの良い空間ができ、次の世代の木が生長します。日本の森は、人々の生活サイクルの一部に取り込まれていて、人と周辺環境のサスティナブルな仕組みが維持されてきました。
戦後しばらくして、海外各国から木材が輸入され始め、安価な外国材が建築現場で主流になっていましたが、昨今のウクライナ情勢の影響による木材価格の高騰やゼロカーボンへの意識の高まりなどから、今また、国産材が注目されています。
見た目だけでなく「重さ」も違う。
「針葉樹」と「広葉樹」
森は、たくさんの種類の樹木で構成されています。大きく分けると細い針のような葉を持つ「針葉樹(スギ、ヒノキ、マツなど)」と、平たい葉を広げる「広葉樹(ナラ、メープル、タモなど)」があります。
見た目の違いはもちろん、実は「重さ」もかなり違います。同じ大きさに製材して重さを計ると、針葉樹は軽く、広葉樹は重いことがわかります。重さは、木の密度によるもので、硬さや強度に影響します。それぞれが特性を生かした製品となって、私たちの住まいと暮らしを支えています。
使用目的や優先順位に合わせて
「樹種」を選ぶ
重い木は硬くて強く、軽い木はやわらかくて傷がつきやすいため「どこに、どの木を使うか」が、家づくりでは大事なポイントです。例えば、傷や強度が重要視されやすいフローリングは、広葉樹の中でも硬い「ナラ」や「メープル」が好んで使われます。
ただしスギやマツ(パイン)などの針葉樹が使えないというわけではありません。「傷や凹みは木の味わい。やわらかい足ざわりを優先したい」というご家庭では、針葉樹のフローリングを選ぶケースもあります。
建具や窓枠、造作キッチンの面材などには、硬くて強く、加工性が良いタモやナラがよく使われます。木目が美しいことも、重宝される理由の一つでしょう。意匠性が気になる壁や天井の仕上げ材や、室内に現しにすることもある構造材には針葉樹も多く使われます。スギやヒノキのほか、北海道では木肌が白くて美しいトドマツも好まれていますね。
私たちが日常的に触れ、動かしたり寄りかかったりする椅子やテーブルには、硬くて凹みにくいナラやウォールナット、メープルなどの広葉樹でつくられるものが多くあります。建物でも家具やインテリアでも、見た目の印象は大事ですが、それと同時に「樹種の特徴」を知って、自分たちの使用目的や使い方に見合う木材を選ぶことが大切です。
樹種によって色・木目に大きな特徴。
経年変化も大きな魅力
重さや硬さに加え、木は色や木目も樹種によって異なりますし、製材の仕方(柾目(まさめ)か板目(いため)か)や使う部位によっても表情が全然違います。
木目がすっきりとした主な樹種 | 木目がはっきりしている主な樹種 |
・トドマツ …白っぽい など | ・ナラ(ミズナラ)/ タモ …黄みを帯び、材によっては節も入る ・カラマツ …はっきりした褐色系で、節が多め など |
木があまり主張せず、空間にスッとなじむことを好む方は、木目がすっきりとした樹種を、木の力強さや木目の動きといった個性を楽しみたい方は、木目がはっきりしている樹種を選ぶのがおすすめです。
そして木の大きな魅力は、時間とともに色や風合いが変わる「経年変化」でしょう。例えば、マツ類は総じて時間とともに赤みが強くなります。内装仕上げや家具など、室内の木材の色がそれぞれのペースで変化し、歳を経るごとに調和し深みを増す様子は、お金では買えない自然素材ならではの味わいです。
このように家づくりや暮らしの中で使われる「木」には、さまざまな種類があります。樹種によって価格にもかなり幅がありますので、イメージとコストを天秤にかけながら、納得のいく住まいづくりを進めてくださいね。