リプランのオフィスをリノベーションした際には、3Fの廊下とミーティングルームに(株)シーゲルさんのショールームに行って選んだ無垢のナラの床材を採用しましたが、取材先の住宅でも、その雰囲気と肌触りのよさから、無垢フローリングを使う家が多く見られます。

ただ無垢フローリングは、いわば木そのもの。長く快適に使い続けるためには、木の性質や扱い方を知っておくことが大切です。そこで今回は無垢フローリングを専門に扱う(株)シーゲルさんに伺ったお話も交えながら、無垢材との上手な付き合い方をご紹介しましょう。

無垢フローリング
リプランオフィス3階の廊下とミーティングルームは、(株)シーゲルさんの古材風な無垢フローリング仕上げ

無垢フローリングの敵。
それは「極度の乾燥」

繰り返しになりますが、無垢フローリングは木そのもの。空気中の湿度が高ければ膨らみ、乾燥していれば縮みます。そして極端に乾燥すると、割れてしまうこともあります。

無垢の木にとって最適な湿度は、40~50%前後。でも、北海道のように冬が長い地域では、暖房をつける期間が長いこともあり、室内が乾燥しがちです。

冬場、私たちの肌は乾燥でカサカサして、ひどいと踵や指先がぱっくり割れたりしますよね。その点は木も同じです。乾燥で木肌が荒れたり、縮んで板の間が空いたり、割れたりすることがあるのです。

無垢フローリングのバリエーション
室内の広い面積を占める床。本物の木を使うことで、より豊かな空間演出ができる

でも、だからといって怖がることはありません!無垢フローリングは、正しく施工され、住まい手が湿度をしっかり管理していれば、心地よくて味わい深い、家族の宝物になります。

「専用ボンド」と「スクリューネイル」が
施工の際のポイント

(株)シーゲルさんによると、施工ではまず「無垢フローリングに適したボンドを使うことが大事」とのこと。無垢材は、乾燥度合いによって伸び縮みするので、その動きに対応できる専用のボンドを使う必要があるといいます。

建築工事でよく使われる白いボンドは、下地材にしっかりくっつきすぎて柔軟性がなく、床鳴りや割れが起こりやすくなるので、無垢フローリングの施工には不向きです。

(株)シーゲルが推奨する無垢フローリングに適したボンド
(株)シーゲルが推奨する無垢フローリングに適したボンド
※幅広(120㎜以上)フローリングを施工の際は、下地に接着剤を流し込み、櫛で伸ばして全面に塗布
専用接着剤を使った正しい施工方法と防水処理の方法

また、フローリング材の固定には「スクリューネイル」が推奨されています。特に幅広のフローリング材は、一般的な幅(75〜90mm幅)の商品よりも反りやすく、湿度の変化による伸縮も大きいため、フィニッシュネイルやタッカーだと、その動きに負けてしまって、トラブルが起きるリスクが極端に高まるといいます。

またスクリューネイルでの施工に際しては、下地の合板を貫通させ、根太にしっかりと固定させることも重要です。無垢フローリングの良い状態を保つためには、適切な接着剤とスクリューネイルを併用して施工することが大事なんですね。

フローリング材の固定には、スクリューネイルを使う。フィニッシュネイルやタッカーでは、トラブルが起こるリスクが増える

割れや暴れを抑えるためには、
「湿度」をしっかり管理する

唇がカサカサになってひび割れてしまうような乾燥した室内環境は、木にとっても辛い状態です。加湿器を使って、家の中の湿度を調整するよう心がけてください。

(株)シーゲルさんの経験では「施工して1年目から2年目の初めのうちが、無垢フローリングが一番動く」そうですが、それは新しい環境に木がびっくりしたから。湿度を管理して環境を整えれば、次第に落ち着いて、動きも少なくなります。

適正な湿度は、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどの予防にもつながります。無垢フローリングの暴れや割れを防ぐのはもちろん、ご家族の健康のためにも「湿度」に気を配りましょう。

素足で歩きたくなるのも、無垢フローリングならでは
素足で歩きたくなるのも、無垢フローリングならでは。湿度に配慮することで、いいコンディションを長く保つことができる

より長く心地よく。いい状態を
保つためのメンテナンス

無垢フローリングは適切なお手入れの仕方を知っておくと、より長くいい状態を保つことができます。ちょっとした凹みなら、凹んだ部分に水滴を垂らしてしばらく放置すると、木が水分を含んで膨らみ、凹みが目立たなくなります。

キズは、もともとの仕上げと同じ塗料やオイルでタッチアップすれば目立たなくなりますし、えぐれてしまったら、パテで埋めて補修できます。

表面に傷がついたフローリング
表面に傷がついたフローリング
布でこすって、塗料を傷の部分になじませると…
布でこすって、塗料を傷の部分になじませると…
傷の部分が、木目と同じような色合いになって目立たなくなります
傷の部分が、木目と同じような色合いになって目立たなくなる

木の風合いを生かすオイル塗料での仕上げだと、飲み物などをこぼすとシミがつくことがありますが、この場合もシミの部分を紙やすりで薄く削って、同じ塗料で仕上げれば、ほぼ元どおりになります。

NG なのは、頻繁な水拭き。表面が毛羽立ち、割れの原因にもなりかねません。基本的には、無垢フローリングのお掃除は乾拭きで。水拭きをしたい場合は、固く絞った雑巾で時々拭く程度にしましょう。

少し手をかけるだけで、永く美しさを保てるのが無垢フローリングの大きな魅力。リフォームやリノベーションの時機が来たとしても張り替える必要がないので、長い目で見るとお財布にも優しいですね。

ヘリンボーン柄に施工した無垢フローリング
ヘリンボーン柄に施工した無垢フローリング。年月を経るほどに味わい深くなり、長く愛着を持って使える

傷や割れ、隙間などが気になるなら、
無垢フローリングにこだわらないのも一案

風合いも素敵な無垢フローリングは、上質な空間づくりの定番アイテムになってきています。

でも一方で、伸縮するという木の特性により、材の間に隙間ができたり、割れが出たりすることもあります。自然素材ならではの変化ですが「それはちょっと気になるし、嫌だな…」という方もいるでしょう。

その場合は、無垢フローリングにこだわらないのも一案。最近ではプリントの技術が目覚ましく向上し、一見すると本物か木目調か見分けがつかないほどよくできた商品もあります。

また(株)シーゲルさんが販売している無垢材と工業製品のフロア材のいいとこ取りをしたハイブリッド床材のような商品も、要望を十分に叶えてくれるでしょう。

無垢材が魅力的なのはいうまでもありませんが、素材の特徴を踏まえて、自分の性格と好みにふさわしいフローリングを選ぶことが、ストレスなくおうち時間を楽しむ秘訣です。デザイン的にも機能的にも納得のものを吟味して、お気に入りの空間を実現してくださいね。

(文/Replan編集部)

取材協力/株式会社シーゲル