大雪続きで例年より長く感じられた冬が過ぎ、いよいよ北海道にも春が訪れようとしています。「緑」は、身近に感じることで気持ちがやすらぐ大切な存在。家を建てるのであれば、庭のことも併せて考えてみたいところです。今回はそれぞれの敷地条件に合わせて庭のある暮らしを実現した事例をご紹介します。
機能性を追求したプライベートな中庭
周囲をマンションや戸建てに囲まれた住宅街に建つこの住まい。プライバシーを考慮し、公道側にはあえて開口を設けておりません。しかし廊下からスキップ階段を抜けると景色が一転、中庭と一体となったのびやかで明るいLDKが目の前に広がります。
内側に大開口を多用したLDK、中2階のプライベートフロアの中心にある中庭は、子どもの絶好の遊び場。暖かな時期は、家族の第2のダイニングとしても大活躍します。また階段が設けられているので、中庭通じてフロアとフロアの移動もできます。
そしてこの中庭には、もう一つ大切な役割が。中庭をつくり、北に大きく開いたプランとすることで、夏はやわらかな反射光だけが室内に入り、明るく過度に暑くなることもありません。一方、冬には安定した北からの陽射しがたっぷり入ります。庭にさまざまな機能性を持たせることで、より豊かな暮らしを実現した住まいです。
随所に配した大小の庭から緑を楽しむ
この住まいも三方を住宅に囲まれた都市部に建つ住宅です。1階部分にはカーポートとガレージを組み込み、開口部は2階個室用で最小限に抑えて、プライバシーを確保しました。先ほどの住宅と違う点は、庭空間を複数に分けて配置しているというところです。
室内に入ると、玄関からLDKにつながる廊下の突き当たりにある窓越しに、坪庭の緑が額縁のように切り取られています。黒と天然木の美しいコントラストを強調したLDKに沿って設けられた壁一面の大きな窓の向こうには裏庭があります。
庭は1階だけではありません。2階の和室から出入りできる中庭は、玄関の吹き抜けとつながる2階ホールからも眺めることができ、空間に開放感をもたらします。そして2階の浴室にも窓があり、坪庭を眺めながら入浴できるようになっています。住まいのあらゆるところで緑を楽しめるつくりが印象的です。
家の庭を街並みの風景の一部に
前の2事例とは違って、敷地が広めで隣家とも比較的距離のあるゆとりのある立地条件のこの住宅。ご家族はその恵まれた環境を生かし、かねてから希望していた庭と畑のある暮らしを存分に楽しまれています。
ブルーベリーやハスカップ、野菜がたわわに実る広い畑は、子どもたちが元気に駆け回る遊び場でもあり、自然のことを体験する学びの場でもあります。特別柵や塀を設けてはいませんが、建物をセットバックして距離感を取り、たくさんの植栽が程よく目隠しとして機能しています。奥さんが丹精こめて整えた色鮮やかなボーダーガーデンも、住まいと街並みに彩りを与えます。
薪ストーブもあるこの家。新居を建ててから季節ごとの外仕事が生活の一部となったと語る奥さん。その外仕事が日々の暮らしをより豊かなものにしているようです。
敷地条件によって庭づくりのハードルは変わってきます。しかしこの記事の前半2事例で紹介したように、緑のある環境が期待しにくい都市部でも、プランニング次第で緑豊かな暮らしを実現することが可能ですので、最初から断念するのではなく、「緑」を取り込む意識を持って家づくりのパートナーと話し合ってみてください。
(文/Replan編集部)