A邸の断熱・耐震 改修の概要

この住宅の改修は、床・壁・天井を剥がすというかなり大がかりなものでした。しかしこうすると耐震改修はとても簡単で、補強金物の打ち付けと、構造用合板を外壁に張り付けるなどでできてしまいます。そこに断熱材を充填したり、サッシを交換したりして、住みながらの改修は結構大変だったと思われます。

改修後の断熱仕様は、下の表1に示します。この仕様をQPEXで計算してみると、表1のようなQ値・UA値となり、暖房エネルギーは24時間20℃の全室暖房で、灯油352Lと計算されます。実際の住宅での灯油消費は、この10年間200L台で経過してきているそうです。温度設定が20℃より低めで、夜間は暖房を止める生活だったといいます。今年の冬は少し温度を高めに設定し、また南に背の高い住宅が建ち日射が減少したことも影響して、この計算結果の350L近くになったといいます。  

表1  A邸 面積及び断熱仕様
床面積

1階

73.7㎡

2階

29.0㎡
102.7㎡
改修前断熱仕様
天井

GW10kg/㎥  100㎜

外壁

GW10kg/㎥  100㎜
無し
開口部アルミサッシ シングルガラス
改修後断熱仕様
屋根HGW16kg 155+175㎜
天井吹き込みGW13kg/㎥ 350㎜
外壁

HGW16kg/㎥ 105㎜+
GWB32kg/㎥ 40㎜

基礎GWB48kg/㎥ 60㎜ 基礎立ち上がり両側
床下土間XPF3種50㎜ 全面

開口部

南面:PVC+12㎜ペア 木製サッシ+
トリプル 一部PVCサッシ+Low-Eペア

Q値1.448W/㎡K
UA値0.417W/㎡K

この改修後10数年たち、もし同じような改修をすると仮定すると、この間にガラスの性能が上がり、外壁210㎜断熱工法が普及し、熱交換換気システムの効率が向上しましたので、その仕様で計算すると灯油消費は220Lとなります。暖房エネルギー消費量の削減率を見ると、現状で省エネ基準住宅の37%以下ですのでQ1.0住宅レベル1となり、今改修するという仮定では23%となり、Q1.0住宅レベル3になります。近年は住宅の省エネレベルを上げることが容易になっているのです。

サバイバル住宅としての Q1.0住宅

Aさんの手記にもあるように、この住宅の改修は外形は変えず、1階の間仕切りを取り払い広い空間としています。その中での生活の快適さを強調しておられますが、この中で大きな成功を収めた改修があります。それは、階段上部の2階北側の屋根と、1階キッチン付近の上部を吹き抜けにして、2階の南側の屋根に屋根窓を取り付けたことです。

1階の広い空間から見ると2ヵ所の屋根窓が南北に取り付けられていることになります。これは夏の通風対策で、夏は雨が降らない限りこの窓は開け放しになっています。日中の家の中の熱を効果的に排出するのですが、夜になると風向きによって、どちらかの窓は温度の低い外気が流れ込み室内を冷やしてくれるようです。設備に頼らない建築的な工夫で夏の快適さを獲得できたのですね。  

Q1.0住宅を災害時のサバイバル住宅としてみなすことも重要ですが、普段の生活でそれが生きることが望ましいといえます。太陽光発電や太陽熱給水器を取り付け、災害時に役に立つことはもちろんですが、普段の生活でも普通に使って、省エネに役立つ設備をこれから検討していく必要があるなと思っています。これからは脱炭素住宅が必要になりそうです。