普通の2階建て住宅は日影規則の対象ではない
日影規制で一安心といきたいところですが、実は戸建て住宅が中心の低層住居専用地域ではあまり意味がありません。日影規制では、太陽高度が最も低くなる冬至の日に、高さ1.5mの測定面で3時間以上影となる「濃い影」が、隣地に飛び出す長さを敷地境界線から5m以内に収める必要があります。北側隣棟の1階にもささやかな日当たりが期待できる規制ですが、残念ながら規制の対象となるのは「3階建てまたは軒高7m以上」の建物のみです。つまり、普通の2階建ての戸建て住宅は、この日影規制の対象とはならないのです。
太陽の高さを確認しよう
連載の中で何度も触れている太陽高度を、図3で今一度確認しておきましょう。春分・秋分の南中時(≒12時)太陽高度は、90度から敷地の緯度を引いた値なので、北緯35度の東京なら55度(≒勾配1.25/1)となります。春分・秋分の南中時太陽高度に、23.4度を足せば夏至、23.4度を引けば冬至の南中時太陽高度になります。東京なら、それぞれ78.4度(≒勾配5/1)、31.6度(≒勾配0.6/1)となります。このうち、春分・秋分の勾配1.25/1、冬至の勾配06./1はあとで出てくるので、ちょっと覚えておきましょう。
住宅地の日影規制は北側斜線のみ
先に見たように、住宅地でも2階建ては日影規制の対象となりません。図4に示す、1970年に定められた「北側斜線」だけが、日当たり確保のための規制です。建物を建てられる範囲は、北側の敷地境界線から5m立ち上がり、そこから勾配1.25/1で高さ規制の10mまで延ばした範囲の内側になります。
図3で見た通り、勾配1.25/1は春分・秋分の南中時太陽高度であり、この規定は春分~秋分の間に日が当たればいい、と考えていることは明らかです。日当たりがほしいのは冬ですが、冬至の南中時太陽高度はずっと低く勾配0.6/1ですから、北側の隣棟は1階はおろか2階にもほとんど日が当たらない場合が十分にありえます。
もし周辺を勾配1.25/1の「とんがり屋根」の家で囲まれてしまった場合、北の敷地にはびっしり影が落ちてしまいます(図5)。通常の北側斜線はまったく不十分な規制なのです。
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