住宅で使われる床材は「フローリング」以外にもさまざまな種類があります。どんな空間に使うのか。また、強度や耐性、質感や色味、デザイン性や機能性など、何を重視するかによっても、選ぶべき素材が変わります。
そこで今回は、水まわりでよく使われる定番の床材「クッションフロア」と「フロアタイル」について、インテリアコーディネーターの本間純子さんに教えていただきましょう。
住まいの床材には、以前お話ししたフローリングのほか、畳やカーペットなどいくつもの種類がありますが、今回はバリエーション豊富で、住宅でよく使われるプラスチック系の床材「クッションフロア」と「フロアタイル」について、それぞれの特徴と使うときの注意点を紹介します。床材選びの参考にしてくださいね。
水まわりで重宝する「プラスチック系床材」
塩化ビニル樹脂を主原料とした「プラスチック系の床材」の大きな特徴は「水に強い」こと。そのため住宅では、水まわりの床材としてよく使われています。種類としては、柔らかいシート状のものと、硬くていろいろな形に形成されたタイル状のものがあります。
施工性が良く、手頃な価格のものが多いこともあってよく使われますが、注意点がひとつ。素材の特性から、椅子やワゴンのキャスターのゴム成分が、床材に染み込んで変色する場合があります。プラスチック系の床材の場合は、ウレタンやナイロン製のキャスターのものを選ぶようにしましょう。
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シート状で踏み心地が柔らかい。
「クッションフロア(ビニル床シート)」
ビニル床シートは、一般的に「クッションフロア」と呼ばれている床材で、滑りにくくするための凹凸の加工がシート表面に施されています。シート自体は、上から透明のビニル層→色や柄の印刷層→発泡層→不織布層といった異なる素材による積層構造です。
厚みは1.8㎜が一般的ですが、さらにクッション性のよい2.3㎜厚や3.5㎜厚、階下への音を和らげる効果のある4.5㎜厚のものもあります。クッションの役割を担う発泡層があることで、歩行感がいいのが特徴です。
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シートは幅広で長尺のため、コンパクトな空間では継ぎ目なく施工できて、コストパフォーマンスも良好。液体をこぼしても下に浸透せず、水拭きできれいになるので、キッチンやユーティリティ、トイレで多く使われています。
ただ床材としては柔らかいため、硬いものを落としたり、強くこすったりするとキズがついて、そこから汚れが入り込むので注意しましょう。
クッションフロアは、色や柄が豊富なのも魅力。洗面脱衣室のキャビネットの扉の色、トイレの壁紙や手洗器のデザインなどとの組み合わせで、空間のコーディネートを楽しめます。
木目柄のクッションフロアもありますが、天然木のフローリング材とこれを連続させると、素材感の差が大きくてちぐはぐな印象に。連続する空間では、全体としての見え方や素材・質感のコンビネーションを確認しながら、デザインを吟味しましょう。
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意匠性が高く硬くて強い。
「フロアタイル(ビニル床タイル)」
これまでは商業施設や公共施設で使われることが主だった「フロアタイル(ビニル床タイル)」ですが、最近は住宅の床材としても積極的に使われています。
これは意匠性が高く、傷や割れに強い床材。厚みは2.5㎜~3.0㎜が多く、目地材もあります。プレーンなデザインだとどんな素材とも相性が良く、石材調のフロアタイルは本物の石のような臨場感があります。
大きさは30㎝角から45㎝角の正方形が主流ですが、最近は長方形や多角形など、バリエーションが増えています。木目柄のフロアタイルはフローリングのサイズに近いため、敷き詰めると本物のフローリングのように見えます。素材の硬さも見た目に近く、歩いても違和感がありません。
フロアタイルは、1枚ずつ接着剤で下地材に張り込んでいきますので、必ず継ぎ目があります。この建材自体は水に強い材料でつくられていますが、継ぎ目から水が入り込む場合もあります。水などの液体をこぼしたときは早めに拭き取り、水洗いは避けましょう。
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「クッションフロア」と「フロアタイル」は同じプラスチック系の建材ですが、このようにそれぞれに異なる特徴もあります。素材感、機能、デザイン、コストのバランスを考えながら、新築やリノベーションに取り入れてみてくださいね。