新型コロナウイルスの影響で、私たちの家づくりに数々の変化が生まれています。玄関近くの手洗い場、テレワークのための書斎、プライベート感のある庭や半外空間など、安心で快適なおうち時間を送るためのさまざまな間取りの工夫もそうですが、もうひとつ注目されているキーワードがあります。それは「換気」。
「換気」は間取りやインテリアとは違って、つくり手におまかせしがちですが、実はいくつかの方法があり、それぞれに特徴があります。そこで今回は、住宅における換気についてご紹介しましょう。
なぜ「換気」が重要なのか
そもそも、なぜ換気が重要なのでしょう。室外から持ち込まれる各種ウイルスやPM2.5、花粉、室内で発生する揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド、ダニやカビなどによるアレルゲンなど、家の中の空気はさまざまな汚染物質を含んでいます。この汚染物質を室内から外へ排出し、快適な室内環境を確保するために必要なのが「換気」です。
ちなみに日本では、2003年から法律で全ての建造物に「24時間換気システム」が義務付けられています。機械による強制換気で「2時間に1回は、室内の空気を完全に入れ替える」ということですが、その背景には、住まいの断熱・気密性が高まったことによって、汚染物質が室内に留まり、健康に害を与えるケース(シックハウス症候群や化学物質過敏症など)が問題化したことがあります。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに注目を集める「換気」ですが、家づくりでは健康を守るための機能として、必須事項なのです。
機械換気と自然換気
住まいの換気方式には、窓やドアを開けて空気を入れ替える「自然換気」とファンを使って空気を給排気する「機械換気」の2つがあります。
一般的に自然換気は機械換気よりも大きな換気量が期待できます。しかしその分、汚染物質の流入も多くなると同時に、雨や雪、寒さや暑さといった気候条件や防犯面への不安から、換気が適切に行えない場合もあります。その点、24時間換気システムで常に換気していれば、窓を開け閉めしなくても安定した空気の入れ替えができます。
「24時間機械を動かしているのがもったいない」「風を感じて寒い」などの理由で機械換気を止めているという声もときどき聞きますが、これは稼働させていないと意味がありません…。24時間換気システムを稼働させたうえで、人が多く集まったときなど必要に応じて窓を開け閉めして自然換気を促すことで、換気の効果がより高まるでしょう。
給気も排気も機械におまかせ!「第1種換気」
熱交換器との組み合わせも効果的
住宅で用いられる機械換気には主に2つの方式があります。そのうちの一つ「第1種換気」は、給気も排気も機械を用いて換気を行う方式です。機械により家の中に空気の流れをつくることで、窓の開閉の影響を受けにくく、安定して換気できるのが特徴です。
「熱交換器」を設置できるという点も、第1種換気の大きな特徴です。住宅の熱損失の約30%は換気によるロスだともいわれますが、熱交換器は機械の力で、そのエネルギーのロスを大幅に削減してくれます。排気される空気からは熱を回収し、給気される空気は室温に近づけてから室内に給気。一年を通して温度はもちろん、適度な湿度も維持しやすくなります。その点で省エネで、快適な住環境を維持しやすい換気方法だといえるでしょう。
ただ第1種換気は、給気側と排気側の両方にファンを設置する(熱交換換気にする場合は別途設備を追加)など、導入に際してある程度の費用がかかるとともに、ランニングコストのほか、給気口のフィルター掃除や交換、熱交換器の交換など、定期的なメンテナンスの手間と費用についても考慮する必要があります。
排気のみを機械で行う「第3種換気」方式
確実な換気効果のためには、高気密化が大前提
第1種換気は給気・排気とも機械ですが、第3種換気は、排気のみ機械を使う方式です。機械を使って室内の空気排出することで、家の中の空気圧をマイナスにして、自然給気を促します。自然給気と強制排気という仕組みは内部結露が起きにくく、北海道のような寒冷地でも多く採用されている換気方式です。また第1種換気のような設備費がかからず、低コストで効果的な計画換気が可能なのも魅力です。
給気を自然給気で行う第3種換気方式は、給気量が住宅の気密性能の影響を多く受けます。C値(気密性能を表す数値。低ければ低いほど隙間が少ない)1.0程度の高気密住宅であっても、室内に入る空気の半分は給気口で、残り半分は隙間から、というほどで、第1種換気よりも第3種換気のほうが計画換気を機能させるのが難しいという側面があります。ただ断熱・気密性能がしっかりしていれば、第3種換気でも十分に計画換気は機能しますので、高性能住宅を正しく施工する技術力の高い建築会社を、家づくりのパートナーに選ぶことが重要だといえるでしょう。
繰り返しになりますが、換気は快適かつ健康な室内環境を確保するための重要なファクターです。家づくりの際は、新居の気密性能のことも含め、設計士や建築会社ときちんと相談して、適切な換気方式を選びたいですね。
(文/Replan編集部)