いごこちの科学 NEXT ハウス

さらなる省エネ・省CO2が住宅の重要なテーマとなる寒冷地。 本企画は、独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、東京大学の気鋭の研究者・前真之准教授に、「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について解き明かしていただきます。 シーズン1に続く第2弾として2015年からは、それまでの連載の発展形「いごこちの科学 NEXT ハウス」としてリニューアル。
「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から寒冷地における室内環境の改善ポイントを解説しています。東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻・准教授 前 真之 (まえ・まさゆき)東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻・准教授
前 真之 (まえ・まさゆき)


1階建ての戸建て住宅である「平屋」の話題を聞くことが増えてきました。階段がなく長く住みやすいコンパクトなプラン構成、癒やしの空間である庭とつながりやすいことなどが平屋人気の理由のようです。平屋はとても魅力的ですが、2階建てとは断熱のポイントも違ってきますし、なにより条件の良い敷地を手に入れられるかが肝心になります。イメージどおりの平屋ライフを実現するポイントを、一緒に考えてみることにしましょう。

平屋人気は本物。すでに新築戸建ての1割以上に

戸建て住宅を手がける設計者や工務店の方とお話ししていると、平屋人気はよく話題になります。特に土地の面積に余裕がある地方ではかなり増えているようです。

写真 里山の平屋暮らし(設計:伊礼 智、施工:柴木材店)
写真 里山の平屋暮らし(設計:伊礼 智、施工:柴木材店)

図1に、国土交通省の統計データから、新築住宅の階数別推移を示しました。戸建て全体に占める平屋の割合が、2012年には6.9%であったものが、2019年には10.7%と1割を超えています。すでに2割を超えた地域も多く、九州の一部では約半数が平屋となっています。どうやら、平屋が人気なのは本当のようですね。

<b>図1 新築住宅の新規着工戸数(階数別)</b><br>出展:国土交通省 建築着工統計調査 ~15階の居住専用住宅</b></b>
図1 新築住宅の新規着工戸数(階数別)
出展:国土交通省 建築着工統計調査 ~15階の居住専用住宅

「階段のないコンパクトな間取り」と「庭」が平屋人気の秘密

なぜ平屋が人気になっているのでしょうか。ハウスメーカーの調査によると、平屋を選ぶ理由として「階段がない」「ワンフロア」「コンパクトな間取り」「庭が楽しめる」といった項目が上位にきました。せっかく家を建てるのなら、老後まで長く住みたい。将来を見据えた家づくりが広がる中で、歳をとるにつれ負担になる階段がなく、庭にも簡単に出入りできる1階だけのコンパクトな平屋が人気になるのも納得です。

平屋はバリアフリー化が容易で長く住み続けられるプランにするのにとても有利ですが、2階建てに比べると不利な部分も少なくありません。ずっと住みやすい平屋にするために、冬を暖かく過ごすためのポイントを、これから見ていくことにしましょう。

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