良く管理された工場で作られた薪ストーブは、何十年も使い続けられる長寿命な暖房機器です。でもそれは、正しく使っていればの話。ストーブの扱い方はもちろん「薪」のことをちゃんと理解して使う必要があります。そこで今回はサカシタペチカの代表、坂下雅徳さんに、薪の選び方と焚き方のコツを伺いました。
針葉樹を燃やすのは、絶対にNG?
日本では一般的に、薪ストーブでスギやマツなどの針葉樹を燃やすのはNGとされています。ですが、例えば薪ストーブが広く普及している北欧では、針葉樹の森が多くて広葉樹の薪の入手が難しいこともあり、日常的に針葉樹を焚いています。以前、デンマークの王室御用達薪ストーブメーカー・モルソー社の社長に、「日本で針葉樹を燃やしてはいけないことになってるのは、なぜ?」と聞かれたこともあります。
薪ストーブはどんな樹種でも燃やすことはできますが、すべての薪が同じ状態で燃えるわけではありません。薪として針葉樹が推奨されないのには、理由があります。それは、広葉樹に比べて密度が低くて燃えやすく、一気に温度が上がることでストーブを傷めやすいからです。北欧では、薪ストーブは傷んだら買い換える消耗品とされているようですが、日本ではオーバーホールをして使い続ける方が多いですね。ストーブを長く使うためにも、針葉樹を焚く頻度は少ない方がよりいいでしょう。
薪には、長い時間じっくり燃える固い木がおすすめ
日本で薪として一番メジャーなのは、やはりナラです。固い木で、上手に熾(おき:赤く熱した炭火の状態)にすることで、火持ち良く焚くことができます。ナラよりも数は少ないですが、イタヤカエデもいいですね。材にもよりますが、ナラよりも固く、じっくりと燃えてくれます。シラカバも良く使われますが、皮に油分が多いので、着火剤代わりにもなります。薪としては、あっという間に燃え尽きてしまいます。ナラを使っていたお客様がシラカバを使った時には「お金を燃やしているみたい…」と嘆かれたことも…。一気に燃えやすいシラカバや針葉樹は、小割りにして、焚付けや、焚き始めに使うのがおすすめ。その意味では、建築の端材も活用できますよ。
長年、薪ストーブと過ごしてきましたが、薪の種類によっても炎の感じが違います。堅い木を燃やすと炎がよりシャープな感じ、柔らかい木は燃えるのが早いからか、ソフトな感じがします。炎を見ていても飽きることがないのは、二つとして同じ炎を見ることがないからなのでしょうね。
大事なのは、しっかり乾燥させた薪を、適正な温度で燃やすこと
上手な薪ストーブとの付き合い方。それはとにかく「しっかり乾燥させた薪」を「適正な温度で燃やす」ということです。薪の乾燥が悪いと、炉内で発生したエネルギーが薪の水分を飛ばすために使われて、暖かさが半減。また、クレオソート(木から出る油状の液体)が多く発生して、ストーブの炉内が汚れ、煙突が詰まりやすくなってしまいます。
薪ストーブの着火の際には、焚付けや太い薪を多めに使って勢いよく燃やすのが、効率の良い燃やし方のコツ。「薪がもったいない」と低い温度でぶすぶすと燻らせて焚くと、薪ストーブが温まりませんし、煙や臭いが出やすくなって、ご近所からのクレームの原因にもなりかねません。
小割りにした薪を足しながら、より早く熾(おき)を作って、徐々に大割りの薪が焚ける環境を作っていきましょう。ストーブにもよりますが、だいたい250〜300℃前後をキープできるようになると、安定した暖かさが得られます。温度管理が難しいストーブの場合は、温度計を適正な場所に置いて、こまめにチェックすることが大事です。
わからないことは早めに身近な薪ストーブの専門家に確認し、健やかな薪ストーブ生活をお送りください。
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