先日の記事「祖母や兄弟姉妹も一緒に暮らす。二世帯住宅の間取り集」では、複数の世代が同居する立体的な暮らしの3事例を紹介しましたが、今回見ていくのは、二世帯住宅の代表格ともいえる「同居型二世帯住宅」です。
同居型の特徴は、共有スペースが多いこと。お互いにストレスが少なく使いやすい間取りプランにすることが重要です。
暮らし方の工夫が必要な一方で、キッチンや水まわりなどエネルギー消費が多い設備を共有するため、イニシャルコストやランニングコストが抑えられるのが大きなメリット。祖父母という世代の異なる大人と過ごす時間が増えるのも、お子さんが育つ環境として好影響があるかもしれません。
今回は、同居型の中でも特に一般的な「玄関」「水まわり」「LDK」は2つの世帯で共有しつつ、プライベート空間を上下で分けた二世帯住宅の3実例をご紹介。メリットをどう生かしたのか、そしてデメリットをどう克服したのか。ご家族の暮らしに合わせた住まいの工夫にご注目ください。
※掲載方法の都合上、図面の縮尺は一定ではありませんので、ご了承ください。
共有スペースは広めで開放的。
プライベートスペースはかぶらないように配置
■家族構成/夫婦40代、子ども1人、父
3人家族の子世帯とお父さんの4人で同居するFさん宅。広くゆったりとした玄関ホールには、正面にリビングへ続くドア、左側はシューズクロークからキッチンへ。そして右側にはお父さんの居室の入り口と、3方向に動線が広がります。共有スペースとなるキッチンやリビングは広めに計画。吹き抜けのあるリビングは家族みんなが集まっても開放的です。
お父さんのスペースはトイレ・浴室など水まわりを近くに配置。また、LDKの上にのみ、子世帯の個室などの生活スペースがあるので、お父さんの寝室と和室には2階の生活音が響かないようになっています。それぞれの世帯の暮らしやすさや日常の快適さに配慮したプランニングが印象的な住まいです。
■設計・施工/無添加あいの家(有)あい建築事務所
<Replan福島 vol.4 掲載>
広い中庭を囲む居住空間の配置で、
程よい距離感とプライバシーを確保
■家族構成/夫婦30代、子ども2人、両親
Oさん宅はご夫妻と2人のお子さん、ご両親が同居する6人家族の住まい。二世帯住宅の建築にあたり、仕事で忙しいご家族には、早朝・深夜もお互いが気兼ねしないよう「親世帯と子世帯の距離感」に配慮する必要がありました。
そこで1階は中庭を囲むような間取りとし、両親の寝室はリビング・ダイニングおよび共用の水まわりと対角の位置に配置。2階の子世帯とも距離を確保することで、お互いの生活音はまったく聞こえないといいます。
リビングと同じぐらいの広々とした中庭は、1階と2階にたっぷりと光と風を採り込み、物理的な距離感を縮めて家族の一体感を高めてくれます。2つの世帯をつなぐ中庭の眺めもお気に入りで、忙しい毎日に癒しと潤いを与えてくれているようです。
■設計・施工/(株)建舎団居 STUDIO MADOI
<Replan東北 vol.66 掲載>
使い勝手を重視した農家住宅。
多くの空間を共有しながらも独立性を確保
■家族構成/夫婦40代、子ども2人、父
米農家の後継者であるTさん。町内で別居していましたが、実家の老朽化が進み、お父さんと同居できる二世帯の家づくりを決めました。お父さんもまだまだ現役で元気に農作業をしており、訪ねてくる友人も多いことから、二世帯といっても「親の面倒を見る」のではなく「空間をシェアする」という感覚で新居は設計されました。
まず、子世帯の個室などはすべて2階に集約、子世帯とお父さん共用のLDKが1階にあります。そして、同じ1階に農作業姿でもそのまま入れる裏玄関や、水まわりの近くにお父さんの居住空間が配置されています。お父さんのスペースにも、ミニキッチンを備えたコンパクトなリビングがあり、いい距離感を保てる二世帯住宅となっています。
■設計・施工/(株)芦野組
<Replan北海道 vol.118 掲載>
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(文/Replan編集部)
こちらも併せてご覧ください↓
・祖母や兄弟姉妹も一緒に暮らす。「多世帯住宅」の間取り集
・お隣さんのような感覚で一緒に暮らす。「分棟型二世帯住宅」の実例集
・実例に学ぶ。「上下完全分離型」二世帯住宅の間取りと家づくりの工夫
・3タイプの違いは何?各二世帯住宅のメリット・デメリットと間取り集
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