最近のリプランの取材先では、子育て世代の家族と親世帯が一緒に暮らす「二世帯住宅」の例がちらほら見受けられます。「親との同居」は、家づくりの選択肢のひとつ。親世帯・子世帯の双方が自立しながらも、建築コストを抑えられる、子育て・介護などの協力し合えるといったメリットから、同居を選ぶご家族がいます。
メリットの一方で、プライバシーの確保や生活騒音の問題など、考慮しなければならない部分も多い多世帯住宅では、複数の世帯がバランス良く暮らすためのプランニングが重要です。取材先のお住まいでも、その家族ならではの工夫やこだわりがあります。
Replan北海道vol.130(9月29日(火)発売)とReplan東北vol.70(10月21日(火)発売)の巻頭特集は「新しい二世帯住宅のカタチ」。そこで今回は、祖母や兄弟も一緒に暮らす「同居型多世帯住宅」の実例を見ていきましょう。
※掲載方法の都合上、図面の縮尺は一定ではありませんので、ご了承ください。
3世代の同居を前提に。
建て替えで実現した農家住宅
■家族構成/夫婦60代、息子夫婦20代、母
代々農業を営んできたNさんご一家。お母さんと、後継者となる息子さん夫婦との同居を前提に、住まいの建て替えを決意しました。80代のお母さんが今までどおりに生活できる環境づくりを最優先に、家事効率が良く、家族みんなが快適に過ごせる多世帯住宅を完成させました。
3世代が集まる新居1階のリビングは、高い吹き抜けと化粧梁、薪ストーブが開放的な雰囲気をつくり出しています。キッチンもみんなで作業がしやすいよう広さを十分にとり、土間仕様の広々とした食品庫も備えました。
1階にある共用の水まわりとトイレ以外に、2階にも洗面所とトイレを別途設置。共用の造作本棚や書斎コーナーを設けるなど、大家族の共同生活に配慮したさまざまな工夫がなされています。






■設計・施工/武部建設(株)
<Replan北海道 vol.125 掲載>
姉妹を中心に、母とお子さんが同居。
5人家族のシェアハウス
■家族構成/姉50代、妹40代、子ども2人、母
十数年前、Tさんがまだ幼かった2人のお子さんを連れて実家に戻って以来、Tさん家族は姉のHさんとお母さんが住む実家の隣にあった借家に住み、一つ屋根の下に暮らすように互いに行き来していました。建物の老朽化もあり、実家の建て替えを決意。「家族が一緒にいるのが日常そのもの」だったご家族は、建て替えにあたっても、ごく自然に5人の同居が大前提になっていました。
姉妹、そのお子さんたち、そしてお母さん。5人の家族が暮らす新居は、吹き抜けのあるLDKと水まわりが共用。1階にTさんとお母さんの寝室、2階にHさんと、Tさんのお子さんたちの寝室をレイアウトしました。4畳半の各個室には集いの空間に面して開口が設けられ、家族はいつも互いの気配を感じながら暮らしています。



■設計/アーキラボ・ティアンドエム
■施工/(株)剛建築工房
<Replan北海道 vol.123 掲載>
兄を家族みんなで見守り、暮す。
多世帯同居のバリアフリー住宅
■家族構成/夫婦50代、両親、兄
Mさんご夫妻が、築50年の実家の建て替えを考えていたころ、ご両親と暮らしていたお兄さんが病に倒れ、入院。「車いすが必要になった兄をみんなで見守り、暮らしたい」というご夫妻の希望のもと、建て替えによる多世帯同居がスタートしました。
新居は、お兄さんの居場所を住まいの中心に、共用のLDKとご両親の寝室を1階に配置。段差や温度差のないバリアフリーの室内環境を実現しています。Mさん夫妻の居住スペースへは2階に設け、階下の様子が自然に伝わるよう、吹き抜けでつなぎました。すべての家族が心地よく過ごせる仕掛けが随所に施された、各々の暮らしや年齢、身体の変化にもしなやかに寄り添うカタチの多世帯住宅です。





■設計/アウラ建築設計事務所
■施工/(有)タニグチ
<Replan北海道 vol.124 掲載>
9月29日(火)発売の最新号「Replan北海道vol.130」と10月21日(火)発売のReplan東北vol.70では、さらにいろいろなケースの二世帯住宅をたくさんご紹介していますので、そちらもぜひご覧ください!バリエーション豊かな各プランを参考に、自分たちに合う理想的なカタチを考えてみてください。
(文/Replan編集部)
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・ほどよい距離感をつくる。「同居型二世帯住宅」の間取り集
・実例に学ぶ。「上下完全分離型」二世帯住宅の間取りと家づくりの工夫
・お隣さんのような感覚で一緒に暮らす。「分棟型二世帯住宅」の実例集
Replan北海道 vol.130
2020年9月29日(火)発売
北海道内の主な書店やコンビニのほか、
Replanの販売ページやamazon、fujisan等
オンラインでもご購入いただけます。