今回は、家づくりで知っておきたい!「色」の基本 【1】の続き。前の記事でご説明した色に関する基礎知識をもとに、「感じる色」の具体例をご紹介していきます。

色が伝える「温度」の感覚

「暖色」「寒色」といった言葉があるように、色は温度の感覚を伝えます。以前、 同柄の色違いの壁紙で1階と2階のトイレをコーディネートしました。1階はクリーム色、2階は空色です。

竣工検査で現場を見ると、クリーム色の壁紙の1階トイレは思ったとおり、やわらかで明るい感じがしました。続いて2階へ上がりトイレのドアを開いてびっくり!空色の空間から、ヒンヤリした空気が流れてきます…というか、そのように感じました。もちろん、2階トイレだけ暖房を切っていたわけでもありません。色による温度感覚を実感した出来事でした。

温度を感じる暖色の「赤」と寒色の「青」
温度を感じる暖色の「赤」と寒色の「青」

赤や橙や黄は暖かさを感じる「暖色」、青や青紫は涼しさや冷たさを感じる「寒色」と呼ばれています。夏は暑さを感じるオレンジが冬には程よい暖かみを持って感じられたり、夏には涼やかに感じるブルーが冬には寒々しく感じられたり、季節によっても色の温度感は違います。アクセントウォールで「暖色」や「寒色」といった温度を感じやすい色を使う際には、面積効果(詳しくはこちらの記事を参照)や色の映り込みも考慮して選びましょう。

マイルドな暖色のピンクを子ども部屋のアクセントウォールに。
マイルドな暖色のピンクを子ども部屋のアクセントウォールに
グリーンがかったブルーのタイルは木の色と相性が良く、冷たい感じもあまりしない
グリーンがかったブルーのタイルは木の色と相性が良く、冷たい感じもあまりしない

なおインテリアでは「彩度」が低い色は温度感よりも、質感や雰囲気の印象がより強く感じられます。赤みや黄みを含む「アイボリー」や「ベージュ」は暖色系で温もり感がありますが、それ以上に「やわらかさ」や「落ち着き」を強く感じさせます。

一方、青みを含む明るいグレーは寒色系ですが、コンクリートやガラス、ステンレスなどと相性が良く、硬質でスマートな印象を強く与えます。色の温度感も考慮に入れつつ、色彩と素材の多様な感覚をインテリアに生かしたいところです。

明るいグレーは、コンクリートやガラス、ステンレスなどの素材と相性が良く、スタイリッシュな雰囲気をつくりやすい
明るいグレーは、コンクリートやガラス、ステンレスなどの素材と相性が◎

色に左右される「広さ」の感覚

色は「空間の見え方」にも作用します。同じ面積でも、色によって広く見えたりコンパクトに見えたりするのです。一般的に暖色系は大きく見える「膨張色」、寒色系は小さく見える「収縮色」とされていますが、インテリアでは、明るい色調(高明度)の空間は広く感じ、 暗い色調(低明度)の空間はこもり感が強まるという特徴があります。

白を基調とした空間は広い印象を与える
梁、柱、床板、建具は親戚宅から譲り受けたものをパズルを組み合わせるように使用
濃く暗い色の内装はこもり感が強まる

極端な例ですが、以前「真っ白な内装の空間」と「真っ黒な内装の空間」を見たことがあります。高明度の真っ白な家は距離感がつかみにくく、空間が広がっていくように感じます。ふわふわと浮き上がるような浮遊感も出てきます(家具があると不安定さは若干解消されるようですが…)。一方の床・壁・天井とも黒い空間は、重量感や圧迫感、閉塞感が強く実際よりも室内が狭く感じました。

床の色→低明度(例えば、木のフローリング)、壁・天井の色→高明度(例えば、白やアイボリーの壁紙、塗り壁)という極めてオーソドックスな住宅インテリアの法則は、実は安定した感覚で心地よく暮らす空間の基本なのです。

白い漆喰壁の内装
白い壁・天井+茶色のフローリングという一般的な仕様は、心地よさを感じる色の組み合わせとして理にかなっている

色が伝える「重さ」の感覚

色は「重さ」の感覚にも訴えかけます。明るい色は軽く感じ、暗い色は重く感じる。これを「色の軽重感(けいじゅうかん)」と呼びますが、これは心地よい住空間をつくるための大切な色彩感覚です。

特に木質系の床材は、長い時間をかけて生活に馴染んできた素材です。材種によって色相や明度は違いますが、カーペットや石材などを床に用いる場合も、木質系床材の色を基準にすると選びやすいでしょう。

ブラウン系の色味のタイルは、木との相性が良くインテリアをコーディネートしやすい
ブラウン系の色味のタイルは、木との相性が良くインテリアをコーディネートしやすい

壁・天井の色は、白やアイボリーといった高明度・低彩度色が一般的ですが、空間の広さや形状、用途によっては全体を中明度の壁紙で仕上げたり、個性的な壁紙のアクセントウォールを用いたりしても素敵です。

広いLDKの空間にメリハリを持たせるため、天井の一部に暗い色の壁紙を張る、または木質パネルであえて重さを感じさせる演出をするなどして、変化をつけるのも一考です。「色の軽重感」を上手に取り入れて心地よい空間をコーディネートしましょう。

天井の一部に木を用いた設計のダイニング・キッチン。寄木細工のような意匠が空間に上質感をプラス
天井の一部に木を用いた設計のダイニング・キッチン。寄木細工のような意匠が空間に上質感をプラス

このようにインテリアの色は無意識のうちに、人の心にさまざまなかたちで作用しています。基本的には自分たちが「好きだな」と思う色や物に囲まれているのが一番ですが、家づくりは選ぶ物事が多く、色選びに迷う機会も多いでしょう。そんなときは、今回ご紹介したような「色が人に与える効果」を踏まえて検討してみてはいかがでしょうか。

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