さらなる省エネ・省CO2が住宅の重要なテーマとなる寒冷地。 本企画は、独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、東京大学の気鋭の研究者・前真之准教授に、「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について解き明かしていただきます。 シーズン1に続く第2弾として2015年からは、それまでの連載の発展形「いごこちの科学 NEXT ハウス」としてリニューアル。
「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から寒冷地における室内環境の改善ポイントを解説しています。東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻・准教授
前 真之 (まえ・まさゆき)
気温が高くなっても収束しない新型コロナウイルス。社会全体が息苦しく、経済への影響も深刻化する中、家族で助け合って暮らしていくことが以前にもまして大事になってきているのかもしれません。今回は、複数の家族が一緒に暮らす「二世帯住宅」をテーマに、暮らしとエネルギーの関係を考えていきましょう。
親と子の住まいの距離
親世帯と子+孫世帯が一緒に住んでいる「3世代世帯」は約300万世帯で、全5300万世帯中の5.7%となっています(国勢調査2015)。図1に国交省の調査から、世帯主と子の住まいの距離(子の居住地)を示しました。
中年の世帯主では、若い夫婦と子どものいわゆる核家族が主でしょう。高齢の世帯主のうち、「子世帯と一緒に住んでいる」人たちは4割程度であり、この一部が二世帯住宅に居住していると推測されます。この同居以外に「徒歩5分程度」「片道15分未満」まで含めれば、親世帯の半数は子世帯の近くに住んでいるものと思われます。
子との同居希望は減少中
高齢の親世帯とその子世帯は意外と近くに住んでいるようですが、同居したいかは別問題です。国交省の調査より、「自分が高齢期になった時に子と一緒に暮らしたいか」の質問への回答を図2に示しました。
「子と同居する」と回答した人は年々減少傾向であり、最新の2018年の調査では1割程度で、「特にこだわりはない」と答えた人が3割を超えています。ただし「その他」には子どもがいない世帯を含むので、子世帯の近くに住みたいと思う親世帯は半数程度と思われます。
プライバシー確保は課題だが、二世帯住宅にはメリットも
プライバシーが重視されるようになる中、同じ屋根の下で親世帯と子世帯が暮らすには、色々と注意点がありそうなことは容易に想像されます。
一方で、二世帯が一緒に暮らすことにはメリットもあります。2軒の家を1軒にまとめることで建設にかかるコストも削減できますし、空間にゆとりを持たせることもできます。子育てや介護を相互に助け合うことができるのはもちろん、広々とした共有空間とプライベートな個室空間を上手に分けて設計すれば、日々の生活を楽しくすることが可能です。
また共住して空間や環境をシェアすることで、エネルギー消費量や水道光熱費の削減につなげることも可能です。この点については、後半で詳しく見ていくことにしましょう。
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