今は夏の盛り。汗ばむ陽気で、薪ストーブの炎のことを考えるのはちょっと抵抗があります(!)が、年末や来春の竣工に向けて、薪ストーブのある家づくりを検討中の方もいらっしゃることでしょう。
一般的に薪ストーブは新築時に導入するケースが多いですが、条件さえ整えば「リノベーション」で憧れの炎のある暮らしを叶えることもできます。そこで今回は、リノベーションをきっかけに薪ストーブを暮らしにとり入れた3軒のお住まいをご紹介しましょう。
空き家だった平屋をリノベーション。
モルソーの薪ストーブと暮らす
転勤族だったKさんご一家は、アパート暮らしが長くて平面への憧れもあったことから「家を建てるなら平屋に」と考えていました。やがて見つけたのは、しばらくの間空き家だったという平屋。予算や補助金のことをトータルに考えてリノベーションを選択し、Kさんの念願だった薪ストーブを導入することにしました。
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選んだのは、シンプルながらも佇まいに存在感のあるモルソーの薪ストーブ。「毎朝誰よりも早く起きて、薪をくべています」と、Kさんはすっかりその魅力の虜です。
薪ストーブは、南北の庭をつなぐ「通り土間」に設置されていて、外からの薪の搬入もスムーズ。薪から出る木くずやストーブからこぼれ落ちる灰などの掃除がしやすいのも、土間に薪ストーブを置くメリットです。奥さんの要望でセレクトしたという札幌軟石の炉壁が白い壁と無垢フローリングにやさしく調和して、インテリアとしても素敵ですね。
家の中央部の天井が大胆に開いていて、木造の小屋組みや軽量鉄骨の構造が現しになったリノベーションならではの意匠も、このお住まいの特徴です。屋根断熱を施しているため断熱性能は十分。部屋が天井を介してつながっているので、暖気が各部屋に行き渡り、冬も薪ストーブ1台で暖かく過ごせるそうです。
せっかく薪ストーブを入れても、室内が肌寒かったり、部屋によって暖かさのムラが大きかったりすると、その持ち味が半減してしまいます。このお住まいのように薪ストーブの熱を効果的に活用できる温熱環境の設計も、リノベーションのプランニングに欠かせないポイントのひとつです。
大規模減築リノベーションで
玄関土間に薪ストーブのある暮らし
昭和40年代に建てたというAさんのお住まいは、小屋裏を含めた3階建ての2世帯住宅でしたが、90歳を過ぎたお母さんの施設への入所を機に、将来を見据えて住まいを見直すことに。基礎と土台の一部だけを残した大規模なリノベーションに踏み切りました。
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完成したお住まいは、2階を大幅に減築して延床面積がコンパクトになりました。玄関ドアを開けるとゆったりとしたホールがあり、その先に4.5帖の洋室と既存の玄関スペースをつなげてつくった広い玄関土間が現れます。
玄関土間の一角に置かれているのは、装飾が施されたヨツールの薪ストーブ。奥さんが趣味で制作しているステンドグラスや、温かみのある木をふんだんに使った内装と相まって、ご家族にやすらぎの時間をもたらしています。
玄関土間に薪ストーブを置くのは、今や薪ストーブのある家では定番の間取り。玄関の外に薪棚があるお住まいだと特に、薪を搬入する動線がスムーズで使い勝手が良いのが利点です。
生まれ変わった家のなかでAさんのお気に入りは、なんといってもこの玄関土間。「薪をくべたり、炎を眺めたりと、1日のなかでここにいる時間が一番長いかも」と、念願だった薪ストーブライフを満喫しています。
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奥さんの希望で実現。
家族の時間を育む薪ストーブ生活
Iさんご夫妻は、中古住宅を購入して段階的に手を入れていましたが、照明を替えていて気づいた天井の汚れがきっかけで、本格的なリノベーションに踏み切りました。「薪ストーブを入れたい」と希望したのは奥さん。新築した娘さんのお友だちの家で見て、家にも欲しいと思ったといいます。
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薪ストーブに薪をくべて家族で火の温もりに憩う冬の夕暮れ時。ストーブの上で煮込み料理の鍋がコトコト音を立て、熾火で焼いたピザが食卓を彩る…そんな心豊かな家族の暮らしを思い描き、LDKの真ん中にモルソーの薪ストーブを配置しました。
リビング階段の吹き抜けを生かしたいというのは、Iさんの要望です。「吹き抜けに長く伸びる煙突が熱を2階へ運んでくれるので、暖房効率も良くなりました」といい、ストーブの質の良い暖かさや炎の美しさといった魅力に、すっかり取り憑かれている様子。冬の夜は毎日、チェアに座ってくつろぎながら薪ストーブの炎を眺めて過ごしているそうです。

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
薪ストーブ生活のなかでは、思いがけないことも。「外に置いてある薪を暖かい屋内に持ち込むと、薪の中に隠れていた虫が目を覚まして出てくることがあって…。初めは驚いていましたが、薪を燃やすのは毎日のことですし、慣れちゃいましたね」と奥さんは笑います。
休日には思い描いたイメージどおり、家族みんなでピザを焼いたりして薪ストーブのある暮らしを楽しんでいるIさんご一家。リノベーションをきっかけに始めた薪ストーブのある暮らしが、ご家族のおうち時間を暖かく包んでいます。

リノベーションで薪ストーブを導入する際には、煙突を施工するために新たに屋根や壁に穴を開ける必要があったり、防火対策を講じたりと、法規に則って安全に安心して暮らすための正しい設計と施工が欠かせません。
リノベーションで薪ストーブのある家づくりをお考えの方はぜひプランニングの前に、薪ストーブの施工に詳しい建築会社や薪ストーブ専門店に相談してみてくださいね。
(文/Replan編集部)