家づくりで欠かせないものはたくさんありますが、そのひとつがカーテンやブラインド、シェードなど窓まわりに付ける「ウィンドウトリートメント」です。プランニングでは後回しにされがちな存在(!)ながら、実用的にもデザイン的にもかなり大きな役割を果たします。そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、カーテンに代表される「ウィンドウトリートメント」についてお話いただきましょう。
意外と浅い、日本のカーテンの歴史
日本のカーテンの歴史は明治時代とともにスタートしました。でも、一般住宅に付けられるようになったのは第二次世界大戦後、今から70年ほど前のことです。建物の洋風化とともに窓まわりは障子からカーテンへと移りました。今はカーテンのほか、シェードやロールスクリーン、ブラインドなど窓の形状や使い勝手に合わせた製品が住宅の窓まわりに用いられています。
種類豊富な「ウィンドウトリートメント」
一般的に「カーテン」や「ブラインド」と呼ばれる製品などで窓を覆うことを「窓のしつらい」の意味で、「ウィンドウトリートメント」と呼びます。窓からの熱や光、音、視線をコントロールするとともに、インテリアとしても存在感が大きく、快適な住空間を「機能」と「デザイン」の両面からサポートする、住まいに欠かせないインテリアアイテムです。
ウィンドウトリートメントの種類は素材によって大きく2つに分けられます。ひとつは生地を縫製したもの、もうひとつは金属や木、プラスチックなど布以外の素材でつくられたものです。
私たちに最も身近な「カーテン」は生地を使った代表的な製品です。厚地のカーテンを「ドレープカーテン」、透け感がある薄地のカーテンを「レースカーテン」と呼び、レールから吊り下げて左右に引いて開閉します。
また生地を上下の動作で開閉する製品としては「シェード(ローマンシェード)」や「ロールスクリーン」があります。「シェード」は布をたたみ上げるように開ける製品で、カーテンとお揃いでコーディネートしやすいのが特徴です。プレーンシェードやバルーンシェードなど、さまざまな種類があります。
一方「ロールスクリーン」は、巻き上げるように開けるタイプ。使える生地の厚みや織り方に制限があるため既製品を使うケースが多いですが、開けたときに窓まわりをよりすっきり見せることができます。色柄のバリエーションも豊富です。
金属や木、プラスチックをメイン素材とする「ブラインド」は、スラット(羽)の角度によって光の量を調整できるのが特徴です。
よく知られている「ベネシャンブラインド(横型ブラインド)」のほか、近年ではビルの大きな窓でおなじみの「バーチカルブラインド(縦型ブラインド)」が住宅用に開発され、すっきりとしたシンプルな意匠性を重視したい住宅で採用されるケースが増えています。また厚地の生地とレースを組み合わせた「プリーツスクリーン」も、外からの光と視線をコントロールしやすいので住宅では使い勝手が良いですね。
ウィンドウトリートメントの役割 1
夏の暑さ・冬の寒さ対策
カーテンはもともと防寒対策として誕生しました。まだ窓にガラスが入っていない時代、ベッドに天井を付けて、周囲を厚い布で覆ったのがカーテンの始まりです。優雅なお姫様ベッドのイメージが強い、いわゆる「天蓋付きベッド」ですが、実は防寒対策や音やプライバシーの問題などの解決といった極めて実用的な理由からつくられたものでした。
窓にガラスが使われるようになり、カーテンはベッドまわりから窓へ移動しました。カーテンで窓からの冷気を遮断し、部屋全体の防寒をするためです。現在は窓ガラスの性能がずいぶんと向上して、冷暖房の効率がとても良くなっていますが、カーテンやブラインドなどが1枚加わることで、1年を通してさらにエネルギーの損失を抑えられます。
最近は北国でも真夏日が増えていますが、暑さ対策として「遮熱レースカーテン」を付けると窓からの熱を和らげることができます。ただ生地の性質上、レース特有の透け感に乏しく、外の景色が見えにくいものが多いので、よく吟味して選んでくださいね。
ウィンドウトリートメントの役割 2
光と視線のコントロール
光と外からの視線のコントロールも、ウィンドウトリートメントの大きな役割です。レースカーテンや不織布、和紙などを透過する光は柔らかく穏やかな雰囲気をつくりつつ、外からの視線を緩やかに遮ってくれます。
射し込む光の量を調整する機能、という点で最も優れるのはベネシャンブラインドです。ベネシャンブラインドの発祥については諸説ありますが、イタリアのベニスで多く使われたことが名称の由来です。水路を行き交う船からの視線を遮り、日射しや水面からの光の反射を調整するブラインドはとても使い勝手が良かったのでしょう。スラットの角度で室内に光をとり込むことができ、不要なときは光を遮る。この操作と機能のシンプルさがロングセラーの所以です。
昼間は外が明るくて室内が暗いため、ブラインドやレースカーテンで十分に外からの視線を遮ることができます。外の人通りが気になる窓には光を透過するウィンドウトリートメントを施すと、安心感があります。
ただし夕暮れ時、あかりが灯る頃になると、室内のほうが照らし出されます。レースカーテンからドレープカーテンにバトンタッチ!の時間です。ブラインドの場合は、カチッと音がするまでしっかりスラット(羽)を閉じないと、細い隙間から家の中が見えてしまうことも…。注意しましょう。
ウィンドウトリートメントの役割 3
室内空間を彩るインテリア
先に触れたように、インテリア性もウィンドウトリートメントの大きな魅力であり役割です。窓の大きさに応じた面積を占めるので、色や柄によってはかなり存在感が出ます。特に掃き出し窓まわりのカーテンやシェードなどは、夜には大きな壁のようになりますので、鮮やかな色調や大胆な柄を選ぶとかなりインパクトがあり、昼間とはまた異なる部屋の雰囲気を楽しめます。
インパクトがあるデザインの場合、選び方には注意も必要です。例えば壁や天井の仕上げが白の室内に、濃い茶色やグレーなどのダークトーンのカーテンやシェードを合わせると、空間が重い印象に変わります。また光沢のある生地だと、照明の光によって自然光で見ていたのと違う予想外の輝きを放ったり、急に柄が浮き上がったように見えたりすることがあります。
窓まわりの演出には、ボリューム感(面積)や色柄、素材感のバランス、床・壁・天井など内装仕上げ材や家具との調和が重要です。決して安い買い物ではありませんので、ショールームなどで生地の実物を見て慎重に選びましょう。
カーテンなし生活の思わぬストレス?
最近は、自然に囲まれた土地に家を建てたり、コートハウスにしたりすることで、外からの視線を気にせずカーテンなしの暮らしを楽しむ方も増えていますが、日暮れ後に室内から外を見ると、窓が「鏡」になって人や物が映り込みます。
特に人の動きは気になるもの。実際、憧れのカーテンなし生活を始めたものの、窓への映り込みにストレスを感じて、結局カーテンを後付けした、という方もいらっしゃいます。暮らしてみないとわからないですが、窓に映る人の気配は緊張感を伴うので、何か1枚遮るものがあった方が落ち着く、という場合もあるかもしれません。
ウィンドウトリートメントは、家づくりではあまり重視されなかったり、後回しにされてしまったりすることも多いのですが、実は住まいの機能や雰囲気に大きく影響します。プランニングの際には、ぜひ設計士やインテリアコーディネーターに相談して、ウィンドウトリートメントまで含めてお住まいを計画してくださいね。
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