北海道に住んでいると見慣れた街並みも、道外から来た人には「ん?何か雰囲気が違う」と感じられることが。その大きな理由の一つはおそらく、家の屋根の形にあります。

北海道では「陸屋根」と呼ばれるフラットな形の屋根がよく見られ、特に札幌や旭川などの都市部ではこの陸屋根が一般的です。

日本全国を見渡すと屋根の形は、左右に傾斜がある「切妻屋根」や、左右前後に傾斜がある「寄せ棟造り」、片側にだけ傾斜がある「片流れ屋根」などバラエティに富んでいますが、北海道ではどうしてフラットな陸屋根が主流になったのでしょう?その理由を探ります。

平らな屋根の家の外観


陸屋根(無落雪屋根)は、ただの「平らな屋根」じゃない!

平らな屋根の家の外観陸屋根は、実は建物のてっぺんが真っ平らなわけではありません。これは別名「無落雪屋根」とも呼ばれていて、屋根の中心に向かってわずかに傾斜をつけたり、雪止め処理を施したりして、雪を地面に落とさないように工夫をしているものです。

一般的には雪は積もらせたままにして、太陽熱などで溶けた雪水を屋根に設けた排水口から外に出すといった仕組みです。

陸屋根を上から眺める
陸屋根の一例。外からはフラットに見えるが、家の左右から中央に向かって勾配をつけ、排水している

北海道が雪国だから生まれた屋根のカタチ

無落雪屋根が誕生するまでの北海道の住宅に多かったのは「三角屋根」や「マンサード屋根」といった、これまた北海道の家特有の形でした。

ところが都市化が進むにつれて、隣家の敷地に、自邸の屋根に積もった雪が落ちないよう配慮する必要が出たり、屋根の除雪作業中の転落や落雪による事故が相次いだりしたことなどから、その対策として安全性やメンテナンス性の高い無落雪屋根が生まれ、近年の主流となりました。

三角屋根は1960年代に北海道住宅供給公社が供給した規格型コンクリートブロック造の家がこの屋根だったことから、その後一般的な住宅にも普及したと言われている
三角屋根のリノベーション住宅。1960年代に北海道住宅供給公社が供給した規格型コンクリートブロック造の家がこの三角屋根だったことから、その後一般的な住宅にも普及したと言われている
マンサード屋根
マンサード屋根(ギャンブレル屋根、駒形切妻屋根)は、北海道開拓史の時代を経て、この屋根を持つ農場牛馬舎や納屋がアメリカから導入されたことから広まったと言われている。この住宅は昔ながらの屋根の形をモチーフにしつつも高性能を実現

豪雪地域も多い北海道ならではの問題を知恵によって解決した「無落雪屋根」ですが、高断熱・高気密化など建物の住宅性能をしっかり考えておかないと、漏水や躯体変形の恐れがあるため、北海道では設計基準などを設けて注意喚起も行っています。

冬の陸屋根
陸屋根も、家のデザインによってさまざまな形が見られる

スタイリッシュなデザインの外観北海道の街並みの特徴であり、一見すると無機質にも感じられる平らな屋根が並ぶ景色も、こうした先人たちの知恵が生きていると思うと、また違った見え方がしてきませんか?

(文/Replan編集部)